10円

 自動販売機にはずっと舐められてると思って生きてきたけど、最近いきすぎてる。お茶が160円、水が110円になった日、自販機の前で呆然と立ち尽くしてしまった。水ですよ水。60円にしてください。でも水を日に2L-3L平気で飲む私は買わざるを得ない。水筒を持ったり、2Lのペットボトルを朝買って職場に持ち込んだり色々試したけど重くでだるいし、なにより冷たい水をごくごく飲むのが好きだから、500mlのペットボトルを1日何本も買うことになる。水のおかげで血液はサラサラだと思うけど、夏場なんか下手すればランチ代より水代の方がかかこともある。これとは別に、私には毎朝駅のホームでレッドブルを買って飲む習慣がある。自販機のレッドブルは210円だが、だいたい10円足りなくて300円入れて、当然90円返ってくる。少し逸れるが、最寄り駅の自販機は、硬貨が出てくるスピードが“チャリン、、チャリン、、チャリン、、”と二泊くらい置くようなスピード感で、これが9連続なものだから、下手すると電車に間に合わなくなったりする。この点は可及的速やかに解消してもらいたいが、今回の問題はここではない。
 毎朝、受け取った90円を握りしめて職場の自販機と向き合う。今日から100円になってたらいいのにと思いながらやっぱり110円の水のボタンを押す。小銭入れを見ると、10円足りない。なぜかいつも足らないんだ10円が。朝の90円、あとズボンのポケットとか、どこかしらに雑に入ってる小銭からさらに10円投入するんだけど、どうしても10円足りないんだ。困る。それでレッドブルの時と同じように100円追加すると、ディスプレイには先ほどまで投下していた10円10枚と合わせて200円と表示される。すると、90円返ってくる。キモ!!!!!!!!!!なんだこれ。毎日、これの繰り返しだ。自分は一体何をやっているんだろう、と思う。今朝と同じ90円を受け取る。こんな毎日から抜け出せずにいる。職場の自販機はSuica等のキャッシュレス決済が非対応である。生活のほとんどをキャッシュレス決済で済ませている私は、駅のレッドブルと、職場で飲む水のために、現金を下ろしている。コンビニのATMで現金を下ろすたび手数料で110円かかる。これは、何かの呪いだろうか。

 ちなみに職場の自販機の硬貨の落下スピードは“チャリンチャリンチャリンチャリン”なので、この点は評価に値する。
 
 先日とんでもないことに気付いてしまった。職場には、いつも利用する“水を110円で販売する自販機”の隣に“水120円の自販機”があった。
狂ってるとしか言いようがない。わずか10cmの距離に、水110円の自販機と水120円の自販機がある。業者が違うだとか、水の種類がとか、そんなことはどうだっていい。120円の水が、110円の水の隣に置かれている。誰も買うわけがないのに。私は水120円の自販機を横目に、110円で買った水を飲み干すと、もしかして試されているのかもしれない、と毎日思案に暮れる。