セラムン二次創作小説『至って真剣です(クン美奈)』
“話したい事がある”
筆無精な公斗から珍しくLINEが端的に入って驚く。
話しって一体なんだろうと思い、お互い空いている日に会う事になった。
用事のない日は極力うさに会いたいが、旧友の話も聞いてやらないとと思い渋々了承した形だ。
待ち合わせの喫茶店で待っていると、公斗がやってくるのが遠くから確認出来た。が、1人ではない。背の低い人も一緒だ。
誰だろうと近づいて来て顔を見ると、金髪によく映える赤いリボンの女性。ーーそう、美奈だ。
なるほど、そういう事か…と察する。
「遅くなってすまない」
律儀に謝りながら俺の前の席へと腰をかける。
公斗とは打って変わって美奈の方はかなり楽観的だった。
「やっほーまもちゃん、おっひさ~」
そう言ってナチュラルに公斗の隣に腰をかける。
「美奈を連れて来たって事は、そういう事でいいんだな?」
「ああ、察しの通りだ。美奈子と付き合う事になった。色々尽力と相談に乗ってくれて感謝する」
「いや、別に俺は何もしてねぇよ。わざわざ報告サンキューな」
「ああ、衛にはちゃんと報告しておきたかったからな」
何でもない風にあくまでクールに美奈と恋人同士になった事を報告しているけど、俺は知っている。内心、とても喜んでいて幸せをかみ締めていることをーー。
クンツァイトとして俺の直属の四天王のリーダーだった前世でヴィーナスに想いを寄せていた事に気づいていた。
「好奇心旺盛なお姫様を持つと大変だな」
いつだったかセレニティが内緒で地球へ降り立った時、迎えに来たヴィーナスに慈愛に満ちた顔と優しい声で話しかけていて気づいてしまった。ーーヴィーナスの事を愛しているのだと。
他の女性には至ってクールに事務的に接しているのを見ていたし、声のトーンもまるで違っていた。
何より俺自身がセレニティを深く愛していたからこそ似た様なクンツァイトの言動に敏感に感じ取った。
「美奈と付き合う事になってよかったな!」
前世のクンツァイトは四天王リーダーと言う事もあり、とても真面目に公務をこなしてくれていた。
歳も一番上という事もあって自分にはとても厳しい奴だった。
リーダーだから恋愛は御法度だとか我慢してたんだろう。ーー特にヴィーナスに関しては。
無意識に線引きして距離を取って必死に恋心を律していたんだろう。
俺にセレニティとの関係を咎めていた手前、ストッパーをかけざるを得なかったんだろうと思う。本当、真面目で不器用だが良い奴だよ。
そんな前世の色々な心の内を感じ取っていたからこそ心からの祝福の言葉だった。
「ああ、ありがとう」
「何なにぃ~、なぁんか通じあってる感じ?狡い!私も混ぜてよ~」
「美奈も、本命彼氏が出来て良かったな!」
「な、何よ、急に。……あ、ありが、とぉ」
美奈もまた色々あった事を知っていた。
うさを護る四守護神のリーダーで、みんなより先にセーラー戦士として目覚めて頑張っていた。
そのため、口を開けば“彼氏が欲しい”が口癖で定番化していた美奈だけど結局特定の彼氏が出来ないまま今に至っていた。
好きな奴はすぐ出来たり、素材が良いから異性から定期的に告られることもあって、付き合ってみるもののどれも違ったのか、長続きしていないとうさから聞いていた。
やはり戦士である以上、恋愛に身が入らないのかと俺もうさも美奈以外の3人に申し訳ない気持ちでいた。
俺たちばかり幸せなのはやはり気が引けたからーー。
でも、公斗となら大丈夫だろう。
前世からリーダー同士という事もあり何かと馬があっていたようだからきっといい恋心関係を作って行けると思う。ーー俺も心強い。
リーダー同士で肩肘張ってる2人だけど、上手く分け合って支えていけるだろう。
「うさには?」
「うん、この間報告したわよ」
「……俺、聞いてないぞ?」
「そりゃあそーよ!私が黙っててって言ったんだもん」
「何でだよ?」
「それは俺が衛に直接報告したかったから口止めしといたんだ。2人とも口軽いからな」
「ひっど!それでも私の彼氏なの?」
「ああ、そうだ。お前の事、愛しているが、何か?」
「なっ///まもちゃんの前で……は、恥ずかしい、じゃない!」
ストレートな公斗からの愛情表現恥ずかしくなり顔を真っ赤にして照れる美奈を見て、こっちまで小っ恥ずかしくなる。
……コイツ、こんな奴だったっけ?
まぁ前世と現世では性格が多少違うのは当たり前だけど、こんな簡単に愛の言葉を口に出来る奴だったとは普段のクールで堅物な公斗からは想像出来ない。……前世での反動か?
美奈の慣れてない照れた感じも新鮮だ。
本当に真剣な恋をするとこんな感じなのか?
“愛の女神”も恋をすると普通の女性だな。
少しは俺たちへの(と言うか俺だけか?)干渉が減るなら有難いと思う。
うさとの時間も増えるとありがたい。
いや、それにしても自分の時は気づいてなかったけど、うさといてる時傍から見たらこんな感じなのだろうか?
見てるこっちが恥ずかしい。
人の振り見て何とやらって奴か?
……程々に反省します。
「ゴホッゴホッイチャイチャするのはいいが、俺がいるのを忘れてないか?」
「だ、誰が!い、イチャイチャだなんてしてないわよ!ってかアンタにだけは言われたくないわよ!」
「まぁ落ち着け、美奈子。うさぎさんと会えなくて嫉妬してるだけだ」
「誰が嫉妬だ!……まぁうさ不足ではあるけど」
「じゃ~うさチャージしないとね!」
「お前ら……」
……コイツら、やっぱり似たもの同士だな。
とは言え2人の貴重な一面を見られた有意義な時間だった。
おわり