アンジェリケ
それは八重咲きの美しいチューリップ。
花言葉は「夢」
ひと目見たらわすれない、泡沫のような
花。
ちょっとイジワルなところも好きだった。
高校に彼女がいるって知ってたのに。
こちらの気持ちはお見通し。
自分がモテるって知ってて、ワザとちょっかいかけてくる。「同い年だと思ってた」だって。
もうずっと前のことだのに、
はじめてキミがわたしに言ったことばを今目の前で
言われてる不思議な感覚。
とってもとっても小さな小さなことなのに。
アネキぶって「ラーメンおごる」って言って
二人でバイトのあと、ラーメン食べた。
そんな僅かな時間でもキミをひとり占めしたかった。
彼女が店にお客さんで来てわざわざ
キミと目が合う位置に座った。
見つめ合うふたりのまなざしにわたしは白旗を上げた。
それなのにどうしてわたしに彼が出来たら
あんなに責めたの?
揺らぐ 揺れる 気持ちは理屈じゃ表せない
彼のことは全然好きじゃなかった。
なのにどうして付き合ったのだろう。
ただぼんやりと水面に浮かんでたゆたうような
淡い午後のうたた寝の中にとけてしまいそうな
淡い淡いやさしい毒……
。