終結示談
法テラスから封書が届いた。
実兄は、財産分与遺留分として、80万を支払った。
ここから、着手金10万、報酬金1割プラス税で8万
8千円を弁護士事務所にわたしが振り込む。
兄は人あたりがよく、詐欺師に向いているような舌先三寸で生きているような奴だから、弁護士でも丸め込む。詭弁者を前に今まで親戚一同、兄側の言うことを信じてわたしが我が儘を通そうとしているかのような処遇を受けてきた。
法テラスで紹介された弁護士は最初の面談で相談したベテランの方ではなく、インターンの方だった。
頼りなさを感じた。
父の家の査定額を聞いたとき、「へ?安っ!」と思わず言ってしまった。
それで、ベテラン先生にお伺いを立ててくれたらしく複数の会社に査定に出したところ、最初の金額より遥かに跳ね上がった。
こちらがなんにも勉強してないで、専門家任せにしているとこういう穴がある。
インターンと言っても弁護士の資格を取って活動されている訳で、その前は市役所で公務員をされていたそうだが、困っている人を助けたいという思いから弁護士に転身されたとのことだった。
あの雨の生理と膝関節症の中、弁護士事務所に呼び
出された日、わたしは今からの会話を録音していいですか?と訊いた。ベテラン先生はいいですよ、と言った。
わたしが5分遅刻してしまったことで相手は心証を悪くされていただろうし、わたしとの面談は1時間と最初に告げられていた。次の案件の約束があるからと。
松本清張の「霧の旗」で、霧子が言う、
「貧乏人は死ねってことですか」
鞄いっぱいのじゃがいもで憲法までも変えてしまうような弁護士はもういない。
新しい時代は決して素晴らしい世界ではない。
この80万引く10万8千円引く8万8千円イコール?
がわたしの相続分らしい。
でも気は済んだ。
だから早くこのまちを出たい。
このまちにいたら、母が亡くなったとき、必ず兄は
わたしを求めてくることだろう。
昔からそうだった。
失明するかも知れないと泣きながら、母に電話をかけさせて、わたしに泣きついてきた。
あまえとるねん。
知ってるねん、妹やから何してもええって思っとること
卑怯者。
わたしは逃げなきゃ。
どこに逃げようかな。
荷作りは出来ている。
生活保護を受けなくて、働かなくて、精神障害者が
はじめての土地で一人暮らしする方法を今、模索中である。再婚する気はない。
寄りかかる相手もいらん。
不安なんは、田舎すぎて不便やとわたしはクルマに乗れないし、安普請すぎて騒音問題とかで近隣の人から
いじめられたらイヤやなぁ~と思う。
子育て中何度も引っ越したのはそれが原因やから。
怖かったで。
夜中の2時に天井をドンドンドンドンしよるねん。
そして、外階段を上がって来てうちの部屋の前でピタッと止まる。一階にひとり暮らしの男性が住んでいて、
阪神淡路大震災のあとから、そのようなことが毎晩繰り返された。わたしは下の子を妊娠中、上の子は2才。
そのうち、隣の部屋の老未亡人子供無しまでが、一日中たんすの引き出しをわざとバンバンさせるようになり引っ越した。あとから知ったがその建物の裏は墓地だったそうである。
どこに行こうかなぁ。
わたしは自由である。