セラムン二次創作小説『行き合いの空』
中国から帰国した美奈がお土産を持って私の家へとやって来た。
「お土産ありがとう」
「どういたしまして」
「お疲れ様。でも、残念だったわね」
「うん、そうなの……」
美奈はAが主役を務める映画のヒロインとしてオーディションで大抜擢され、撮影がある中国へ行っていた。
中国から時間を見つけては撮影の報告やAとの事などを報告の電話が来ていた。隣国と言う事もあり、時差もほとんどない事が幸いして美奈がいなくても電話越しで喋れている事が嬉しかった。
ただ、予定より早まっての帰国に驚いたけれど、撮影中にセットが崩壊。下敷きになったAが大怪我をし、再起不能。事実上の引退と言うニュースが飛び込んで来た。
撮影は順調で、もうすぐ終わると言う事だったから驚きと共に残念だった。
「まさかこんな事になるなんてね……」
「うん」
流石の美奈も落ち込んでいるようで、目に見えて落胆している。撮影や飛行機での慣れない移動の疲労もあるかもしれない。
電話越しで聞いていても撮影は楽しそうで、Aの話も嬉しそうに話してくれていた。
役柄的にもだけど、さながら恋人で付き合っているように聞こえていた。それだけに残な出来事で美奈にとってもショックがデカイだろう事は想像に固く無い。
「美奈、大丈夫?」
「まあ、何とか」
お喋りな美奈だけれど、口数が少ない。そこからも落ち込んでいる事が分かる。
「映画はお蔵入りみたいね」
「仕方ないよ。主役が再起不能じゃ。後もう少しだったんだけどなぁ……ほんっとぉに残念!私の華麗なる女優デビューが白紙なんて……」
「良かったわ。元気そうで」
私と話したからなのか、さっきとは違い美奈は元気を取り戻したのかいつもの美奈になっていた。
「心配してくれてありがとう。私は大丈夫よ!」
曇った顔からニッコリ笑顔で答えてくれてホッとした。
「ところでひかるちゃん」
「ん、なぁに、美奈?」
「ひかるちゃんって、セーラーVをどう思う?」
いきなり美奈からの質問にとても驚く。やセーラーVの話をしていなかった中、なんの脈絡も無くだったから。
まあ、話しが飛ぶことは珍しい事じゃ無い。私が驚いたのは、美奈が私を見る目がとっても真剣だったから。
セーラーVとは一度、いや二度程会ったことがある。募金活動のボランティアをしている時に危ない所を助けて貰った縁で募金活動を手伝ってもらった。
死にそうだったところを助けられたから恩を感じている。
近くで見て美奈と雰囲気が似ているなと思った事もあったけど、まさかもしかしてもしかするの?
「どうって?」
どう言う意図なのか分からず聞き返す。
「何か思い出したり、感じたりとか……しない?」
「そう言われても、特には……」
どう言う事かは分からない。だけど私は何も思い出すことは特に無くて。
強いて言うなら美奈と似ていて、ボランティア一緒にした思い出くらい。
でもこの真剣な顔はそういうのを聞きたい訳じゃないって言うのは伝わった。だからもしかして美奈がセーラーVなのかもしれないと思いながら、でもそれは聞いてしまったらもう後戻りが出来ない。そんな気がして誤魔化した。
「そっか。ごめんね、変な事聞いちゃって」
「本当、変な美奈」
美奈も変な事を聞いた事は自覚したみたいで謝ってこの話はそこで終話した。
ある日を境に突然塾もバレーも辞めてしまった美奈。そこから何となく忙しくしていることを感じていた。
親友だけど話せない、話したくない事もある。事情だってある。だけど、いつかきっとその時がきたら話してくれるって信じてる。それまで私、待つから。
「よーーーっし、いっぱい恋して彼氏作ってアイドルの追っかけしてオーディションも受けまくるぞー!おー!」
何か吹っ切れた様な美奈はそう高らかに宣言して未来に向かって歩き出した。
おわり
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