セラムン二次創作小説『RUINION(ジェダレイ)』
せっかく平和を取り戻したと思ったある日、私は思わぬ形で平和な日々にピリオドが訪れた。
霊感のある私は、ダークキングダム最終戦後から暫くしたある日、時々私の所に幽霊として訪問して来る人がいた。その人の名をジェダイトと言う。
別に何をされるわけでもないけれど、兎に角気づけば私の周りを浮遊している。
気にしないように目線を外して合わせないように心がけていたけれど、あまりにもしつこくストーキングするから合わせてみると、とても驚いていた。
「マーズ、俺が見えるの……?」
「ええ、ずっと気づいていましたわ」
「そっか、君は昔から霊感があったね」
「見たくなくても見えてしまう体質は厄介なだけよ」
「また君とこうして話せて嬉しいよ」
「私は嬉しくないわ」
毎日色んな霊を四六時中見ている私は、ジェダイトを見ても驚きはしなかった。
そりゃあ最初はびっくりしたけれど、いつも通りクールに無視していた。
だから目が合って私よりも彼の方が驚いていた。
「どうして?また僕を殺したから恨んでると思ってる?」
「そうじゃないけど……」
「君は正しい事をしたんだ。君の手で死ねて俺は嬉しいけどな」
それは究極の愛の告白だったかもしれない。
だけどもう住んでる世界が違う。
いつまでも過去に囚われたくもない。
それに私は成仏させることは出来ても、生き返らせる事は出来ない。
除霊は衛さんに言わず勝手にする事は出来ない。
私にストーカーしてるとは言え、主は間違いなく衛さんなのだから。
仕方ないからずっとストーカーされてるしかないわね。
生き返らせるのはうさぎの銀水晶でしか出来ないけど、きっと4人はそれを望まないだろうな。
「生き返りたい?」
「こうして君と話せるからいいよ」
ほら、ジェダイトはストレートに想いを伝えて来る。胸が苦しい。
だから話したくなったのよね。
「あの時の事、恨んでないの?」
「恨む?俺が、君を?」
「ええ、私があなたを殺めたのよ?」
「気にしてないさ。ああするしかなかった。仕方の無い事だったんだ」
「だけど……!!」
「前世も現世も、操られていた。解き放って正気にするにはあれが1番の方法だよ」
「でも……」
「俺はマーズ、君に感謝してるんだ。俺を殺してくれてありがとう、ってね♪」
「ジェダイト……」
「やっと名前、呼んでくれた」
「バカ!!!」
殺されたことへの憎しみよりも、名前を呼ばれたことが単純に嬉しかったのか、取り憑かれてから一番の笑顔を見せた。
太陽のようなキラキラした弾けるような笑顔。
「さて、今日はマーズと話せたし、そろそろ帰るよ」
「何処に?」
「マスターの所さ!」
ずっといる訳ではなかったジェダイトが、いない時は一体何処にいるのだろうと思っていたけれど、やっぱり衛さんの所に居候しているのね。
他の3人もきっとそこにいるんだわ。
だって前世の4人は王子をとても慕っていたもの。
「そう」
「寂しい?」
「清々するわ!」
「素直じゃないなぁ~」
「私には仲間がいるもの」
「強いんだね?」
「そうならざるを得なかっただけよ」
「色んな経験と環境がマーズを強くしたんだね」
「レイよ」
「え?」
「今の名前はマーズじゃなくて、レイって名前があるの。そう呼んで」
「レイか……君にピッタリの名前だ」
また来るよ、そう言い残してジェダイトは衛さん宅へと消えていった。
どうして視線を合わせて会話をしてしまったのか私自身にも分からない。
寂しかったのかもしれないし、あの時の事に罪の意識を感じて謝って楽になりたかったのかもしれないし、ただ話したかっただけかもしれない。
結局、彼の優しさに甘えただけだった。
また、ジェダイトと話してあげても良くってよ?なんて思っている自分が居る。
おわり