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半円形

突然に放りだされた
張りつめていた糸が切れて
知らない場所で尻餅をついた

目の前には高く聳え立つ周壁
僕は壁際に沿って歩く
手のひらで壁の感触を窺う
冷んやりと突き離された気がする
まるで冷たい心と
手を繋いでいるみたいだった

壁と隣り合って密生する樹木たち
茂った草や蔓で溢れている
見上げれば半円形の空が浮かんでいる
枝葉や蔓草の隙間がその形を示した

蔓のように伸びる触手が
僕を壁に押さえつけて
縛りあげようとしている
歓迎されていないことが分かる

こめかみが痛み始めた
思い出そうとするが思い出せない
さっきまでどこにいたんだっけ
僕には何かが欠けている
そう思ったとき

欠落感が心に半円を描いた
不思議な感覚だった
そして僕には分かっていた

空にも半円がある
半円どうしを合わせれば
まん丸の円になるはずだと
でも僕はその合わせ方を知らない

あなた方が生け贄を
欲しがってるのは知っている

僕は指先を噛み切って
彼らに血を見せた
血が我々を正気に戻すのか
狂気へ導くのかは知らない

半円と半円の繋ぎ目を
接着剤を塗るようにして
僕は血が滴る指で擦りつけた

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