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勇者
つよくなりたいんだ。たいせつな人たちをみんな
わたしが守れるように。
強くなりたいんだ。伝説になりたいんだ。
死してもなお、永遠に歴史に刻まれるような
誰の記憶の中にも生き続けるような。
やさしくてつよくてみんなの中心にいて
そう、まるでそれは伝説の中の勇者。
でもそれは、未だ誰も成し遂げていない
デマだのガセだののニセモノばかり
わたしは勇者になれたかって?
勇者っていうのは、生きてるうちにはなれないんだよ
わたしの中にある父への記憶がある限り、
10年前に他界した父はわたしの中で生き続けてる。
男前でもないし、田舎者の世間知らずだし
気が弱くてだまされてばかり。
子どもにも無頓着で平気で暴言を言うような人だった
父はかたいなかのわりと家系にこだわる農家の
男ばかり4人きょうだいの次男坊で、
長男は跡取りで特別扱いされて、でも何かあったとき
用のスペアとして家に縛りつけられてないがしろに
されて、ひがんでそだって、教育大3回生のときに
このままだと教師になってしまうと、あわてて
国立大を受験し直して、合計7年間大学に通って
都会の会社に勤めたら自分より年下の上司に
腹が立って家族に八つ当たりするしかなかったんだろう
父が
変わったのは、はじめて自分の孫が出来たとき。
わたしが産んだ子どもがとても父になついて
お菓子買ってくれるわけでもないのに
まして女の子と遊ぶなんて父からしたらはじめて
だったことだろう
わたしは生まれてはじめて、父が「ままごと」を
しているところを見た。
そして認知症になった頃、父はまるで人が変わった
ように、まるくなった。
たくさんの方々のお世話になりながら、この世を去った
世界を救うのは、ひとりぼっちのカリスマかい?
たいせつなものを守れなかったら、守りたくても
守りきれなかったら?
魔法も使えないし、炎も吹けない、
どんなにイキリタッテモわたしは無力で脆弱な
みじめなくらいに、か弱くてしたたかにも生きられない
不器用でそれなのにああそれなのにバカ正直で
生真面目で損するタイプ
勇者には程遠いそんなわたしもこれでも
闘っているんだよ、弱い自分と引きずり降ろそうと
手を伸ばしてくる悪意から
やなぎの木のように風に吹かれてしなやかに揺れて
いれば折れることもないのに、ただ立ち尽くすだけ
救いようのない愚者
誰かのために生きるよりも、7つ上の兄からの虐待と
母からのネグレクト、それによるうつ病と自傷行為
そんなトラウマをもう何年も抱きしめて生きてた
わたしは闘う、ひとりではなく、理解を示して下さった
弁護士さんのお力を貸していただいて
法律にもとづいて遺産相続遺留分請求をする。
年金目当てに実家で菓子パン与えて兄夫婦に軟禁されて
いる母も救えたらいいのに。
わたしはわたしのために生きる。
誰かのために死ぬのは、英雄じゃない
別の誰かを泣かせてしまっているから
わたしはわたしのためだけの勇者。
さあ、勇気という剣を持て
錆びついた盾を掲げよ
誇りという名のマントを翻し
いざ覚悟を決めて
ときのこえをあげよ
ぶるってんじゃねぇぞ。