セラムン二次創作小説『男の勝負の果てに(ジェダレイ)』



「良かった、気がついて」


目を覚ますと心配そうな顔で覗き込んでいるレイの顔が間近にあった。

どう言う状況にあるのか、今自分が置かれている状況が分からず混乱する。

頭が何か柔らかいと思い、確認するとレイに膝枕をされている事が分かった。何だこの凄い状況は?

俺はまだ寝ていて、夢を見ているのか?


「ゔっ」


何だろう、頭が痛い。ズキズキする。

もしかして体調が悪くなって倒れたのか?


「大丈夫?貴方、お酒を飲んで倒れちゃったのよ」

「お酒……?」

「ええ、お爺ちゃんに勧められて」

「火野宮司に?」


言われて少し記憶がハッキリしてきた。

二十歳を超え、お酒が飲めると流れで話すと、一緒に飲もうと言う事になった。そして何故かどちらが強いか勝負する事になってしまった。

レイが制止したにも関わらず俺達は聞く耳など持たず、ひたすらに飲み続け、困らせた。

そして今、俺はぶっ倒れてレイの膝枕で寝かされているという訳だ。

頭が痛いのも二日酔いの一種といった所だろう。


酒は決して弱くは無い。強いと言う訳では無いから多分普通だと思う。

この神社の宮司であり、レイの爺ちゃんがずば抜けて強い。そんな印象を受けた。

酒を飲めるか聞いて、勝負に持ち込んで来ただけある。


「おう、気がついたか若人よ」


お酒を大量に飲んだ後とは思えない程のシラフで俺の様子を見に来たらしい。どれだけ大酒飲みなんだよ!


「もう、お爺ちゃん!あれ程悪酔いするなって言ったのに……」


普段、クールなお嬢様で有名なレイだが、お爺ちゃんの前だとただの孫となる。歳も歳だから心配しているのだろう。

幾ら強いからと言っても無理は禁物だ。

なのに静止を聞かず日本酒の瓶を三本開けて、あっという間に飲み干すという事をやってのけた。こりゃあ死期を早めるぞ。


「レイに相応しい男か試してやったんじゃ」

「それが何でお酒なの?ただ自分が飲みたかっただけでしょ?」

「若いのに弱いのぉ。あれくらいでぶっ倒れるとは軟弱な」

「あのねぇ?」


レイに痛い所を付かれたのか、火野宮司は話を逸らして俺に話を向けてきた。

俺が軟弱?いや、宮司が強すぎんだろ!

それに俺は最近漸く飲める年齢になったんだ。対して宮司は何十年って飲んでいて、経験値が違い過ぎる。

お陰でレイにかっこ悪い所を見られてしまった。穴があったら入りたい。


「和永、貴方もよ?」

「あ、え、お、俺?」


まさかの矛先が俺に向いて驚く。俺、悪くないだろ?


「ええ、貴方もこんな馬鹿馬鹿しい勝負に乗らないで下さる?お爺ちゃんが調子に乗るだけだから」

「ご、ごめんなさい」


何でか分からないけど、怒られるのも喧嘩するのも嫌だから素直に謝っておく。頭もまだズキズキと痛い。大声で返す気力も無い。


「本当に分かってらっしゃるの?余りお酒に慣れていないのに無理はして欲しく無いですわ!私は、2人とも大切だから、もし何かあったらって……」


お嬢様言葉で怒りながらも心配していて、顔は今にも泣きそうだった。

そうか、そんなに俺たちのこと心配してくれてたんだな。やっぱりレイは優しいな。

俺もなんか泣きそうになって来た。

レイの気持ちも考えずに、ただ目の前の男の勝負に燃えて。

宮司と同じくらい俺の事、心配してくれて単純に嬉しい。


「レイ、心配してくれてありがとう。膝枕も、めっちゃ暖かくて柔らかくて心地良い」

「……バカ」


見上げるとレイは照れたような嬉しそうな顔をしていた。

馬鹿な勝負をしてぶっ倒れ、宮司には軟弱呼ばわりされて散々だと思ったけど。

そのお陰でこうしてずっとレイに心配されて膝枕して貰えたんだからたまには男の勝負に負けるのも良いなと思った。


頭が痛くて鎮痛剤を飲みたかったが、せっかくレイが膝枕をしてくれていることが嬉しくて、そのままもう一眠りする事にした。

出来れば夢の中ではレイにカッコイイ所が見せられますように、と願いながら眠りに着いた。





おわり



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