セラムン二次創作小説『初デートは邪魔が入りました(エリちび)』
「パパのバカぁ!!!」
パレス中にスモールレディの声が響き渡る。
何故、絶叫するに至ったかというとそれは遡ること数ヶ月前。
射手座αスターでの戦いからここに戻って来た私は、遅れていた勉強を毎日頑張ってこなしていた。
母であるネオクイーンセレニティに頑張ればエリオスと会う事を許可すると言われ、その日の為に頑張って学んでいた。
そしてとうとうママから1日許可を貰い、エリオスと会える事になった。
小さい時から私を溺愛していたパパにこの事を言うと絶対ややこしい事になるのが目に見えていたからママに、パパにはこの事を言わないよう口止めしていたんだけど、何がどうなったのかデート前日に知られてしまった。
まぁママが口を滑らせたのは性格上仕方ないと諦めることにしたけど。
最悪なのはパパの言動だった。
エリオスと会うのはまだ早いとか、会うならセーラーカルテットの誰かの護衛付きでとか色々言ってきた。これならまだ良かった。いや、百歩譲ってって話で本音を言うなら護衛も嫌なの。
だけど、最終手段としてパパが直々に着いてくると言い出した。
これには流石に呆れてしまい、了承しかねる。
私も嫌だけど、エリオスだってパパなんか来たら気を遣うと思う。
そこで色々言い争う事になって、冒頭の暴言だった。
パパの悲しそうな顔を見て私も後悔したけど、それ以上に着いてこられるのが嫌だった。
心配なのは分かるけど、どこの世界に娘のデートに父親が着いてくるのよ?心配しすぎでしょ?
今まで1人で散々過去の東京に行ってたのに今更じゃない!
過去には過去のパパやママであるまもちゃんやうさぎがいるから安心ってわけね?で、エリオスは不安と?
私だって戦士として修行して強くなったんだからちょっとは信用して欲しい。
私自身、パパをこんな風に罵倒する日が来るとも思ってなかった。
私の初恋はパパだもん。かっこよくて優しくて、頭も良くて頼りになるパパは私の理想の王子様その物だった。
過去のパパであるまもちゃんもとっても素敵な人で、私の事を全力で守ってくれた。
それは愛するうさぎとの間に出来た未来の娘だと知ったからだって分かってた。だけど、それでも好きで好きでどうしようもなかった。
だから、そんなパパにこんな言い方したくなかった。なのに……
「エンディミオン、心配なのは分かるけど着いていくのは私も賛成しかねるわ」
「セレニティまで……」
そりゃあそうでしょ?
ママは娘の気持ちがわかるから私の味方よね!
「私たちもスモールレディ達と久しぶりにデートしましょう♪」
はい?私の聞き間違えですかね、女王様?
「スモールレディ達とWデートか?楽しそうだな♪」
ちょ、ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!
私を置いて2人で盛り上がって話進めてんじゃないわよ!
「ね?これなら邪魔じゃないでしょ♪」
グッドアイデア~とか思ってんじゃないわよ!余計邪魔なんだけど……。
ってかどんだけエリオスに気を遣わすつもりなの?
「うん、それナイスアイデアだ!流石、セレニティ♪」
いや、待てい!感心する所じゃないわよ!
どこに娘のデートに両親が一緒にデートする人がいるのよ……。
どこをどうツッコミ入れればいいの。
誰か私の代わりに2人に説教してくれませんか?
マーズとクンツァイト辺りかな?
「マーズ、ママを説得して!」
盛り上がってる2人を置き去りにして私はマーズに頼みに行った。
事情をざっくり説明すると、呆れるものの2人をよく知っているからか諦める方が早いと言われてしまった。
「それよりお二人共明日はお休みなの?」
「権力振りかざして休みにしてたわ。代わりに何か仕事無いの?」
着いてきて欲しくない私は必死で仕事を2人に回すように頼んでみた。
「特に急ぎの用事は無いのよ。ごめんさいね」
申し訳なさそうに断られた。
もう為す術がなく、がっくり肩を落とす。
そして当日、特に名案も思い浮かばないまま時間が迫ってきた。
2人を巻いてエリュシオンに行こうかと朝早くに起きたけど、そこはやっぱり親子、見透かされていた。私の部屋の前にセレスとジュノーが立っていた。
聞けばパパに頼まれてずっと見張っていたのだそう。セーラーカルテットを味方につけておくべきだったと今更後悔したけど、仕方ない。
「2人は私の味方じゃないの?」
「そうなんですけど、スモールレディからは何も言われなかったので」
「キングに命令されたら聞かない訳にはいかないしな?」
「まさかとは思うけど、着いてきたりしないわよね?」
「そのまさかですわん♪」
「俺たちがしっかり護衛するぜ!」
パパとママだけじゃなくて、セレスとジュノーまで着いてくると聞いてどっと疲れる。
「さて、行こうか」
セレス達に足止め食らってると凹んでる私とは対象に楽しそうにパパとママがやってくる。
2人を見るといつものドレスとタキシードでは無く、違うドレスとタキシードに身を包んでいた。久しぶりのデートに気合いを感じる。
私はいつものピンクのドレスなのに……。
「本当に着いてくるの?」
着いてきて欲しくない私は、念押しの為に聞いてみた。
「ああ、2人の邪魔はしないから安心してくれ」
「そう……」
着いてくるの時点で邪魔だからその言葉は違う気がする。絶対この2人が空気読めるとは思えない。
「パラスとジュノーも着いてくるって言ってるんだけど?」
「昔は私たちも会う時は護衛付きだったのよ」
いや、知らないし、だからって私たちにまで護衛付きにするなんて……昔と今は違うのに。古の考え押し付けないで欲しい。
こんな大所帯で行ったらエリオスがどう思うか……。
そんなやり取りをしつつ色々考えながら待ち合わせ場所に行くとお互いを見て笑顔になった顔がそのまま固まった。
私の方も大概だけど、エリオスにも余計なイソギンチャクが着いてきていた。
メナード2人にクンツァイトとゾイサイト……ですってぇ?
こっちはこっちで酷い。
きっと断りきれなかったんだろうなぁ……とエリオスの苦労が目に浮かぶ。
「マスター、お元気そうでなによりです」
「お前たちは何でここに?」
「エリオスがプリンセスとデートって聞いたので、マスターも来るかと思い挨拶を」
「そうか」
流石はクンツァイト、パパの行動をお見通しだったみたい。だからといって着いてくるのはどうかと思うけど……。
「おちびちゃん久しぶりね!元気?……って顔じゃないわね?ふふっ」
「……そうね、不満だらけよ」
「そりゃあこんなに着いてこられちゃあね?デートどころじゃないわね」
「マーキュリーに会いたかった?」
「ご想像に任せるわ!私とクンツァイトはマスターに会いたかっただけだからもうここで帰るわ」
「帰るんだ?」
「人の恋路は邪魔しない主義なの」
一番邪魔する主義の象徴みたいなゾイサイトが言っても説得力ないけど、帰ってくれるのは有難い。
少しでも人数が減るのは嬉しいから。
「エリオス、行きましょう」
「あ、うん。そうですね」
挨拶もそこそこに私とエリオスはこの何とも言えないカオスな空間から逃げるように移動した。
「なんて言うか、大変な事になってますね?」
「……本当ね。エリオスの方も大変だったみたいね?まさかメナードにクンツァイトとゾイサイトまで着いてきてると思わなかったわ」
「クンツァイト様、ああは言ってましたけど、冷やかしたかったようですよ?」
「そうなの?ヴィーナスの悪影響受けてるみたいね」
結局はクンツァイトとヴィーナスは似たもの同士って所なんだろうな。どうせならクンツァイトの影響を受ければこんな事にはならなかったのにと思ってしまう。
「うふふっ仲良いわね、2人とも」
「くっつき過ぎだ!もっと離れて!」
クンツァイト達と話し込んでいる隙にまこうと思って歩を進めていたのに、いつの間にか追いつかれてしまって私たちの様子を静かに見ていたママとパパに邪魔された。
私たち、そんなにくっ付いて無いのにパパ本当にうるさい。
「本当に着いてくるんだ?」
「着いてきてるんじゃないぞ!これはWデートだ!」
「言い方変えても上手くないからね?ただの邪魔じゃない!」
「……スモールレディがグレた」
「まぁまぁあなた、私がいるじゃない」
「セレニティ~~~(涙)」
完全に2人の世界になってる。
呆れてものも言えないってこの事だと改めて学んだ。
心配してくれてるって分かってる。
だけど、頭ではわかってても心がついていかない。
エリオスを見ると緊張に顔が強ばってる。
ただでさえ私と初めてのデートで、しかも久しぶりに会うのに、太陽系を統べるクイーンと昔から慕っていたキングがいるんだから無理も無い。
エリオスの為にも2人を撒きたかったけど、結局無理だった。
ずっとベッタリ着いてくる。
「付き合いたての時のこと、思い出すわねぇ~」
「そうだな、あの頃から君は変わらず可愛いよ」
「イヤだ、エンディミオンったら!あなたもずっとカッコよくて素敵よ♪」
「あの頃以上に愛してるよ、セレニティ」
「私もずっと大好きよ、エンディミオン」
「これからもずっと俺の傍で笑っててくれ、セレニティ」
「勿論よ!ずっと支えててね、エンディミオン」
え?何?何が始まったの?何を聞かされてるの?愛の告白?プロポーズ?え?本当に何?
「お2人っていつもあんな感じなんですね?お若くて凄いな」
違うのよ、エリオス!普段は厳格なの。
だけど2人になると甘い雰囲気になって何故か周りが見えなくなって脳内花畑になるみたいなのよね。
こんな2人の姿、エリオスに見せたくなかったし、見て欲しくなかった。
穴があったら入りたい……。
エリオスの前で恥ずかしい。
「エリオス、行きましょう!」
2人でイチャイチャし始めた隙にエリオスと2人きりになれる所を求めて歩き始めた。
うまくまけたみたいで漸くエリオスと2人きりになれたはいいけど、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「乙女よ、会えて嬉しいです」
急に無口になった私に変わり、男らしく挨拶したかと思えば跪いて私の右手の甲に軽くキスをしてきた。
この一連の動作はとても優雅で、王子様そのもの。理想のシチュエーションにクラクラしそうだった。
と、その時だった。
「ヒューヒュー♪妬けるねぇ~お二人さん」
「本当、素敵ですわん♪」
「エリオス様、立派になられて……」
「感無量ですわ!」
護衛のセレスとジュノー、そしてメナード2人に目撃され、盛大に冷やかされてしまった。
こうして私とエリオスの初デートは邪魔が入り、出鼻をくじかれる結果になり、甘い雰囲気どころか、どっと疲れたのだった。
おわり
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