セラムン二次創作小説『いつの時代も君は(アル美奈)』
この時代のセーラーヴィーナスである愛野美奈子に出会った俺は、セーラーヴィーナスとしての記憶を無くしている彼女に驚いた。
それだけじゃない。俺の事すら忘れていた。これには結構傷付いた。
仕方がないと言えばそうだけど、プリンセスお付の四守護神リーダーとして責任感を持っていた人が、全く記憶が無いなんて残念に思う。
「またきっと生まれ変わるわ!その時は私を見つけて、みんなよりいち早く戦士として目覚めさせて」
崩れゆく月の王国で、かつてヴィーナスが頼んで来た言葉を思い出す。
強く疑わぬ目で、未来を信じて疑わなかったヴィーナス。きっとまた巡り会える。そう信じていた。
生まれ変わってもまた戦士としてやっていきたいと言う覚悟を感じた。リーダーとして、みんなを引っ張って行けるように早く目覚めて強くなって頼れる様にしておきたい。彼女の責任感の強さを目の当たりにして、あの日俺は嬉しく思っていた。
それなのに戦士であったことは愚か、俺の事さえ覚えていないなんてあんまりだ。結構酷いとさえ思う。
けれど、彼女と共にしてきてホッとした事も事実だ。楽しそうに戦士をする姿。惚れっぽい性格。明るく前向きな姿勢。
かつてのヴィーナスがそこにいた。ヴィーナスであって、ヴィーナスでは無いけれど、確実にセーラーヴィーナスその人だ。
そんな彼女に付いていて驚いたのは、空野ひかるちゃんと言う一人の女の子の存在だ。
初めて見た時は本当に驚いたよ。
セーラーマーキュリーにそっくり、瓜二つだ。美奈の昔からの親友だそうだが、潜在意識下で四守護神を求めていたのか?それともこれは運命なのか?
知らず知らずのうちに面影を追い求めていたのか?
それは彼女ですら分からないだろうけれど、マーキュリー似のひかるちゃんと仲良くしている姿を見ると昔を思い出すし、ホッとする。
ひかるちゃんはセーラーマーキュリーでは無いと確信しているが、似たところが多いのも驚きだ。
それともう一つ。斎藤先輩だ。
例の如く美奈の一目惚れだが、正直本当に驚いた。アイツにーーークンツァイトにそっくりじゃないか。
見た時は本当にびっくりしたってもんじゃなかったよ。
一目惚れの達人なのは知っているけど、それを差し置いてもわざわざクンツァイト似の奴をまたしっかりと心奪われるとは、情けない……
やっぱり美奈は、アイツの事を忘れられないんだな。
それだけ本気で、一時の気の迷いでもなんでもないほど惚れ込んでいたんだな。
禁断の恋で好きになってはいけないからこそ、想いが膨らんで行ってしまったと言う事か?
愛の女神が禁断の恋とは、何という運命だろう。
これからもアイツの面影を追い求め、一目惚れする人生を送っていくんだろ?
クンツァイトも、愛の女神に愛されて幸せ者だな。いつか二人が幸せになる未来を祈ってやるよ。
恋や欲望に正直に生きている美奈。
今はまだ自身の本当の姿を思い出せてはいない君だけれど、前世のセーラーヴィーナスを今の美奈に見ているからこそ、この先もリーダーとして責任感を持ってプリンセスを護る立派な戦士になると確信している。信じている。
だからこれからも宜しくな、美奈。