母の信仰
私の母はある宗教を熱心に信仰している。
何を信じようと母の自由なのでそれは構わないのだが、私が問題だと思っているのはこの宗教の勧誘活動だ。
この宗教では赤の他人の家を突然訪ねて神の話をしたり冊子を渡したりする。
これを「奉仕」と言うそうだ。
神に対しては「奉仕」なのだろうが、急に知らない人から宗教の話をされる方にとっては、押し売りの訪問販売とさほど変わらないのではないだろうか。
外出先、たとえば街中などで偶然宗教の勧誘に出会うことについてはあまり気にしない人でも、「家」という自身のテリトリーに侵入された場合は多少なりとも不快感を覚える場合が多いのでは?
新型コロナの影響でここ2年は訪問勧誘は行っていないそうなのだが、その代わりに母は手紙で勧誘活動を行なっている。
誰に出すのか尋ねると、40年前の知人だそうだ。
余計に質が悪いと思う。
赤の他人からなら勧誘されてもスルーできるだろうが、知人となると手紙を受け取った相手はモヤモヤしたものを感じそうだ。
そもそも、何故40年前の知人なのだろう?
近い友人らには既に手紙を送って縁を切られたのか、或いはそれを危惧してあえて遠い知り合いから攻めているのか?
ところで、母はこの手紙を書くのにかかる時間を計測・記録している。
そういう決まり事になっているらしい。
この宗教を信仰している人は世界の終末後に楽園に行けるそうなのだが、手紙やら何やらの「奉仕」の時間の多さで、楽園での暮らし向きが変わってきたりするのだろうか?
それ以前に、多くの他人を不快にさせると行くことのできる楽園は、本当に楽園なのか?
色々気にはなるが、怖くて聞けない。
私はたぶん、母に失望したくないのだと思う。
もうしばらく、私は臆病でいるだろう。
オワリ
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