【TXT】Over The Moon 歌詞とMV・ MAMAのステージからの考察
5月から始まったワルツ、その間にも絶え間なく日本シングル「誓い(CHIKAI)」リリースやイル活、ヨンジュンのソロ活動「GGUM」、そしてアンコン、カムバと怒涛の過密スケジュールのなかで受賞したMAMA2024の「Fan’s Choice」部門6年連続受賞&「Ponta Pass Global Favorite Artist」。トゥバもモアちゃんも、ほんとにほんとにおめでとうございます !!
音楽とパフォーマンスとアートワーク、そしてストーリーの世界観と…。圧倒的に美しくて、息を飲むようなあのステージの感動。余韻にひたりつつも、mama ステージの考察も織り交ぜ、遅ればせながら、タイトル曲の考察をしてみたいと思います。
「Heaven」が出会いの喜びなら、「Over The Moon」は君と共にする未来への期待を語る曲。
MVではあふれる愛情がさまざまな水のカタチで表現されているのもロマンチックですし、ノスタルジックな雰囲気をまといつつも、清涼感とドリーミィさたっぷりの曲が聴けば聴くほど味わい深く、幸福感に満たされます。
アルバム毎に磨きがかかっていくみんなのヴォーカルの持ち味もさらに際立っていて、それでいて、この5人だからこそのハーモニーにもうっとりしますね。最近のタイトル曲のなかでは一番好きかも。振り付けにも「Run Away」をはじめ彼らの過去の楽曲からのオマージュがいくつかあったり、表情やパフォーマンスも細部までこだわりが詰まっていて、唯一無二なトゥバの世界にグッと引き込まれていきます。
〈歌詞〉
MV公式日本語訳より(*補足部分を除く)
デビューの時から予告されていた?
これまでの曲の歌詞には、 ”star/별”(星)はなんども出てきたものの、”月”が出てくるのは珍しいなと思いました。ふと思い出すのは「Good Boy Gone Bad」 日本語ver. のMVに出ていた儚げな月夜。
ドラマの OST「Love Sight」では ”널 보면 어두웠던 달빛 내린 겨울밤도(君に会うと暗かった月明かりが降り注いだ冬の夜も)”と歌われ、「Happy Fools」でコラボしたコイ・リレイ嬢のパートに ”Happy we go up like the moon(意訳:ワクワクして月まで行けそうでしょ)”の歌詞がありましたが、それぐらいではなかったでしょうか。
他にもなにかあったかなと振り返ってみれば、見つけました。デビュー時の「Debut Celebration Show」。実は”Over The Moon”への伏線がすでに予告されていたのではないのかなと。
冒頭近くに円が重なっていく様子が差し込まれ、今にして思うとこれって月や太陽だったのかなとも思えるのですが、もうひとつ。
それは動画の 2:27 頃。 ラフなタッチで描かれた ”ONE DREAM” の文字の下、5人が後ろ向きになって、かわいくお尻をふりふりしているんです。
この動き、なんだろなぁってずっと気になってたんですが、 実は ”moon” には「イタズラでお尻を突き出す」という意味もあるのです。
つまり、お尻ふりふりは「これから始まる僕たちの物語は、one dream の元に集まった僕たちが、月を手がかりに、あちこち右往左往していくお話だよ」と、ヒントを伝えてくれていたのではないでしょうか。
鍵はマザーグース
さて。トゥバのストーリーには鏡の国のアリスがモチーフとして引用されていると以前に書きましたが、アリスのストーリーにはマザーグースの詩がいくつか織り込まれています。
欧米ではアリス同様、古くから親しまれてきた童謡マザーグース。この "over the moon"のフレーズも『Hey diddle diddle』のなかに見つけることができます。
”雌牛が月を飛び越えた”あたりは、彼らが夢うつつの幻想の夜、君と再会して(「Devil by the Window」~「Sugar Rush Ride」)、月まで届きそうな位浮かれた(「Happy Fools (feat. Coi Leray)」~「Tinnitus (Wanna be a rock)」)アルバム『The Name Chapter: TEMPTATION』のストーリーに、どこか重なる気がします。
また ”お皿はスプーンとともに逃げ出した”からは、「Run Away(9와 4분의 3승강장에서 너를 기다려 9と4分の3番線で君を待つ)」(『The Dream Chapter: MAGIC』収録)の ”내 손을 꽉 잡아, 도망갈까?(僕の手をぎゅっと握って、逃げようか?)”の歌詞が思い出されますね。
そういえば、ルザラバこと「LU$ER=LO♡ER」(『The Chaos Chapter: FIGHT or ESCAPE』収録)のMVに、スビンがお皿の上のポテトをおふざけで同伴者に投げた後、店からふたりで逃げ出すシーンもありました。
以前、つぶやき投稿でHYBEの動画「WHAT DO YOU BELIEVE IN?」で、ヒュニンカイがパイナップルピザ売り切れを嘆いていた理由についてふれたのですが。
この「WHAT DO YOU~」の動画は「LU$ER=LO♡ER」に先立ち、同じ2021年の3月に公開されていて、よく見るとスビンはスプーンの形のネックレスを首にかけているんです。
ルザラバ・スビンのお皿からのおふざけ&逃走とスプーンを身に着けたスビン。。。どうも、先ほどのマザーグースがモチーフになっている気がしてなりません。
※↑トゥバたちが登場するシーンからクリップしています。
つまり、輝くspoon とは、スプーンのネックレスを身につけ「Can't You See Me」(『The Dream Chapter: ETERNITY』収録)MVで、一軒家にひとり暮らしている(ように見える)スビンのことを指していたのかもしれません。
戯曲からインスパイアされた古今東西の物語
さて。先ほどのマザーグース『Hey diddle diddle』の詩ですが、人生に様々な問題を抱えながらも必死に生きようとする青春群像劇『RENT』(ミュージカル/映画)で、主要人物のひとりである女性モーリーンが演じるアクト「Over The Moon」の下地にもなっているんですね。
未視聴ですが、『RENT』のそれぞれのアクト(曲名)を見ると、トゥバのこれまでの楽曲やカバー曲、今回のリリース前プロモーションとも重なるようなタイトルがちらほら(”Voice Mail”、”You’ll See”、”Over The Moon”、”Without You”、”Good Bye Love”、”Your Eyes”など…)。
トゥバの「Over The Moon」英語 Ver.の歌詞には、 ”Love you from top to bottom(頭から爪先まで君のすべてを愛するよ)”とあるのですが、『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』には、ムゼッタ(RENTでのモーリーンに相当する女性)が歌い上げる「この美しさにクギづけになるの、頭から爪先まで」の歌詞があり、ラ・ボエームからのオマージュをうかがわせます。
これら、若者たちが夢に生き、愛にもがき、儚くも永遠の日々を信じて情熱的に生きた物語は、あのデビューショーでの One Dream (=ひとつの夢、同じ夢)の元に集まった少年たちが、夢と愛を求めて揺れ動いていく物語にもそのまま連なっていくように思えます。
『The Name Chapter: FREEFALL』のコンセプト「CLARITY」では、屋根の上に集まっては夢を語り合っていただろう5人の情景が写し出されていましたが、『ラ・ボエーム~』の舞台も貧しい屋根裏部屋だったことから、これもさりげなく伏線を示していたのかもしれませんね。
物語の背景となったモチーフがさらに明らかに
「Over The Moon」の歌詞やMVからは、『ラ・ボエーム』や、コンセプト「SAVIOR」で言及された『雪の女王』以外にも、トゥバの物語全体の背景になっているストーリーが浮かび上がってきます。
約束の宇宙
ひとつめは、映画『約束の宇宙(原題 Proxima)』(2019)。歌詞にもズバリ、”あの月を超えてもっと遠くへ/夢を超えてsanctuary/輝かしいあの約束の宇宙へ”とあります。
ヨンジュンも「モアは僕の空であり宇宙、今よりもっと輝く星になることを約束します」と言ってくれていましたよね。
映画の中には、MVに出てきたてんとう虫や、今アルバムのコンセプト「KNIGHT」の白馬(「KNIGHT」のバイクは白馬がモチーフだと言及されていましたね)が出てきたり、また、主人公の女性宇宙飛行士サラの娘は、名前がトゥバの物語のキーモチーフになっている「ステラ(=”星”の意味)」です。
監督名がアリス・ウィンクールでその名にアリスが入っていたり、音楽を故・坂本龍一氏が手掛けた作品がチョイスされたことも、トゥバたちの音楽をどのようにプロデュースしていこうとしていたのか、パンPDの強い意志を感じます。
また、サンクチュアリのアルバム名を示唆していたインスタグラム、 @sxnctxxry_1104 の直近の投稿は月を背景に尖塔がそびえ立つ画像でしたが、映画の内容からタワーはロケットを仄めかしていたのだと気づきます。
ほかにも、映画の中にはバスや草原など、前アルバムのタイトル曲「Deja Vu」MVを彷彿とさせるシーンが。さらに、これまでにテヒョンが時折、目元やおでこの写真を投稿してくれていましたが、今にして思えば、ビデオ通話の場面で愛娘ステラの目元から上だけが映ったシーンを、それとなくヒントとして投げかけてくれていたのかもしれません。
「TickTok」などのショートムービーでは、カメラの視線が上の方に向かって終わることがやけに多いなと感じていたんですが、これも、ひょっとしてひょっとしたら、ロケットの打ち上げや上昇を示唆していたのかもですね。
そして「Can't You See Me」(『The Dream Chapter: ETERNITY』収録)でボムギュ、テヒョン、ヒュニンカイが身につけていたカラフルなアクリルビーズのネックレスやブレスレット。これは、主人公サラが宇宙ロケットに持ち込む私物箱に詰めこんだ愛娘ステラからのプレゼントに似ています。
もしかしたらビーズをひとつひとつ繋げたアクセサリーは、彼らの愛した人との絆や葛藤の象徴として引用されたのかもしれませんね。
華麗なるギャツビー
ふたつめは、レオナルド・ディカプリオが主演をつとめた映画『華麗なるギャツビー』(2013)です。トゥバの物語とはもっとも遠いところにあるストーリーのように感じていたのですが…。
ギャツビーは1920年代のアメリカ・ニューヨークが舞台。狂騒の20年代と呼ばれ、ジャズが花開き、アール・デコのデザインや建築が流行。産業が発展し、ライフスタイルも大きく変化していった時代です。「Over The Moon」のMVに出てくる結婚式場のような屋内も、正面の壁に「T」「X」「T」が刻まれたアールデコ調の装飾に彩られていますね。
MVにはテヒョンがたくさんの花に囲まれながらバラのトゲを切ったり、花を選んで愛する人に贈る花を準備する場面があります。そういえば、デビュー時の「Cat & Dog」のコンセプトフォトでも、花に囲まれた部屋で、5人がそれぞれ、犬や猫、うさぎを抱いて座っていましたよね。
これね、映画のなかでギャツビーが元恋人デイジーとの再会するお茶会のために、友人ニックのリビングを花いっぱいで飾る場面からのオマージュに思えるのです。
MVでは5人が駐車場で踊る場面でなぜかヨンジュンだけが白いシャツを着ていますが、これもデイジーとの再会のお茶会の前、準備のために現れる白シャツのギャツビーと黒服を着た下僕たちの場面を彷彿とさせますし、同じくMVのなかでやや唐突に差し込まれる、水に濡れた懐中時計(or ストップウォッチ?)。こちらはなぜか”5”の数字がタテに並んでいるように見え、 Great Gatsby の”G”のイニシャルも仄めかしていたのではと。
また、@sxnctxxry_1104 のインスタグラムでボムギュが頭にのせている花や、MAMA2024 のステージでテヒョンが昇天する幻想的なシーンで周囲に咲き乱れていたデイジーの花。あれも恋人デイジーをモチーフにしていたのではないでしょうか。
ギャツビーは貧しい出自ゆえに、富さえあればデイジーが自分の元に戻ってきてくれるのではないかと、裏稼業に手を染め、彼女が大富豪の夫トムと住む屋敷の対岸にお城のような豪邸を構え、いつか彼女が来てくれることを待ち望みながら、毎週末、豪華絢爛なパーティを開催します。
黄昏の頃、桟橋に佇むギャツビーが対岸から届く緑色のともし火に手を伸ばす寂しげな姿をニックが見つける場面があるのですが、ワルツ「ACT: SWEET MIRAGE」 でVCRに出てきた緑の角砂糖や液体の入ったグラスは、もしかしたら、デイジーの緑色のともし火も仄めかしていたのかもしれません。
ところで、映画のなかでギャツビーはウエストエッグに住み、デイジーが住むのはイーストエッグ。あれっ、なんだか聞き覚えがありませんか。
そう、「Can't We Just Leave The Monster Alive?」(『The Dream Chapter: MAGIC』収録)の歌詞に「隠れたイースターエッグは、僕が見つけるよ」とあります。
イースターエッグは、春の女神であるエオストレやペルセフォネのことで、それはMOAを指しているのではと以前の記事に書きました。が、ギャツビーの想い人デイジーのことでもあったのですね。
そこからふと思い出すのが、2021年MMAで行われた、仮面をつけたヨンジュンが頭に銃を撃ち放って倒れるという衝撃的なパフォーマンスです。
ギャツビーは自殺ではないものの、デイジーを夫トムから奪い、一緒に連れ帰ろうとする帰路、デイジーが運転する車で女性をはねてしまい、亡くなった女性の夫から後日、ギャツビーが妻をはねた犯人だと誤解されて、射殺されてしまいます。
これまでのMVには、ヨンジュンが車を運転する姿が何度か描かれてきました。「Sugar Rush Ride」 日本語 Ver. のMVでは、札束を車に積んだヨンジュンが夜道の運転で幻想の蝶に気をとられ、事故を起こしてしまうシーンがあります。
あの場面は、ギャツビーのように現実をありのままに受け入れられず、本当の自分(他人や愛する人に知られたくない部分)から逃げて、アイデンティティーを見失った結果、死(ヨンジュンの場合は心の死)を招いた象徴だったのではないでしょうか。MMAのステージでヨンジュンが仮面をつけて銃を撃ち放ったのも、そんな彼の悪夢を比喩的に表現していたのでは。
Over The Moon のもうひとつの意味
さて。冒頭でもふれましたが「Good Boy Gone Bad」日本語 Ver. のMVには、おぼろげな月夜が差し込まれています。 moon には動詞として「夢のような物思い(または空想)にふける、ぼーっと過ごす」の意味もあって。
そこから、失恋して呆然自失になっていた姿や、過去に戻ってやり直そうと繰り返していた彼らの愁いを、月夜に重ねていたのではないでしょうか。
今年のMAMAのステージは、「Savior」のタイトルが表示された後、仮面の男たちが登場していて、「Deja Vu」MVの冒頭でヨンジュンやヒュニンカイを追い越していく仮面の少年たちの場面とも繋がりを感じさせましたよね。
21年のMMAで表現されたヨンジュンの悪夢の意味を今度は、夢と現実、表の自分と心の内側にしまいこんだ本当の自分の間で揺れていた葛藤の姿だったと、その伏線を明らかにしていたんじゃないかなと思うのです。
なぜならヨンジュンやボムギュには仮面がなく、ステージで先頭を走ったヨンジュンの姿も、アルバム『The Name Chapter: FREEFALL』~『Minisode3: TOMORROW』で、自分のアイデンティティーを受け入れ、夢と現実の間に着地点を見つけようともがいていたストーリーに重なっていくのです。
「Deja Vu」パフォーマンスの最期には、ボムギュがヨンジュンの手をつかんで抱きしめる場面があり、こちらもMV同様のシーンとの繋がりを感じさせてくれましたよね。
「Quarter Life」の和訳でもふれましたが、あれは、小説『ライ麦畑でつかまえて』で主人公ホールデンが、人生から転落しそうになった人がいたら(ライ麦畑の崖から落ちそうになった子がいたら)、つかまえてあげられる人になりたいと願った姿を、ボムギュが体現したのだと思います。
唯一、仮面をしていたヒュニンカイも、ステージから仮面を投げ捨て、「Deja Vu」から「Over The Moon」への移り変わりとともに、他の3人とともに「純粋」や「生涯を誓う」の花言葉をもつ白いバラを手にして変化していきますね。
こうしたストーリーやステージからは、ギャツビーがみじめに思えた現実のなかにも希望を見出す天分にあふれていた(と、映画の中で友人ニックが語っています)ように、”Over the moon”には、君との再会で天にも昇るほどの幸福感を味わっているという姿だけでなく、現実逃避していた頃(=moon)を乗り超え、夢や愛を、希望ある現実として君とともに叶えたいという、祈りにも近い想いが込められている気がしてなりません。
なつかしい未来とは
最期にもうひとつ。歌詞のなかで気になっていた、”오래된 미래를 만들자 (なつかしい未来をつくろう)”のフレーズから。
うろ覚えなのでディテールが間違っているかもしれませんが、ワルツ「ACT: PROMISE」の幕間に差し込まれるVCRにも、巨大な石のかたまりとともに「古代からの未来~」の字幕が出ていたような記憶が…。
今期、マンネのテヒョンとヒュニンカイが 出演したバラエティコンテンツでは、MCのミミミヌさんがこのフレーズに対して、「未来が古代と言うのはありえない。(最初の歌詞で)君は僕の未来と言っているから、モアと一緒に過ごす時間をもっと広げたいっていうことだよね」と見事な分析をしていましたね。
※字幕設定に日本語は出ていませんが、「自動翻訳」から「日本語」を選んで字幕をつけることができます。
ミミミヌさんの分析につけ加えるなら、오래된 は「久しい、古い」の意味をもつ形容詞 오래되다 の過去連体形。過去連体形は「途中で中断した(~しかけの)」「過去の習慣(~していた)」、現在は行われていないことに対する「過去回想(~だった)」などのニュアンスを持っています。
だから、夢の世界で過去に時間を巻き戻すことでしか叶わなかった「君との幻の再会」を、今度こそ現実の世界で叶えた証に、ともに未来をつくっていこう。そんな想いをこめた歌詞なのではないかなぁと思いました。
◇
以上、またしてもたいへん長くなってしまいましたが、最期まで読んでくださり、お疲れ様でした&どうもありがとうございました♡
週末のアンコンや12月の授賞式、そして締めの紅白と、まだまだ気の抜けない日々が続きますね。どうか4人が体調を崩したりせずに活動できますように。そしてスビンがゆっくりと休養できますよう、心から祈るばかりです。
↑皆のエンディング妖精が過去イチ可愛すぎたMusic Bank ステージもぜひ☆