小説【明け方の若者たち】著者:カツセマサヒコさん/現代風に言うとエモい。だけどそんな薄っぺらい言葉で終わらせたくない。
6月11日に一周年を迎えたカツセマサヒコさんのデビュー作【明け方の若者たち】についてnoteを書く。
私は去年の7月にこの本と、そしてカツセマサヒコさんに出会った。
「明け方の若者たち」という題名と表紙に惹かれたのはもちろんだが、
『「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」その16文字から始まった、沼のような5年間。』
と書かれた帯を見た時に、心撃ち抜かれた。
「読むしかない。読みたい。」
そう思って即購入。
東京 下北沢 明大前 を舞台に、主人公の「こんなハズじゃなかった人生」が描かれている。小説に出てくる景色や音楽や空気、すべてが懐かしく、共感してしまう。
それはきっと、だれもが〈こうしたかった〉とか〈ああなりたかった〉という気持ちを抱え、過去を悔やんで生きているからなのかもしれない。
そしてもう一つ、過去を美しいと思う気持ちにも共感できる。後悔の過去にも幸せの絶頂期があったから、過去を振り返るとすべてが美しく感じられ、それがマジックアワーなのかもしれない。
ただ一つ、主人公の“僕”に負けたのは恋愛である。一人を一途に、それも沼にハマってしまうくらい愛する人と出会えた“僕”が羨ましく思う。
“僕”の人生を自分の過去に重ねると、嫉妬と共感がうず巻く。
自分の未来に絶望しながらも、過去を思い出すときれいな景色があるから、もう少し頑張ってみようと思える。
今の状況が落ち着いたら、ぜひとも下北沢に行って“僕”や“彼女”、“尚人”や“勝ち組”を感じながら街を巡ってみたい。
そして10年後、また【明け方の若者たち】の世界に入ってみようと思う。