セラムン二次創作小説『春眠暁を覚えず(クン美奈)』
「ふぁ~ねっむぅ~い。もう限界…」
大きな欠伸をしてソファーに寝転ぶ美奈子。
最近、俺の家へと来てはソファーに横たわり寝る事が増えた恋人。
「はぁー」
今日も例に違わずソファーで寝始めた美奈子を横目でチラッと確認して大きなため息をつく。
心を許し、安心しきっているのだろう。
それは単純に喜ぶべき事で嬉しい事なのだが、男である以上困った事がある。
制服や私服のミニスカートで無防備に寝ている為、理性を保つのが大変という事だ。寧ろこの一点に尽きる。
お陰で勉強に集中が出来ない。
美奈子が持参し、置いている彼女専用のブランケットを掛けようと近づくとたわわになった脚、そして薄着から膨らむ胸、チラッと見える胸の谷間…。
襲ってくれと言わんばかりに主張して煽ってくるそれらに、理性を保っているのが奇跡と言っても過言ではない。
俺だから出来ている事で、他のやつならとっくに食われていてもおかしくは無い。
俺が聖人君子で我慢強い男だから平静を保っていられるが、万が一襲われても文句は言えないぞ!
ったくしょうがない奴だな…。
気持ち良さそうな顔で寝て、どんな夢見てるんだ?
その夢の中では俺はいるのだろうか?
色々考えながらブランケットをかけてやる。
ついうっかり無防備な彼女の髪の毛を触って後悔する。
もっと触りたい…と言う感情にみるみる支配されて行く。
前世では触れたくても触れられない関係性だった。
触れられる距離でも心の距離がストッパーをかけていた。
決して心も身体も通い合わせてはいけない。
リーダーとして何時いかなる時も凛とし、周りのお手本でなければならなかった。
そう思えば思うほど、ヴィーナスに惹かれていったことは事実で、目を背けようもなかった。
それが今は手の届く所にある。
心も身体も通わせられる。
そんな事とも知らず無防備に寝続ける恋人に若干腹が立つ。
「う、うぅ~ん」
ブランケットの肌触りと髪の毛を触った感触で眠りから覚ましたようだ。
「漸く目覚めたか?」
「よく寝たわ~♪って漸く?まさかガッツリ寝てたの?」
「いや、本の30分程度だが?」
「なぁ~んだ。昼寝程度じゃない!びっくりした」
「最近よく寝ているが、寝不足か?」
「よく寝てるわよ?何で?」
「家に来ては寝るを繰り返しているからな?」
体調でも悪いのか?元気が取り柄だから心配になった、と言う言葉は取り越し苦労と笑われそうだから飲み込んだ。
「あぁ、違う違う!この春の陽気でしょ?春眠赤土を耕すって奴でさ、ただ単純に眠くて」
「なら良い。が、勉強もちゃんとしろよ?いつもの事ながら慣用句間違ってるからな!正しくは“春眠暁を覚えず”だ」
「説教オヤジうるさーい!春休みは宿題無いのよ?」
「お前の将来の為に言ってやってんだろ?日本全国のファンに恥を晒す気か?」
「言ってくれるわね!それも含めて、愛野美奈子よ!心配してくれるのはありがたいけど、ならアンタが教えなさいよ!相手してくれないからつまらない!」
「言っとくが、俺は厳しいぞ?ついて来れるかな?」
「望むところよ!」
かくして売り言葉に買い言葉で高3の1年を乗り切る為、そして将来の夢の為に公斗によるスパルタ勉強会が春休み中行われる事になった。
有言実行で毎日勉強に明け暮れ、美奈子は精根尽き果てた。
おわり