2023.11.10 不思議ロックフェスティバルVol.2 ライブ備忘録
プログレ超素人の自分がうっかりマニア中のマニアが集まるフェスに足を踏み入れてみたら、底なしの沼が待ち受けていた話。
行ってみたライブは、こちら。
ライブ概要
Fushigi Rock Festival #02 Asian Dark Night
2023.11.10(Fri) @秋葉原Club Goodman
出演:
CRESCENT LAMENT
曇ヶ原
Evraak
OPEN 17:30 / START 18:30
前売¥4,500 当日¥5,000(+1drink order)/配信¥2,500
セットリスト
Evraak
1.Fata morgana
2.Cure
3.Call of hierophany(新曲)
4.Sanctuary (新曲)
5.Asylum Piece
6.Saethi
Crescent Lament
1.Once Blossomy
2.暮山船影
3.雁紛飛
4.念伊人
5.灰月漸明
6.破鏡緣
7.Masked Doll
8.夢空
9.孤燈微微
曇ヶ原
1.3472-1
2.くじらの歌は聴こえない
3.New song (Improvisation)
(アンコール)
4.河津桜
※以下、個人名以外は敬称略とさせていただきます。
不思議ロックフェスティバルは、今年で2回目の開催となる(2022年2月に開催されたものを含むと、正確には3回目)。全国のプログレファンが買い求めて売り切れが続いているプログレ音楽紹介雑誌:「不思議音楽館」が主催で、ディスクユニオン、ワールドディスクとAsian Rock Risingも共催だ。さぞ客層は日本中から集まった強者ぞろいのプログレファンばかりかと思うと、ほぼ素人の自分は実はギリギリまで参加を躊躇していたのだ。
ただ、昨年の不思議フェスでEvraakを観たとき、HayawoさんがDream TheaterのErotomaniaのワンフレーズを弾いていたのが印象的で、「あ、Dream Theaterが許される場所なんだ」と安心感が半端無かったので、勇気を踏み出せた。配信ライブは「生で聴いておけば良かった!」と思っても「配信で十分だな」と思ったことは無いなと思い、急遽参加を決めた。
秋葉原Club Goodmanは初めて訪れる。雨上がりの天気で17時半と早い開場時間ながらも、すでに会場の外まで行列ができていた。私の隣は外国人のお客さんだったので、前売りが5時間で売り切れたという昨年の評判は海外にまで認知されているのかも知れない。
開場後の物販コーナーでは、不思議音楽館代表である井上さん(@TatsuhitoI)の商売上手な掛け声に釣られ、1000円に値下げされていた不思議音楽館Vol.6を購入。こちらには2022年2月に開催された不思議ロックフェスの実質Vol.0のライブDVD映像が封入されており、烏頭と曇ヶ原の演奏の様子が収録されている。
そして、開演前の会場BGMで流れる、とてもかっこいい謎の70年代プログレ。何だろうと思ってShazamで調べると、素人の自分には全く知らないマニアックな辺境アーティストばかり!
のちにXで井上さんがプレイリストを公表してくれたが、Shazamで拾えたものは曲名も備忘録として追記しておく。
Fushigi Rock Fest #02 開演前BGM list
Serú Girán (Argentina)
Hard Stuff (UK)
Flibbertigibbet (South Africa)
Leb i sol (Yugoslavia)
Psiglo ( Uruguay) / Cambiarás al Hombre
里見洋と一番星 (Japan)
Abstract truth (South Africa) / Silver Trees
La Máquina De Hacer Pájaros (Argentina) / En Las Calles De Costa Rica
Mojo pojo (Venezuela)
Pastoral (Argentina) / Mujer Silencio
Juan de la cruz (Philippines) / Last Song
Enfasis (Venezuela)
Manatial (Bolivia) / Arriba y Encima
Dias de blues (Uruguay)
I salis (Italy)
Sol y medianoche (Chile)
Syn (USA)
Terje Rypdal (Norway) / Over Birkerot
Anyone's Daughter (Germany) / Adonis, Pt. II: The Disguise
Pia Raug (Denmark)
Anacusa (Argentina)
Ballyhoo (South Africa)
Spilverk Þjóðanna (Iceland) / Elliheimilið Grund
Frágil (Peru)
不思議音楽館読者なら知ってて当然のアーティストばかりのようだが、素人の自分にはどれも新鮮で夢中になって聴き入った。やはり百文は一聴に如かずである。意外にもApple Musicにも多くのアルバムが存在していたので、すぐさまライブラリに追加した。
この時には気づかなかったが、ウルグアイのPsigloもプレイリストに含まれていたようだ。前述の不思議音楽館Vol.6の付録DVDには、曇ヶ原がPsigloのGente Sin Caminoをカバーしたライブ映像が収録されている。ショウタさんがオリジナルの日本語歌詞を付けて歌唱しており、こちらも必見だ。
素人目線のライブ本編の感想
井上さんの温かいMCの後、トップバッターで演奏されたのはEvraak。生演奏で聴く迫力は配信で観るものの何倍も上回り、これだけでも来た甲斐があった。管楽器含む6人という大人数編成なのも、8人King Crimsonに似ていてとてもいい。改めて配信で聴いてみても、やはり皆さん演奏歴ベテランの方揃いなのか、一番人数が多いのに演奏の安定感が半端ない。
Xでは、変幻自在で表現力抜群の歌唱を誇る瀬尾さんを讃える声が多い。勿論自分も瀬尾さんの魅力には虜になったけど、個人的には管楽器の今川さんもこのバンドのキーマンと思う。
2曲目は私がアルバムを聴いて気に入っていたCureなので、ライブで聴けて嬉しい。Evraakさんの中ではちょっと異色の、メロディアスで異国情緒溢れる楽曲で良いのだ。
この日に新曲が2曲も演奏されるという嬉しいサプライズ。Call of hierophany、そして続くSanctuaryは更に闇度が増してかっこいい。早くも次のアルバムの発売が楽しみになった。
新曲の後に続くAsylum Pieceも、私が気に入っていた曲。Areaの白い巨象を思わせる異国なイントロと少しファンキーなKeyに乗せられる説得力のある切ないメロディとの調和がたまらなく魅力的な楽曲だ。
締めは、闇要素100%といった感じで一番KCに近い、アルバムキーチューンのSaethi。瀬尾さんがめちゃくちゃカッコいい。
壮絶な演奏を残しておきながら、「Crescent Lamentを温かく迎えましょう」等HayawoさんのMCがハイテンションながらも控えめな内容なのも好感持てる。ダークな音楽性とは反して、メンバーの皆さんがフレンドリーで仲良さそうなのもいい。不思議と惹きつけられるのは、バンドのメンバー構成の年齢層が幅広いのも一因かも知れない。70年代好きからオルタナ世代、Dream Theater世代まで全方向におすすめできる。8人King Crimsonが活動終了して寂しい人はEvraakを観に行くと満足できる、と言っても過言でもない確かな演奏力を持っている人たちだ。
まだ次回のライブ予定は決まっていないが、来年必ずライブをやるとのこと。ライブ映えするアーティストなので、ぜひとも次のライブにも足を運びたい。
続く台湾からのCrescent Lamentはこのフェスで発表されるまで知らなかったが、プログレメタルというワードを聞けば見逃さずにはいられない要チェックバンドだった。なるほど、井上さんの「どちらかというとメタルよりもこっち寄り」と推薦する理由が理解できた。DiscusがインドネシアのDream Theaterなら、Crescent Lamentは台湾のDream Theaterだ。カッチリとした演奏に、哀愁あるメロディという組み合わせがクセになるのだ。何より、二胡と女性ボーカルというカードはなかなかにずるい。
会場の客層はアラカン世代が中心だったが、VoのMuerさんの盛り上げ方が上手いのも相まって、皆が拳を振り上げるような完全にメタルバンドの空気に持って行ってたのは凄いと思った。
個人的には、まさに王道プログレメタルの破鏡緣や、二胡のソロがとてつもなく美しいバラード曲:殘香がライブで聴けたのが嬉しいし、事実一番客席も盛り上がっていたと思う。
そして、トリは曇ヶ原。Evraakより平均年齢が若いのにトリとはすごいなと思っていたが、いざ3472-1の畳みかけるような変拍子演奏が始まるとノるのも忘れ、圧倒されて地蔵化してしまった。一部の方には気づいてしまったようだが、数日前にPostしてちょっとだけバズったこの投稿は、曇ヶ原の印象だ。
非常に失礼ながら、スタジオアルバムを聴いた限りではここまで壮絶な演奏をするバンドとは想像もしなかった。a_kiraさんのKeyを傾けながらのソロは壮絶で、思わず動画を撮ってしまう。自分は鍵盤奏者じゃなくて良かった。こんな演奏見たら鍵盤やめたくなる。
何よりメンバーがみんな若いので、熱量が半端ない。まるで大御所プログレバンドの72年の演奏を見ているかのようだ。会場でライブDVDを買わなかった自分を激しく悔やんだので、次のライブに行って購入したい。
そして緊張感溢れる演奏を残しておきながら、はにかんだような笑顔でちょっと緊張気味にMCをするVoのショウタさんはギャップ萌えをくすぐらせる。会場から「可愛い〜」と声が上がるのもわかる。メンバーが影響を受けた音楽はまだ知らないが、ヘヴィな演奏に強めの泣きのメロディという組み合わせは、自分が夢中だったゼロ年代Progにも通ずるものがあり、一気にハートを掴まれてしまった。
PVにもなった「くじらの歌は聴こえない」はGenesisやFloydを思わせる静かなパートから変拍子ヘヴィなパートまで起伏に富んだ10分超えの大曲だ。
MCを挟んだ次に演奏されたのは、インプロ主体の新曲。Floyd的なジャムセッションからドラムソロに移ると、やがてテンポアップし異なる空気感になる。Keyのa_kiraさんがベートーヴェンの交響曲第7番2楽章のフレーズを演奏し終わると、Gtのヴァイオラ伊藤さんとのソロ掛け合いに。やがでa_kiraさんがキーボードを担ぎステージ前方へ出てくると、KeyとGtの壮絶なソロバトルになる。動画を撮ろうとしたら会場の多数が同様にスマホを掲げていた。間違いなく、本日一番アツかった瞬間と思う。
鳴りやまない拍手と歓声のあと、MCを挟んで演奏されたのは河津桜。
Genesis的なアプローチの静寂パートで、12弦ギターを弾きながら歌唱するショウタさんの切なさが半端ない。静と動のコントラスト、テクニカルな演奏と抒情的なメロディとの対比が素晴らしいバンドは、まさに令和のプログレスターというキャッチコピーに負けない実力だった。
次回のライブは1/14、そして4/19にはワンマンライブが開催されるとのこと。これはもう行くしかない。来年の新しい楽しみができた。
同じアネクドテン系ヘヴィネスにカテゴライズされそうな分野でありながら、どこか多国籍要素のあるEvraakと、日本的な切なメロディが特徴的な曇ヶ原。全く違う個性で面白い。おそらくこの両者は、これからもライブを追いかけて行くであろう重要な推しバンドになった。
そして、台湾からのCrescent Lamentは、また日本でライブを観る機会があるかは分からないが、台湾は遠征しようと思ったらそうハードルは高くない距離だ。この日に来場者特典で配布されたCD-Rにて新曲を聴くことができたし、今後の活動も楽しみだ。
何よりも、海外アーティストの公演が軒並み1万5千円超えと高騰している中、前売り4500円という破格でこれほど愛のある素晴らしいライブを提供してくれた井上さんには、感謝しかない。
配信チケットは、今でも購入でき、11/30まで視聴可能だ。
少しでも興味が沸いてきた方は、ぜひ配信でも楽しんでほしい。
案内リンク1:不思議配信チケット購入リンク先
案内リンク2:Evraak
公式HP
公式Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=8hLWA2EgB6M
案内リンク3:Crescent Lament
公式X
https://twitter.com/CrescentLament
公式Youtubeチャンネル
案内リンク4:曇ヶ原
公式X
https://twitter.com/kumorigahara
公式HP
公式Youtubeチャンネル
2024.3.19 追記
・本文中の軽微なミスを修正、セットリストを追加しました。
・不思議音楽館Vol.7にて、約5,000字の拡大版ライブレポを掲載中です!
https://diskunion.net/progre/ct/detail/1008777187
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