セラムン二次創作小説『キンセイランと記憶(A美奈)』




悪の組織で働いていた俺は、可愛い見た目を生かしてアイドルをする事になった。

それは自分の意思ではなく、上からの命令だ。ファンを得て、そこから大量にエナジーを奪うと言う作戦。ベタだが、これが結構当たる。いい作戦だった。


最初は上からの命令で仕方なくだったが、俺には合ってるみたいで結構楽しい。

注目を浴びる事は気持ちがいい。


ーーあのお方にもきっと今度こそ、見つけてもらえる。


あのお方?それは、誰のこと?


自信が持てた。


ーーもう、前みたいな自信のない自分じゃない。


前の自分?


記憶が混乱していた。


そんな中、ファンの子から花束を貰った。


「ファンです!応援しています!」

「ありがとう。大切にするよ」


花束を受けとり、お礼を言いながら握手を交わす。

するとその子は、涙を流して喜んでくれた。

当たり前の事をしただけで、こんなにも喜んでくれるなんて驚くと共に励みにもなった。

騙しているのは心苦しいけれど、いつか本当にアイドルが本業として出来ればと願っている。


そんな日が、来るのだろうか?


「綺麗な花。この黄色の花は何だろう?」


終わりの見えないエナジー集め。そんな中でもどこかで希望を見出していた。

そんな中貰った花束の中にある黄色く大きな実を咲かせる花に心を奪われる。強く惹かれる。何故だか分からないが、心がざわめく。


「この花の名は?」


気になって調べてみる。パラパラと図鑑のページを捲る。

そして同じ写真を見つける。これか!


「キンセイランって言うのか……」


キンセイランーーー空に浮かぶ星、金星と同じ輝きを持つことから付けられたもの。

あの一番星と同じ名前を持つ花か。


「うっ」


次の瞬間、激しい頭痛に見舞われる。

目を開けていられず、その場で瞼を閉じると、何か映像が光の速度で駆け巡る。


記憶のフラッシュバック。オーバーヒート。


「俺は……」


前世の記憶が蘇る。


ダンブライトだと思っていた。ずっと。

だけど、違っていた。俺は、生まれ変わりだったんだ。


「俺は、アドニスだ」


そう、俺の名はアドニス。

金星産まれで、金星育ち。金星出身。

その星のプリンセスであるヴィーナスに恋心を抱き、いつか恋人になると信じて疑わなかった。


しかし、末端騎士だった俺は、地球へと派遣される。

ヴィーナスはそう、月の王国のプリンセス付きの戦士となり、会うことなく別々の星へ。


それでもいつか会えると信じて止まなかった。

そしてその瞬間は、突然訪れる。

月の王国のプリンセスの護衛に地球に降りたった彼女を、俺は遠くでお見かけした。

遠くだったけれど、美しく輝く姿は紛れもなくヴィーナスだった。彼女は気高く、誇りを持ってプリンセスの護衛をしていた。


「どうして忘れていたんだろう……?」


と言うか、どうして生まれ変わってきたのだろう?

今度こそヴィーナスと恋人になるためだろうか?

いや、でも彼女が生まれ変わって来ているかどうかが分からない。

大丈夫。きっと生まれ変わって来ている。そんな予感がする。

だって、俺が生まれ変わっているのだから。

そして、クンツァイト様もーー


「そうか!だからあの時……」


あのお方に見つけてもらえる。何故、あの時そんな気持ちになったのか、やっと合点がいった。

あのお方とは、ずっと恋焦がれていた我が母星、金星のプリンセスであるヴィーナスだ。

彼女は愛の女神に相応しく、恋多き人だった。色んな男性を好きになる惚れっぽい人だった。

だけど俺は彼女の前にさえ行けなくてーー


「でも、今度こそこれで」


幸い、今はアイドルーー最上エースとして活動している。

流行を追っている学生や、テレビが好きなら目にして知っているはずだ。


「ヴィーナス、貴女を探すために全力を尽くす!」


舞台と役者は揃った!

ヴィーナス、今貴女を探すため、僕は動きます。

待っていて下さい、ヴィーナス。





おわり




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