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神様

2025年2月29日、私は神様に会いにゆきました。空からすべり落ちてきた水の塊がビニール傘を激しく叩くので、私は少し不安な気持ちになって、手元をつよく握って祈りました。 「神様いますように」 駅前のカフェ・ベローチェに神様はいました。窓際のカウンターに座っているものですから、反対側の信号待ちの私からよく見えました。ガラスの向こうの神様は、大きな口でホットドッグに齧り付き、口元のマスタードを紙ナプキンで拭っています。 ショーケースのジュエリー、海底の珊瑚礁、おおいぬ座の

    • そんなだめ?

      郵便受け2ヶ月開けてない。会わせた恋人と別れたって親に言えてない。 薬を飲んでも飲んでも後回しにするところが治らず、もうそういう性にツケを払うのにも慣れた。収入も、多少は上がったし。 感情が木に成っているものとして、人様に照らしていただき、水を飲ませていただいても、すれ違いざま風に揺らされても、実が落ちることはなくて、枝先で腐らせて、嫌なにおいに耐えきれなくなってから、清掃って感じにもぐ。もう売り物にならないじゃん 売る気だったことはじめて自覚して膝を打つ。なんの罪か、いつ

      • 弛んだ包帯

        8.22 16:00 1・2番線のプラットホームの待合室から、他の客達とともにぞろぞろと退室する。空調の冷気が逃げすぎない様にドアを小さく開け、それを維持したまま身体を縮めて出ていく人々の姿が、優しくて少し情けなくて、6年前にこの街に引っ越してきて良かったと思った。 JR中央線快速東京行きへ乗り込む。4号車だった。平日だからか、比較的車内は空いていたけど、なんとなくドア横の7人掛けの座席前へ立った。ふと見上げると、病気になって辞めた会社の広告が大きく掲示されていた。コー

        • syukusai

           ピアノが弾けたら狂ったように弾くだろうし、車両系建設機械運転技能講習を習得していたなら、3トン以上のユンボでどこもかしこも整地していたはず。でも、気が付けばしたいこととできることを分けるようになって、できることへの想像力さえどんどん失われていく。年を重ねるごとに、ほんのちょっとの説得力と引き換えに、大量の細胞が弱ったり死んだりする。いやいや、ごめんあのさ、全部かかってこい。  他人は見上げることもなく見下げることもなく、自分と別の星だから、比較してなんか思うみたいなのは全

          毎日も手作りだよね

           実家は無宗教だったけど大人になってから自分が腹落ちするような言説の先にはいつも聖書があって、そういえば母方の祖母は敬虔なカトリック教徒だった。祖母が亡くなった時の葬式は神奈川の教会で行われた。別に示し合わせてもないのに、賛美歌を歌うとき親族一同、全員口パクだった。いい大人が揃いもそろって下を向いて口パク。静かに流れ続けるアメイジンググレイスが妙に空気を重く寂しくさせて、派手好きでお洒落で厚化粧だった祖母を想うと胸が痛んだ。形見分けでは木製のロザリオを私に手渡し「これをおばあ

          毎日も手作りだよね

          絶対泣かない

          以前アトモキセチン飲んでた時に全く記録をしてなくて困ったので自分用に体調の変化を10日ごとにメモしていきます。 ※発達障がい者の薬と体調と所感になるので読む方によっては気分を害す可能性があります。 ※自分は他の人々の記録を読んで助けられてきたので、自分用と言いつつもしどなたかの参考になれたら幸いです。 5/25 25mg 朝のみ 1日目 効果特になし 5/26 25mg 朝のみ 2日目 ソワソワする感じが普段より少ない感じ?すぐ効果あるものじゃないはずなのでプラシー

          絶対泣かない

          春風異音を連れて

          また家の中で轟音がする。また、というのは以前もあったからだ。日記に書いたような気がしたので探した。2年前、キッチンの換気扇からだった。 https://note.com/aoaomiomochi/n/n78e95886d470 2年後の春、今度は浴室の換気扇から地響きのような音がする。音は低くもなく高くもなく、ちょうど心をざわつかせる広がり方をする。我慢できなくもないけど、気にすると気になるくらいはうるさい。異音は最近発生したように書いてしまったが、実はこの状態を半年やっ

          春風異音を連れて

          意味汁を大切に啜れ!

          ↑ 下書きに保存されていてなるほどたしかにと思った。昨今の人間社会は意味に溢れ、意味を失くしている。私は人の言葉を喋るようになった、人にわかるように喋るようになった、同時に自分だけのリズムを失った。他者とぶつかって初めて己の輪郭を意識する、思春期のそれとはまた違う、大人になってもマイノリティを誇れず、折れてきた人生にやがて蔦が伸びて雁字搦めだ。わかられた途端に古くなる。理解されなきゃ意味がないなんて思った瞬間に◯◯◯ってもう終わりかも。今まで意味わかんないって言われたとき、ど

          意味汁を大切に啜れ!

          日記

          いつか絶対に殺してやると思ってきた母が終活を始め、父も病で死にかけ、兄は死を意識してダイエットに目覚め、去年より10キロ痩せた。あすけんの使い方や栄養素のうんちくを滔々と語る痩せた兄の横顔をみて、あの頃に戻ったようで思わず目を逸らした。 「あんな雑な育て方をしたのに、子供たちはみんな立派に育った。誰ひとりニートにならず、社会に迷惑をかけず、懸命に働いてくれて、正月にはこうして実家に帰って顔を見せてくれる。こんな幸せなことはない。あんなに殴って蹴って、ひどい育て方だったのに

          普通亜種

          私が子どもの頃、私の母はよく「どうして普通のことが普通にできないの」と泣き喚いて訴えて、私はひたすら困って、普通って知らない、何かわからないし…と、言っても火に油を注ぐことが分かりきってるから、とにかく口をつぐんだまま泣くしかできなくて。あの頃以上の不幸ってないよなと思う。母も私も、家族を思いやる語彙をひとつも持っていなかった。不貞腐れて、もうさっさと殺してくださいよみたいなことを言って、血が出るまで殴られたことも、団地の最上階の踊り場から見上げた青空も、何一つ美化されないま

          普通亜種

          夢みたいだなこんな暮らしは

          仕事をサボって考え事をしたり好きな文章を書いたりするときに発揮される、とんでもない集中力を意識した時、ADHDここに極まれりと思う。たらればやパラレルワールドに想いを馳せるよりも、目の前を明るくする努力ができるようになった。一生こういうことに努めていきたい。何がなんでも、生きて、生きていてよかったと思うのをしつこく繰り返していく。料理を作り過ぎない、郵便物をこまめに確認する、発送などを、後回しにしない………暮らしの中では気をつけねばいけないことは山ほどある。 多感な時期に

          夢みたいだなこんな暮らしは

          31

          一昨日くらいに30歳になった気持ちを日記に書いた気でいたのに、今月もう31歳になってしまう。毎日やったことよりもやり残すことの方が多い。米を研ぎ忘れたり、買った本を読まなかったり、そんな負債は誰にどやって返すべきなのか。 30歳、歳を重ねるのはなんてスペシャルなんだと強く思った一年だった。 突然無敵になるんじゃなくて、傷口以外の部位で受け身を取れるようになった。それでも実際多少生きやすくなったからといって、たちまちトラウマがなくなったり、ネガティブな感情が消え失せるわけじゃな

          魂の詳細

           「生きていてよかった」と前回ブログに書いたそばから父に腫瘍が見つかった。結論から書くと骨形成線維腫という良性腫瘍で、摘出手術を行って大事には至らなかった。癌と見分けるのが非常に難しい腫瘍らしく、母は「医師に何度も癌と宣告されたのに。セカンドオピニオンまでしたのに」と電話口で泣いたり怒ったりした。実際、手術後に切除した腫瘍を組織診断に出して、結果が出るまでは全く安心できなかった。腫瘍が発見された箇所が喉のリンパ節だったから、癌なのであれば脳に転移すればすぐに死んでしまうと理解

          魂の詳細

          タイトルなし

          生きていてよかったと思う。まだ死んだことがないので、死んでみれば死んでよかったと思うのかもしれない。子ども時代は地獄だったし、20代は閃光みたいだった。まだなって日は浅いけど、30代は生きていてよかったとよく感じる。顔にシミや皺が増えて、体力も代謝も落ちて痩せにくくなって、視力も記憶力もどんどん衰えていていく。それでも、生きていてよかったと思う。苦しかった日々を振り返ったり、今ある幸せに感謝したり、おもしろくって涙が出たりする瞬間、生きていてよかったと心から思う。人を呪わなく

          タイトルなし

          camelかよ、カス

          部屋中を思い切りひっくり返しての大掃除は進みが遅く、帰省までには済ませるはずだった半分の作業しか終わらなかった。寝具を洗って干したのが夕方だったから、シーツや毛布がまだ濡れていて途方に暮れた。しばらくは凍えながら寝床だった場所を見つめていたが、唐突に存在を思い出した布団乾燥機が役に立った。白湯のつもりで、ほとんど熱湯をちびちびと啜る。この布団乾燥機は、実家を出るときに無理やり母親に持たされた物だ。カップから真っ直ぐに立ちのぼる湯気を見つめながら、去年までと同様の考えが今年もあ

          camelかよ、カス

          10円

           自動販売機にはずっと舐められてると思って生きてきたけど、最近いきすぎてる。お茶が160円、水が110円になった日、自販機の前で呆然と立ち尽くしてしまった。水ですよ水。60円にしてください。でも水を日に2L-3L平気で飲む私は買わざるを得ない。水筒を持ったり、2Lのペットボトルを朝買って職場に持ち込んだり色々試したけど重くでだるいし、なにより冷たい水をごくごく飲むのが好きだから、500mlのペットボトルを1日何本も買うことになる。水のおかげで血液はサラサラだと思うけど、夏場な