嬉しいのに泣いている
悲しいのに笑っている。
嬉しいのに泣いている。
まことに人の感情と表情は難しい。
けれども、
悲しいときの笑顔と本当に嬉しい時の笑顔とは、
嬉しい時の泣き顔と本当に悲しい時の泣き顔とは、
その人に情を感じているならば、
全く違って見えるもので、
さらに、
自分に対して嬉しいのに泣いている表情を見せてくれたなら、
その笑顔を見せてくれるより、
さらに深くその情感がこちらに伝わって、
こちらも嬉しくて泣けてきてしまいそう。
だから、あなたが私に貫かれて、
眉間に皺を寄せて、苦しそうな顔を見せてくれると、
私はとっても嬉しくて泣けてくる。
どんなに悲しくて泣いている人よりも、
さらにもっと激しく号泣し、叫んでいるあなたは今、
極限までの喜びに溢れていて、
私はその勢いのすごさに、
とっても嬉しくて泣けてくる。
そして体もまた、
痛いのに気持ちいい、
苦しいのに気持ちいい、
というような反応を呼び起こす。
欲情が感情を呼び起こすときと、
感情が欲情をかきたてるときと、
それぞれにそれぞれの表情が現れるから、
まことに男と女の間の情感は面白い。
悲しくて笑っているあなたの顔よりも、
嬉しくて泣いているあなたの顔の方が好き。
官能の波に苦悶しているあなたの顔が美しい。