セラムン二次創作小説『希望の香りがする場所(ミライ)へ』



……………セス?


………リンセス?


……プリンセス!


………………火球!



「ん、うぅ……ん」



懐かしい声がして、目が覚める。

ここは、どこ?

私は生きているの?


「プリンセス!」

「ファイター、ヒーラー、メイカー」

「良かった、プリンセス」


気がつくとスターライツが心配そうに私を取り囲んでいた。そして、涙を浮かべて喜んでいる。

身体は支えられているのか、上半身が浮いている。

ライツが支えている訳では無いみたい。

優しく包むこの暖かい手の感触。覚えているわ。


「火球、よく頑張ったな」

「……ゼウス!」


キンモク星でギャラクシアに私の目の前で殺られてしまった恋人、ゼウスその人。

会いたかった愛しい人が目の前にいる。

嘘みたい。夢のよう。


「どう、して?」

「セーラームーンのお陰のようだ」

「星々がみな、蘇ってそれぞれ自分たちの故郷へと帰っていっている様です」

「私たちも、蘇ったと言う事?」

「ええ、ギャラクシーコルドロンの再生の力で」


そう、やはりあの時セーラームーンがセーラークリスタルさえあれば3人の身体は必ず再生するって励ましてくれた通り、再生出来たのね。ゼウスも。

信じてセーラームーンに託して良かった。

助けを求めて良かった。


「3人とも変身が解除されているのね……」


やはり一度命を落とした代償なのか、地球で着用していた学ランに身を包んでいた。

私もセーラー戦士に変身していたのに、ドレス姿に戻っていた。


「私たちは貴女の守護戦士。貴女の盾になり、守ってしねた事は戦士冥利に尽きます。どうか、お気に病まないでください」

「ヒーラー、ありがとう」


3人が殺られて、クリスタルも奪われ、絶望していたけれど、こうしてまた巡り会えた。

ゼウスも戻って来てくれた。

それだけで充分満たされた。


「セーラームーンは?」


銀河を救ってくれた肝心のセーラームーンにお礼が言いたくて、フッと気になった。

彼女がいなければ意味が無い。


「セーラームーンなら今、彼女の大切な人たちと再会を果たしている最中の様ですよ」


メイカーにそう教えられ、指さすほいこうへと顔を向ける。

するとそこには仲間やプリンスと再会を喜び、抱き合っている所だった。

そう、セーラームーンも大切な人たちと再会出来たのね。


そうよね?私のような弱い星のスターシードの持ち主でもちゃんと転生出来たのだから。

太陽系の強く美しい守護戦士や、銀河一の力を持つセーラークリスタル、シルバームーン・クリスタルを持つ、地球の時期クイーンとなられる方だもの。

滅んだりなんかしない!

負けたりなんてしない!

そう信じてあの時託したんだもの。


“また……みんなと一緒に生まれてきたいわ

 生まれて……来れるかな……”

“勿論よ!私たちはセーラークリスタルを

 持つ戦士だもの。何度だって生まれて

 これるわ”

“そうよね……セーラークリスタルはあたし達の……希望だもの……ね……”


その通りだった。

みんな一緒に生まれてこられた。

信じて託してよかった。

地球に助けを求めて降りたって、良かった。


セーラームーン、本当に強く美しい戦士だった。

レテやムネモシュネに、敵である2人に“セーラームーンの持つ力は戦いを呼び寄せる!お前が存在する限り戦いは終わらない。お前こそが敵”そう言われても“私を殺して”そう何の迷いもなく凛としてはっきりと言い切った。

きっとここに至るまでも私の想像を超える壮絶な戦いがあったんだろうなって。

私には想像出来ないくらい色んなことがあって、色んなことを背負って。

それでも、それを凌駕する程彼女は戦いの無い未来を信じてる。

私にはあんな事言えない。

大きな、手が届かない存在。

だけど彼女もまた、普通の女の子。



彼女が存在しているという事。

それはまた戦いがあるかもしれないと言う事。

それでも、セーラームーンは未来を信じて私たちを転生させてくれた。

彼女自身もまた戦いがある世界かもしれなくても、戻って来た。


「セーラームーン」


一言お礼が言いたくて話しかけてしまった。

感動の再会の最中に現金だと思ったけれど、どうしてもお礼が言いたくて。


「プリンセス火球!」

「セーラームーン、ありがとう」

「いいえ……あたしの方こそ……プリンセス火球。……ありがとう」

「お礼、言われることは何も」

「ずっと一緒に戦って、励ましてくれたわ」

「こちらの方こそ、3人を失って絶望してた私を支えてくれて、どんなに心強かったか」


そう、どれだけセーラームーンの存在が希望だったか。

強く美しいセーラームーンがどれだけ私の、銀河のセーラー戦士の憧れか。

そんな人に感謝してもらえるなんて、こんな光栄な事はないわね。


「みんな、戻って来て良かった。そちらの男性は、もしかして……?」

「ええ、恋人のゼウスです。貴女のお陰でまた巡り会えたわ」

「ゼウスと申します。彼女を支えてくれた事、そしてこうしてまたみな一緒に生まれてこられた事。感謝致します。貴女にこうして会えた事も光栄に存じます。ーーシルバー・ミレニアムの次期女王、ネオクイーンセレニティ。そして、ゴールデン・キングダムの次期王、キングエンディミオン」

「オレの事、知っているのですか?」

「ええ、太陽系の強く美しい守護戦士たちは銀河に散らばるセーラー戦士たちの憧れ。そして伝説です。プリンスとプリンセスが手を取り、地球の次期キングとクイーンの輝きを見せたあの一瞬ーー。生命力に溢れた星の光のパワーは時空を超えて銀河中に伝わってきましたから。そんなあなた方に、会えて光栄です」


あの星の光のパワー、とても力強くて希望に満ち溢れていた。

暖かくて、落ち着く希望のパワー。

だけれど、それを機にギャラクシアの侵略と破壊が勢いを増して、私たちの星まで死の星になるなんて……。

彼を目の前で失う事になってしまうなんて想いもしなかった。


セーラームーンが、シルバー・ムーン・クリスタルが悪いわけじゃない!

嫉妬して、悪の心が生まれるのが悪いの!

セーラームーンはきっかけに過ぎなかったんだって、私は思う。

彼女がいたからこそ、またこうしてみんな一緒に生まれてこられたのだから。

ギャラクシアもレテもムネモシュネも、シャドウ・ギャラクティカの仮初のセーラー戦士たち全員もまた生まれ変わってるかもしれないけど。

今度は真っ当に生きて欲しいわね。


「そうだったんですね。よろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」


ゼウスと王子エンディミオンが手を取り合って熱く握手を交わしている。

それを見ると、何だか感無量になって。

目頭が熱くなって、込み上げて来るものがある。

プリンセスも、プリンスも、とてもいい人たちだわ。


「地球に、是非遊びに来て下さい」

「はい、是非!あなた方にも、私たちの星に、是非遊びに来て下さい」


お互いの星に遊びに行く約束までしてるわ。うふふ。

どうなっているかしら?私たちのキンモク星は……?


「私たちのプリンセスを護ってくれて、感謝しているよ」(ウラヌス)

「敵だと疑って、ごめんなさいね」(ネプチューン)

「力不足で、最後まで力になれず、申し訳ございませんでした」(プルート)

「いいえ、疑うのは戦士として当然のこと。立派でしたよ」(メイカー)

「私たちも、途中で力尽きてしまって最後まで一緒に戦えなかったし」(ファイター)

「まぁ私たちも、余裕無くて大人げなかったしね」(ヒーラー)


みな、それぞれに別れの挨拶をしている。

住む世界が遠く離れていても、お互い同じセーラークリスタルを持つ守護戦士。

あの時は戦いで、心の余裕が無くて、どんな関係だったかは私には分からないけれど。


「私たちも最初に殺られてしまって…」(マーキュリー)

「手も足も出なくて、不甲斐なかった。悔しいよ、うさぎを守り切れなくて……。敵だと疑って攻撃的になってしまった」(ジュピター)

「あなた達の気持ちは痛い程分かるから、気にしないで」(ファイター)

「私たちも、試すような事をして、ごめんなさい」(マーズ)

「いいえ、かっこよかったですよ!プリンセスに純潔を誓ったあなた達」(メイカー)

「そうそう、何だっけ?“とっくに命を捧げたたった一人の人がいるから男なんかお呼びじゃない”だっけ?」(ヒーラー)

「へぇー美奈子お姉ちゃんもレイお姉ちゃんもそんな事言ってたんだ?」(サターン)

「普段、彼氏欲しい~って言ってるのに、やるじゃん!」(ジュピター)

「ち、違うわよ!口からでまかせよ!本心じゃないわよ!」(ヴィーナス)

「いやいや、マジな顔だったよ、ヴィーナス」(ヒーラー)

「もう!そーよ!私の一番はうさぎよ!これで良いでしょ?」(ヴィーナス)

「そう、私たちはうさぎを守る守護戦士だもの。うさぎを置いて大切な物なんて他には無いわ。昔も今も、そしてこれからも未来永劫ね!」(マーズ)

「それでこそ真のセーラー戦士!!」(ファイター)

「あなた方は?」(ネプチューン)

「私たちも、プリンセスが一番大切ですよ!」(メイカー)

「プリンセスの為ならなんだって出来る」(ファイター)

「勿論、プリンセスは私たちの生き甲斐よ」(ヒーラー)

「そう、お互い同じね!」(プルート)

「これからもお互いプリンセスを護って行きましょう」(マーキュリー)


まぁ、ファイターたちったら、あんな事言っちゃって。

私を護る。それは彼女たちの使命ではあるけれど、全てをかけて犠牲にして欲しいなんて思ってない。望んでもないわ。

だけど、その気持ちだけで充分。ありがたい。



「プリンス、ご挨拶が遅れ、誠に申し訳ございません。私は、キンモク星の丹桂王国第一皇女、火球と申します」

「こちらこそ、挨拶出来ずすみません。地球国の第一王子、エンディミオン。今の名前は地場衛と言います。うさを、セーラームーンを助けて頂き、ありがとうございます」

「いいえ、私の方こそ励ましてもらって。結局力尽きてしまって……。」

「きっと心強かったと思います。彼女は一人じゃ戦えないから。みんなの力があってこそ本来の力を発揮するから。」


流石は未来の伴侶。彼女の事は何でも知っているのね。

セーラームーンも、こんな彼に愛されて幸せね。

私も、ゼウスが戻って来てくれてとても幸せ。


「先程挨拶したのは私のフィアンセですわ。この3人はキンモク星の守護戦士で、セーラースターファイター、セーラースターヒーラー、セーラースターメイカー。3人を総称でスターライツと呼んでます」


一人一人紹介する。名前を呼ばれた者が順番に会釈をする。


「私たちはもうそろそろ旅立とうと思います。感動の再会に水を指した形になってごめんなさいね、セーラームーン」

「いいえ、声掛けてくれて嬉しかったです。無事な姿が見られて、良かった」

「ありがとう、セーラームーン。そして、守護戦士の皆さんも。会えて良かった」

「私もです。あの、えっと……どちらへ?故郷のキンモク星に?」

「はい、帰ってみようと思います。死の星に変えられてしまったけれど、私たちが無事なんですもの。きっと何とか復興出来るわ」


そう、私たちがいる限り、何度だってやり直せる。

私たちの可能性を、セーラークリスタルを信じているから。


「そうですね!私たちが生きてる限り星は輝き続けるし、何度だってやり直せるよね!」

「ええ、メイカーとヒーラーの力があれば復興なんてすぐよ!ファイターは……ちょっとそう言うのには向かないけれど笑」

「ああ~プリンセス酷い!……ってまぁ、確かに苦手分野ではありますが」

「どっちかって言うとファイターは破壊のが得意だもんね」

「くれぐれも、手伝わないで頂きたいものです」

「2人とも酷くない?」

「まぁ確かに、毎回何かしら壊してはヒーラーを困らせてるしな」

「ゼウス様まで……」

「そっちも大変なのが一人、いるようだな」

「うちにも破壊神みたいな人、一人いるから分かるよ」

「はるかさん、まこちゃん?それ、誰の事?」

「言われなきゃ分からない?あんたの事よ、美奈!」

「レイちゃんまで酷くない?私は破壊神じゃありません!愛と美の女神です」

「まぁそう言う事にしときましょうか」

「せつなさん(涙)」

「美奈子お姉ちゃん面白い♪」


最後の会話はファイターとヴィーナスの破壊の話で和やかに、笑いに包まれていた。

私が振ってしまったようなものだけれど。

結果、みんな笑顔になれたのだからこの話題も報われたかしら。


「それでは皆さん、この辺で御機嫌よう」

「また、平和な地球に遊びに来てくださいね♪」

「ええ、是非!セーラームーン達も、キンモク星へ是非いらして」

「もっちろん!」

「それから……」


プリンセスとプリンスを交互に見る。


「あなた方がクイーンとキングになるその日、戴冠式にも、是非出席させて頂きたいわ♪」

「その未来を選んだら、是非!」


どんな未来を選ぶかは私たちが決められる。

約束された未来を選んでも、選ばなくても、それは私たち次第。


「私たちの戴冠式にも是非、ご出席して下さいね♪」

「はい、是非ですぅ~」

「それではまた!」

「さよなら」


太陽系の皆さんと別れをした私たちはギャラクシー・コルドロンから彗星の様にキンモク星へと旅立った。無数の星々と一緒に。


故郷であるキンモク星がどうなっているかは不安もある。

けれどこうしてみんな揃って帰れる。

それが何よりも嬉しく、幸せ。

5人いれば、例え死の星でもセーラークリスタルの力で復興出来る。

そして、丹桂王国いっぱいに広がる金木犀の香りに包まれながら、また、新しい人生を始めよう。


セーラームーン達が来ても恥ずかしくないよう、輝く星にしてみせるわ。


未来を信じて、可能性を胸に私たちはキンモク星へと帰路に着いた。





おわり



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