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女のしずく
雨だれのしずくのひとつひとつの量はきわめてわずかなれども、
時を刻むように確実に落ちるように、
艶やかなる女の情念と情欲のしずくも、
少しずつとどまる事なくその身と心から時を刻むように滴り落ちている。
しとしと、ひたひた、と。
その心と身は恋する男を思う気持ちと、その情交への欲望に満ちているから、
男に逢っていないときでも、
しとしと、ひたひたと情念と情欲のしずくはどこからかこぼれ落ちている。
仕事をしているときも、食事をしているときも。
めざとい男たちはそれを「色気」と呼ぶ。
雨だれのしずくが次第に地表には大きな水たまりができるように、
女のしずくも次第に想いを寄せる男の心と体に水たまりを作っていく。
遠くはなれていても目に見えない管がつながって、
男の心と体に落ちて染み込んでゆく。
そして男が、気がつかないうちに女を求める欲望を司っていく。
満ち満ちているかのような女の情念と情欲のしずくも、
逢えない時間が長くなってゆけば、
しだいにその残量は減少していってしまうが、心配する事はない。
そのしずくは想い人の心と体にしっかりと溜められて、
再びの逢瀬が叶い、その男に抱かれたとき、
あふれるほどの奔流となって、再び女の心と体に勢い良く還流されていくのだ。
だから女はそのとき、歓喜の叫び声を惜しげもなくあげてしまう。
女のしずく。
それは男に女を求めるみなぎる力を、いつも注ぎ込んでいる。