月と太陽は見た目の大きさが同じだから、
昼を照らすもの、夜を照らすものそれぞれに、
日は、陽
月は、陰
と言われてきた。
人は誰もが自分の心の中に光と影を持っている。
その陰陽は見た目は同じほどの大きさなのだが、
自分の心が勝手に光と影を切り替える。
影は光があるからこそでき、
光も明るすぎるばかりではいけない。
光と影が互いに影響し合うから、
人の心を魅力的なものにするのだろう。
初夏の太陽の日差しに耐えかねて逃げ込んだ軒下の日影は、
涼やかで優しくて、
一人寂しい夜を過ごす夜の月影は、
暗闇の中で浮き上がるように明るく感じ、
見上げる満天の星が心を照らして作る星影は、
眩しいほどの輝きに満ちるように、
瞳を閉じて瞼の裏によぎるあなたの面影は、
あまりに艶やかで目を開けていられないほどに明るくて、
私が一番好きなあなたの表情を惜しげもなく見せてくれる。
笑顔も泣き顔も哀しそうな顔も怒った顔も、
そして私に抱かれている時の淫らな顔ですらも。
そして、
仰向けに横たわる私の上に覆いかぶさって、
私の目から天井の照明を隠したあなたの人影は、
影であり光でもあり、
他に私は何も見えなくなって、
あなた以外の光しか見えなくなる。
日影、月影、星影の下で、
あなたの面影を追い求め、
街角を行く似た人影に心をときめかせる。
そんなあなたと互いが光となり影となりながら交わっていけば、
体の大きさは異なれども、
互いを想い合う
心の見かけの大きさは、
ほとんど同じになっていくだろう。