セラムン二次創作小説『タピりたい』
ゴールデンウィークって事で各教科、いっぱい宿題が出た。
遊びを兼ねていつものメンバーで宿題をしようと、九助の家に集まることにした。
「チョベリブー」
「超キャパい」
みんな黙々と宿題をしていると、なるるとるるなが根を上げた。
相変わらずギャル語は理解出来ないけど、雰囲気で嫌な事だけは充分くらい伝わって来る。
「チョベリブー?キャパい?」
こっちが頭おかしくなりそう。
「チョベリブーは超ベリーブルーの略で、凄く憂鬱って事。キャパいはキャパオーバーの略で、いっぱいいっぱいって意味だよ、ほたるちゃん」
「へぇー、ちびうさちゃんよく知ってるね!」
本当、ちびうさちゃんってギャル語に詳しい。
どうして理解出来るんだろう?
いつもどこでギャル語の勉強してるんだろう?
テレビやネットかな?
それともうさぎお姉ちゃんかな?
うん、うさぎお姉ちゃんっぽい!
現役の女子高生だし、流行に敏感そうだし、何よりブームに乗っかりそうな美奈Pと大親友。きっと美奈Pとギャル語で喋ってる所を聞いているのかも。
「えへへー、ほたるちゃんに褒められると嬉しいな」
「ギャル語理解出来たところで、褒められた事でもねぇだろ?」
「九助!」
「ほたるさんは頭良くて勉強出来るから、ギャル語が理解出来なくても全然大丈夫ですよ」
そりゃあギャル語が理解出来なくても困らないと思う。
けど、私が理解したいのはそこじゃなくて、ちびうさちゃんその人。ちびうさちゃんの事は、何でも知りたい!そう思うのはおかしい事かな?
「俺もギャル語はさっぱりだぜ?」
「僕も理解の外ですね。理解したいとも、思いませんし」
2人とも、なるるとるるなを全否定して失礼してるわね。それでも友達?
「あんた達友だち歴あたしより長いでしょ?」
「まぁ、男の子だから理解しにくいのかも?」
「じゃあ桃ちゃんは理解出来てるの?」
「一応、頑張って流行には着いていこうと勉強はしてるよ」
「桃ちゃん、偉い!」
桃ちゃんも、勉強熱心ね。中華料理屋経営してるから、日本の流行りはそんなに関係ないと思うけど、どうなんだろう?
「俺はお嬢様言葉を使う姉ちゃんも理解出来ねえし、したくもねぇよ」
九助のお姉さんってTA女学院行ってるお嬢様だっけ?
レイちゃんと仲がいいとか。
「私のママもお嬢様言葉喋るよ」
ママって言っても、みちるママだし、うさぎお姉ちゃん達と年変わらない女子高生だけど。
「お前のママもお嬢様なのかよ?肩こらねぇ?」
「それが普通だと思ってた」
そう、生まれた時からこの環境だったから普通だと思ってたけど、もしかして大分特殊なのかもって最近思い始めてた。
前世も前前世も、特殊だったから当たり前の生活の方が私には非日常の様な感覚になる事がある。
「ほたるちゃん……」
唯一、私の過去を知るちびうさちゃんが心配そうな顔をしてくれている。
心配かけないようにしなきゃいけないのに。
「ちびうさちゃんはどうしてそんなにギャル語が分かるの?」
暗くなりそうだから、仕切り直し。
ちびうさちゃんがギャル語に詳しい理由が知りたい。
「何でだろう?うさぎかな?美奈Pと電話で時々ギャル語使ってるの気になって質問したりしてる」
「うさぎお姉ちゃんと美奈Pか……」
やっぱり私の予想、的中した。
流石は女子高生を姉(と言うか未来のママだけど)に持つだけある。
って、よくよく考えると私も女子高生のママ(私の場合はママでも何でも無いけど)を持ってるのに、何でギャル語がちんぷんかんぷんなんだろう。
みちるママ、お嬢様だからかな?
うさぎお姉ちゃんと学校同じだから会うこともあるだろうけど、ギャル語が移ったりしないのかな?
はるかパパも同じだよね。パパだから、男言葉喋ってるし、みちるママはお嬢様言葉だし。
せつなママは、論外かな?アラサーだし。
「タピりたい!」
「パンナコッタ食べたい!」
「なんてこった!」
「パンナコッタ!あははははは」
「あははははは~」
私たちの会話など聞こえてなかったかのように、ギャルコンビはマイペースに勉強を離脱してギャル語で話を続けてる。
名誉の為に言っとくけど、私やちびうさちゃん達はちゃんと宿題の手を動かしながら会話してるのよ?
蕎麦屋に宿題しに来てて、何で外国の食べ物食べたがるんだろ。本当、理解不能。
「蕎麦なら幾らでもあるから食ってもいいぞ」
朝から来ていた私たちは、昼になって蕎麦をご馳走様してもらう事になった。
ゴールデンウィークと言う事もあって、人も多く、賑わっている中来ちゃって、蕎麦まで持て成して貰って余計忙しくしちゃったかも。
「わーい、待ってましたぁ~♪」
「いっただっきまぁ~っす」
「九助さん家のお蕎麦、美味しいんですよね」
「そうなんだ?私、食べるの初めてだから楽しみ」
「食べすぎたら昼に響くから、程々にね」
桃ちゃんが言う通り、私たちの今日の目的は大量に出された宿題を片す事。
朝から集まったのは、一日かかりになる事は間違いないと踏んだから。
特に、なるるとるるな。この二人の為に集まった様なもので、その二人が根を上げちゃあ意味が無い!
「本当、九助の蕎麦、美味しかった♪」
満足した私は、再び宿題と向き合う事にした。
お昼を食べた事で満足したのか、昼からは集中して凄い勢いで宿題を片していた。感心感心。
その代わり私たちの方が、残り少なくなった事で気が緩んでいた。
「九助、差し入れ持ってきましたわよ」
「みんな、頑張ってらっしゃる?」
「姉ちゃん、サンキュー。それと、ええっとぉ……姉ちゃんの友達も」
九助のお姉ちゃんと、もう一つ声が聞こえて来て、聞き覚えのある声に、私は顔を上げて、その方向を見た。
「レイお姉ちゃん!」
「レイちゃん?」
ちびうさちゃんとシンクロして驚く。
まさかの人物の登場に、驚きを隠せないでいると。
「タピオカミルクティーの差し入れよ。頑張って」
「ありがとう、レイちゃん」
「レイお姉ちゃん、どうしてここに?」
「ことのから、みんな頑張ってるって聞いて。何か出来ないかと思って」
先日、九助のお姉ちゃんと私たちの知り合いが繋がっていることが判明。
それを戦士全員に話して聞かせたところ、私たちに気をかけてくれて、差し入れがてら様子を見に来てくれたみたい。
「タピれる~♪」
「エモい!」
「あげみざわ~」
「ちょベリハ~」
お礼もそこそこに、なるるとるるなの二人は、タピオカミルクティーを飲み始め、生き生きしだした。
「宿題、頑張って良かった」
そう言って2人は、水を得た魚みたいに生き生きして、残りの宿題を猛スピードで終わらせた。やればできる子達だと感心した。
そして私はこの日、ギャルにはタピオカを与えると頑張れる。と、勉強以外に間違った知識を吸収した。
宿題は、昼前、そばを食べる直前に終わらせたよ?
「また、みんなで宿題しようね♪」
「今度は桃ちゃん家か、なるるん家キボンヌ♪」
宿題に前向きなのは嬉しいけど、それ、絶対に食べ物や宝石目当てでしょ?
でも、二人らしいと感心してしまった。
今度は夏休みの宿題に、桃ちゃん家の中華料理を楽しみに頑張るのも悪くないな。
おわり