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パーティmix(でもない)笏の舞

昨夜は先生がお出になる舞台を見に。

先生がでているだけではなく、番組が「融」の小書、「笏の舞」だったので、ぜひ聴きたかったのだ。
小書というのは特殊演出をするよ、ということ。通常の演出ではなくて、例えば舞が変わってきますよ、とか、でてくるシテが普通のタイプと違いますよ、とかそういうことで、今回はいつもは颯爽と舞う貴公子の「早舞」(早とあるけれど別にすごく早いということではない)が「笏の舞」という急激に速度が変わる舞になります。ということ。いつもは扇をもち舞うけれど、笏の舞の場合は文字通り「笏」(お雛様(男性)が持っているあれ。メモ帳の役割も果たすことがあったらしい。あとどうするのだろう。)を持ち舞う。

以前、10年ぐらい前だろうか、ある大会にピンチヒッターで小鼓を担当したことがある。出る予定の方がお仕事の関係で出られなくなったので、どうでしょうという話をもらったのだ。

その会が終わった直後、「今度は融の笏の舞をやりたいですね」と言われていたのだけれど、小鼓部分がどうなるかその時わからないな、と思っていたのだ。それ以来、ちょっと気になる小書だったのだ。

それが先生の小鼓で聴ける。というまたと無いチャンスだったので、本当にラッキーだなあとおもいながら行きました。

今回行った会は番組が始まる前に親切な解説がある会。そして、一曲しか上演しないので、夕方の仕事帰りにぱっと寄ってみていってほしいという趣旨なのだと思う。

融のお話は有名なので(人気曲)知っている人が多いだろうけれど、ざっと話すと「融」という実在の貴公子を題材に創作した話。風流貴公子として名を馳せた融の大臣。有名な屋敷、六条河原院。実際に風流スポットだったらしいが(隆盛を極めた豪華絢爛な夢の後、跡地ということでほぼ滅び去った後も和歌スポットとして平安時代も人気??だったらしい)、が融の大臣の幽霊が出る!とその有名なスポット(by今昔物語)が舞台。

ある僧がこの風流スポットにやってきて、有名なところだからちょっと眺めていよう。というところからお話が始まる。そんなことしていると、やっぱり出てきちゃう。今回は潮汲みの老人が出てきちゃう。六条河原院の有名エピソードの一つといえばダントツで「自宅の庭で塩釜を、遊びで本格潮焼きをやらせた」があるので、その潮汲みのお爺さんが出てきてしまうのだ。
海の潮を汲んで、焼いて塩を作るという風景は風流で屏風絵なんかにもなっている、京都の超、超上級貴人には遠い風流な風景なのだけれど、その遠い地で行われているめでたくも風流な風景を、絵じゃなくて実際に庭でやらせて、眺めていたという豪奢な暮らしエピソード。その潮汲みのお爺さんが出てくるのだ。

能では前半は後半の本体が投影されている仮の姿で出てくることが多い。(そうじゃない場合もある)
今回の解説では、「もちろん後半の融大臣も入っているが、河原院の変わらぬ自然、それが出てきたように見えて仕方がない」とのことだった。私は豪華な生活を思い出す、「河原院の夢(記憶)」のような気がする。その地が見る夢、記憶が表れ見えて来たような気がする。

出てきたお爺さんが「自分は潮汲みをするものだ」というと、京都の六条なんて海がないのにどうして?という僧にかつての河原院の様子を語り、やがて空には月が出てきて、老人は周りの景色などを案内しつつ、潮を汲む様子を見せ、ふっと消えていくのだった。

そんな記憶に導かれて、融が登場するのが後半。
そしてついに「笏の舞」

うーん爆速でした。そして華やか。早舞で颯爽と扇を持って舞うのも風流貴公子に似合うけれど、こうした急の舞もいいなと思う。それにしても全員がしっかりしていないと崩壊しそうだな、とも演奏を聴いていて思う。
そしてその急激な変化の後、落ち着きと優雅さを保ちつつ終わること、最後の「名残惜しの面影」へ繋げる体力、保ちつつ着陸させるテクニックが必要なんだなあと思いつつ聴く。

流儀やその時によって、違いが出るのも面白いのが能。今回も「なるほどー!」と思い会場をあとにしました。
解説付きなのも、何も知らずにふらっと立ち寄れて親切だな。と思います。
みんなも聴きに見にいこう!


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するすみ
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