『女龍神也の呪い』あとがき
沼御前とメリュジーヌ、二人の妖精と妖怪を東西の伝説を超えて関連付けようという親友H・Nのドキュメンタリー番組制作の試みは、未完成となっている。
彼が失踪の直前に家族へ残したという遺言に基づき、その取材成果を引き継いでわたしがこの作品を記させていただいた次第だ。
執筆にあたって、わたしも金山町の『沼沢湖水祭り・大蛇退治』を見物したが、なかなか見事だった。大蛇の模型や、甲冑に身を包み義連や彼の部隊に扮した人々が、湖に船で漕ぎ出て戦いを演じるという優麗なものだ。
近くには、日本に唯一という触れ込みの妖精美術館というのもある。花畑が満ちる頃に行ったのだが、そこに佇む洋風の建物は壮麗で、内部には妖精に関する貴重な情報が多数収蔵されていた。
妖精とは、東洋でいうところの妖怪とほぼ同じ意味だという。
可愛らしいイメージのある妖精も調べてみると妖怪染みた面が数多ある。東洋と西洋で主な印象が異なるのは、文化の違いだろうか。
そんな妖怪と妖精の出会うこの場所に、メリュジーヌと沼御前の関連を見出した者がいるのはある種の必然だったのかもしれない。
これらの資料を拝見して、H・Nが記した〝女龍神也の呪い〟とは、おそらく彼らも述べていたように、もはやメリュジーヌとその姉妹とは無関係に彼女たちが受けた呪い自体が解放されたもののように感じた。一連の真実をある程度理解した者にそれが振り掛けるという形で。
幸いなことに、これらの資料に係わったわたしには、未だ何も起きてはいない。若しくは他に何らかの条件があるのかもしれないが、個人的にそうしたものを信じてもいない。よって公開にも踏み切れた次第である。
今後も犠牲者が出ることはなく、メリュジーヌや沼御前たちの伝説が、親しみやすいものとして語られていくことを祈るばかりだ。
最後に、本書を手掛けるに当たって協力していただいた全ての人々に感謝を捧げたい。
平穏な沼沢湖の様子も撮影してきたので、お届けすることで締めくくることにしよう。
〈終〉
※関係者追記。この『女龍神也の呪い』の著者は、本最終記事を完成させた先週6月8日に、トイレで溺死しているのが発見されました。密室であったものの、自分の体液も用いる不可解な死因であったため現在警察が事件事故の両面も視野に捜査中です。
それらによる騒動と内容から、本記事の扱いについても関係者一同で話し合いましたが、故人の遺作という形で後れ馳せながら公開に踏み切らせていただいた次第です。
上記画像は著者が撮影し掲載したと思われるものと異なっており、なぜこのような形になっているのか不明ですが、そのままとさせて頂きました。被せて書かれている文字はHN氏の手紙における最後の文字の筆跡ですが、これも関連は不明です。
なお、同時にアップロードされている動画についてはここに至るまでの経緯から関係者の誰も確認しておりません。警察の方は本来の上記写真と同じ沼沢湖の風景が映っているだけだと仰っていましたがまだ土、、閲覧は自己責任でお願いします。
著者代理。