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聞かまほしきや見まほしきや

今日は検査の日。秋の検査祭りは後半戦に。あとひとつで終わりだ。
検査は早く終わる予定なので、検査の後仕事を入れてもよかったのだけれど、入れずに気になっていた出光美術館に行くことにした。

前の日記でも書いたけれど、出光美術館はビルの工事があるので今年年内で一度閉めて、暫くは再開しない。
子供の頃親と行った思い出、学生の頃行った思い出、そして大人になってからも数々の名品と出会えた場所なので、名残惜しい。今回はお別れの訪問だ。展覧会も所蔵品の名品展示をシリーズで行っている。
最後の自分好みのシリーズ展示会期の最後の方に滑り込みで行けた。
若冲野有名な動物大行進の屏風もあったけれど、私は酒井抱一の十二ヶ月花鳥図貼付屏風が出た方が嬉しかった。酒井抱一は日本画で誰の絵が好き、と初めて思った人だ。
日月四季花鳥図屏風もあった。屏風がとても好きだし、室町時代の絵が好きなのでとてもうれしい。また見られてよかった。
室町時代の絵で水墨画や大和絵が好きだなと思ったのもこの出光美術館でのことだった。出光美術館は仙崖コレクションをよく出しているけれど、わたしはあまり仙崖さんに興味がなくて(ごめん仙崖さん)、他のコレクションが好きなので、こんかいの「物、ものを呼ぶ」のシーズン4はうってつけの会。

絵因果経もあったらいいなあと思って行ったら、ありました。わーい。
絵因果経を最初に見て好きになったのも、この出光美術館。他のところでも色々見ているけれど、一番最初に「すきだなー」と思ってみたのはここ。

絵巻も好きなジャンルなのだけれど、絵因果経は絵巻の紙が上下にわかれていて、下にまじめーな内容、釈迦の物語が書いてあるのだけれど、その内容を表した絵だ上半分に描かれている。その絵が面白い。

今回公開されていた部分も楽しいといっちゃいけないのだけれど、楽しい部分。釈迦がおすましして悟っている周りに、悪魔が邪魔しにくるのだけれど、その悪魔がバリエーション豊富で、しかもみんなすごく張り切ってる。そしてなんだか可愛い。可愛い絵なので、起こっていることがなんだか楽しくみえてしまう。
悪魔が張り切ってやってきてるところは凄く楽しいといってはいけないのだが、楽しい感じがする。

そういえば部屋の最後に英一蝶の四季日待図巻もあった。とても美しい絵で、美しい色合いに人々が楽しげに暮らしている様子が描かれている。英一蝶らしい、偉くない人たち、庶民の元気一杯の遊び、働いている姿が美しい彩色で描かれている。座敷で楽しくうたい舞っているパートでは、閉められた障子にぼんやりと舞い踊る人たちの影が浮かんでいた。

絵巻も豊富に展示があって、久しぶりに伴大納言絵巻も見た。炎上する門に急行する検非違使と門のまわりで驚き騒ぐ人々、そして、その後の謎の公卿が佇む部分。伴善男だろうかわからない。この部分は直前の大騒ぎの激しいシーンとうってかわってとても静かなすやり霞とその向こうに見える殿舎の屋根だけがうっすら見えていて、それを眺めているようにも見える公卿が描かれているだけなのだ。
でも、とっても重要なパート。次は夜間に急な参上に答えている清和天皇の姿。というまでの前半の中心となる事件が起こった直後の様子が描かれているパートの展示だった。

可憐な絵柄で美しい西行物語絵巻も展示あり。桜のもとにいる西行さんも登場していたので、今まさに西行桜を仕上げなければとあせっているので「西行さんよろしくお願いします」と絵巻に向かってお願いしておいた。
最初のまだ出家する前の西行さんパートでは華麗な設えの鳥羽殿が描かれていて、その描写は澄んだ色彩で美しい。

橘直幹申文絵巻もあり(これも火災シーン。こんどはこっちは内裏が炎上している)、これも、人々が石で火災に対応している様子が描かれていて動きがあり、登場人物も多くてみていて面白い。

扇面法華経冊子断簡の展示では、ちょっと前に読んだ箔散らしの本にこれとは違う絵の同じ扇面法華経冊子がでていたので、これも箔を中心に見てみた。

全体に好きな時代の好きなジャンル、絵巻、屏風、大和絵といったもので大満足。酒井抱一バージョンの風神雷神も久しぶりに会えて嬉しかった。

絵をみたり、絵巻を読んだり、それにまつわる話を聞いたり読んだり。そういうことがとても好きだ。好きなジャンルの美術館が一つしばらく減ってしまうのはとてもかなしいけれど、「こんな絵が好きなんだな」と気がついた場所、出光美術館。またオープンするのを楽しみに待つことにする。



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