セラムン二次創作小説『あなたに首ったけ(クン美奈)』





あたしには彼に言えない秘密がある。

秘密って言う程大層な事では無いのだけれど、言うと色々面倒な事になりそう。懸念していることになりそうで言えない。

それだけは避けたい。けど、もうそろそろ限界が近い。でも、ラブラブ出来ないのはあたし的にも痛いし。

でも、それよりも本当の意味でも痛いし、どうすれば。ってオトメゴコロが喧嘩する複雑な気持ち。


「いてててて……」


あたしが彼に隠している秘密。それは、首が痛いことだ。

産まれてこの方、首が痛くなった経験はない。彼と付き合い初めてから徐々に痛くなり、今では見上げるだけで激痛が襲うレベルで痛い。

戦士をしていた時は身体のあちこちが痛むなんて日常茶飯事で当たり前のことだった。けど、首が痛くなるなんて経験は戦っていてもしなかった。

別にあたしはいつも俯いていてネガティブで暗い子ってわけじゃない。寧ろ逆で、いつだって前向きで明るく顔を上げて生きて来た。

それなのに、まさか顔を上げるだけで首が痛くなるなんて予想だにしてなかった。

その原因は、長身彼氏との身長差から起こるものだと気付いた自分を褒めてあげたい。

あたしの身長だって女子の平均はあるから普通なのよ。決して低いわけじゃない!

でも、彼氏が高いのよ!高過ぎるの!190cm近くあるらしい。約30cmも身長差があるとか信じられる?

そりゃあ顔を見ようとして見上げたら首も痛くもなるって話しよ!

ううん、見上げるだけならそこまで痛くはならなかったと思う。前世だって普通に彼を見上げてたんだから。

でもね、前世とは明らかに違う事がある。それは付き合っているということ。

つまりね?所謂、恋人でないと出来ないことがあるじゃない?


ーーーそれは、キスだ。


一応ね、立っている時は背伸びしたり、高いヒールの靴を履いて身長差を少しでも無くしたいと思ってるんだけど。それでも結局、無理なものは無理で。無駄な悪あがきに終わってしまう。

別に身長差があるのが嫌なんじゃないの。寧ろある事が嬉しい。高身長な彼氏って嬉しいでしょ?キスする時につま先上げるって奴、憧れてたから出来て嬉しかったんだ。

だけどまさかキスをする事で首が痛くなるなんて考えもしなかったわよ。

ううん、薄々そうじゃないかって気付いてた。何故かって?それは、うさぎの存在かな。

うさぎも高身長の彼氏がいるじゃない?

付き合って暫くしてから首を痛めていて、その原因が皆目見当もつかないって感じだったんだけど、私だけは何となく想像がついていた。


「身長差の彼氏を見上げてるから痛いんだな……」


彼氏のいないあたし達への当て付けかと思っていたし、嫉妬して惚気を殆ど右から左へ受け流していたけれど。どうやらそのバチが当たったらしい。

同じく背の高い恋人が出来たあたしも、うさぎと同じ状態になったみたいだ。


「う゛う゛〜〜〜」


本当ならあたしだって高身長になっている予定だったんだけどなぁ。

あのままバレー続けていればきっと……。

タラレバだけど、辞めた事がここに来て響くとは。中学時代の成長期に戦士になったあたしは、両立が難しいと感じて辞めてしまった。

続けていれば、まこちゃんくらいの身長はあったと思う。そー言えばまこちゃん、中二で知り合った時には既に高かったな。胸も誰よりも大きかったし。まぁ、前世でもそうだったしな。

ああ、そっか。前世もみんな今と同じ体つきだったな。って事は、バレー続けていても成長は見込めなかったのかも。

地球側の男どももみんな見た目は前世と今と変わらないもんなぁ。みんなこの高さが丁度いいのかも。


「首、痛い……」


キスする時に特に痛い。

でも、キスしたい。

だから彼には言えない。

どうしたらいいの?

どうすればいいの?

うさぎはどうだったんだろう。

いつしか言わなくなったな。

自然と治るのか?

はたまた首の痛みと共存して上手く付き合っているのか?


「愛と痛みって紙一重なのかなぁ……」


深いな、なんて思いながらあたしは痛みを我慢して高身長彼氏とこれからもキスをする。





おわり




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