ほろ酔いエッセイ
久しぶりに飲酒をした。飲んだのは『ほろよい〈Liptonアップルティーサワー〉』。一口飲んだ瞬間に、リプトン特有の、あの紅茶の味が口内に広がった。
たまにお酒を飲むと、毎度気分が悪くなり、その度に後悔の念に苛まれる。予期してはいたが、案の定頭痛まで催してきた。しかし、せっかくだからこの状態で文章を書いてみることにした(ちなみにこの状態で小説を書いたらどうなるのかと思い、チャレンジしたこともあるが、ちっとも指が動かなかったため辞めた。今も鈍足だ)。
たった今、歌って踊ってみたら、吐きそうになったため、ワンフレーズで辞めた。
こうして書き始めたは良いものの、思い浮かぶネタが三本しかない。
・カメムシと同乗した話
・肩にカメムシが飛び乗ってきた話
・カップ式自動販売機が何となく好きな話
カメムシの話を膨らませる自信はないので、カップ式自動販売機について書く。
正直、衛生面が気がかりなのでここ数年は避けていたのだが、先日、お腹が空いていたのでココアを買ってしまった。すぐ隣には缶やペットボトル式の自動販売機も設置されていたが、缶やペットボトルにはカロリーが記載されていて恐ろしいし、カップ式は久しぶりだから、カップ式を選んだ。カップカップと書いているが、紙コップと呼ぶ方がしっくりくるのでこれ以降は紙コップと呼びたい。
砂糖とクリームを極限まで少なめにし、ホットココアのボタンを押して一秒、あなた真剣な目をしたから、そこから、何も聞けなく、なるの、星屑、ロンリネス!この曲を、小学五年生か六年生の頃に廊下で大声で歌っていたら、先生に「授業でもそのくらい大きな声で歌ったら?」と言われ、恥ずかしい思いをしたことをよく覚えている。その先生は、あるとき黒板に模造紙を掲示して見せた。Carpentersの『Top Of The World』の歌詞がカタカナで書き起こされていた。「この曲を皆で覚えて、ALTの先生にサプライズで披露しましょう」とのことだった。CDプレイヤーから流れる音楽を聴きながら、私は先生の美しいカタカナを目で追った。毎日何度も繰り返し練習したから、二十年近く経った今でも歌うことができる。カタカナで覚えたので、カタカナでしか歌えない上、歌詞の意味も分からないが、歌うことはできる。歌を披露した日、ALTの先生は私たちが必死に歌う姿を見て、涙ぐんでくれた。カタカナで歌ったから、実際のところネイティブの先生にどう聴こえたかは分からないけれど、それがとても嬉しかった。
目の前で赤いランプが五つ点灯したのを確認し、扉を開けて、ココアの紙コップを取った。べたべたしていた。何だろうと思い、紙コップを目線の高さまで持ち上げてぐるりと回して見ると、ココアの筋が付着していた。ここで衛生面に疑問を持ってしまったのだが、定期点検はなされているはずだし、何より自動販売機の右上に掲示されていた『喫茶店営業許可』の証明書が私から一切の疑念を払拭してくれたため、安心して車に戻り、ゆっくり飲んだ。砂糖とクリームを少なめにしたのは正解だった。ちょうど良い甘さでお腹も満たすことができ、良かった。