見出し画像

名前をつけたいと思った現象に既に名前がついていた話〜青木まりこ現象〜

僕は昔から本屋が好きなのだが、本屋に入ると、かなりの確率で便意に襲われることになる。

これは僕が悪いのではない。本屋のせいなのだ。

本屋には、便意をもよおさせる魔物が住んでいる。

僕は、なんとなーく、子どもの頃からそう思っていた。


あれはたしか18歳ぐらいの頃だったと思うが、あまりにその現象が気になり、名前をつけたいな、とふと思ったことがあった。

それを父親に話すと、父親は「その現象、もう名前あるよ」と言った。


皆さん知ってました?

本好き・本屋好きは、ご存知の方が多いかも。

この現象のこと、「青木まりこ現象」というんですな。


それ以来、本屋に行って便意を感じる度に、僕は「青木まりこキタ」と心の中で呟くのである。

青木まりこ現象とは、具体的にはなんなのか。

青木まりことは、何者なのか。

この記事を書くにあたり、Wikipedia先生に聞いてみた。

Wikipedia先生は、次のように教えてくれた。

青木まりこ現象(あおきまりこげんしょう)とは、書店に足を運んだ際に突如こみあげる便意に対して与えられた呼称である。
この呼称は、1985年にこの現象について言及した女性の名に由来する。書店で便意が引き起こされる具体的な原因については、渋谷昌三によると2014年の時点でまだはっきりとしたことはわかっていないという。

Wikipediaより引用

Wikipedia先生はいつも淡々と説明してくれるので、こちらもつい流されそうになるというか、一見すると学術的な言葉かな?と思わされそうになるが、これは、ただただ本屋と便意の関係について綴られている、非常にくだらない話である。

さて、先生のお陰で、青木まりこ現象のアウトラインは掴めてきた。

青木まりこ現象は1985年に提唱されたもので、本屋と便意の因果関係については、未だにはっきりわかっていないとのこと。

このまま、青木まりこ現象について綴られたWikipediaの中で、興味深かったパートを2つ紹介したい。

その1. 「青木まりこ現象」の投稿採用の陰には「恥じらい」の跡があった

命名の由来となった投稿者名「青木まりこ」は実名とされる。
『本の雑誌』発行人の目黒考二によると、青木が編集部に寄せたハガキは、差出人名が一度消された後、再度記入された形跡があったという。
一度はためらった実名を結局は思い切って書いてしまったところにユーモラスを感じたのだと目黒は振り返っている。

Wikipediaより引用

『本の雑誌』発行人の目黒さんの言わんとすること、わかる気がする。

若い女性読者から際どい内容が送られてきて、名前の箇所に一回消したあとがあって、でも結局実名で送ってきたとなったら、ハガキを送る前の葛藤が垣間見えてなんだか笑ってしまうというか、これを送ってきた人は面白い人だなってきっと思うだろう。


その2. 青木まりこさんの嫁入り問題

あまりに大胆な発言が実名で雑誌に掲載されたことから、親戚一同で大変な話題となり、青木の母は「嫁入り前の娘がなんという恥ずかしいことを」と激怒した(その後和解した)。実際、記事が掲載されて以降しばらく恋人ができなかったらしく、数年後の同編集部の取材時点で青木はまだ独身だった。

Wikipediaより引用

青木まりこさんは恥ずかしい投稿でバズってしまい、実名が晒されて、母親からきつく怒られたようである。

記事が掲載されて以降、しばらく恋人ができなかったとのこと。

青木まりこさんは、青木まりこさんであるが故の苦しみを背負うことになってしまったのである。

そもそも、便意をもよおす現象について、投稿者本人の名前がそのまま現象の名前になってしまうって、こくすぎやしないだろうか。

新しい星を見つけた人が自分の名前をその星につけられる、とかじゃないんだから。

ただ、人には、汚名挽回のチャンスがある。

「青木まりこ」の呪縛から逃れる手段の一つ。

それは、結婚して新しい苗字を手に入れることである。

青木まりこさんは、その機会に恵まれた。

結論は、次の通り。

青木まりこはその後結婚したが、「青木」という同姓の男性と結婚したため、結婚後も本名は「青木まりこ」のままである。

Wikipediaより引用

おい、まりこ。何やってんだ。

おい、まりこ。千載一遇のチャンスを、なに棒に振ってんだ。

おい、まりこ。結婚相手をお母さんに紹介したときのお母さんのリアクションが気になるぞ、まりこ。

まあいい。まとめよう。

つまり、青木まりこさんは、結婚して、青木まりこさんになったのである。


青木まりこ現象の解説、いや、青木まりこ現象のWikipediaに書かれていたオモシロ話の紹介はここまで。

最後に。

青木まりこ現象には、「本のインクに含まれる化学物質が原因」だとか、「本の匂いがトイレットペーパーを連想させる」だとか、いろんな小難しい分析がなされていたようなのだが、僕の中では、一つの仮説がある。

本屋で便意に襲われるのは、単純に、本屋にいるとワクワクするからである。

本屋にいると、ワクワクして、体が刺激されて、それで、もよおす。

この考え方に基づき、僕は嫁との外出中に突然便意に襲われたときは、周囲にさとられないよう、「ワクワクしてきた」という合言葉で、嫁にこっそりそのことを知らせるようにしている。

DRAGON BALLの主人公・孫悟空は「オラ、わくわくすっぞ」と言ったが、彼の言葉の真意もまた、別のところにあったのかもしれない。


おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?