セラムン二次創作小説『遠月花火(遠うさ)』
うさぎは迷いの中にいた。衛の安否も分からないままなのに、姿形、オマケに声までそっくりな遠藤にこんな風に会い続けてしまっていていいのだろうかと。
似ているだけなのか? それとも彼なのか?
セーラームーンや司令室を知りたがっている。
そして勿論、うさぎ自身の事も……
「やあ、うさぎちゃん。待たせたね」
「あ、いえ」
今日は季節はずれに秋祭りで花火が上がる。うさぎはそのポスターを十日前にクラウンの入口で見つけ、衛と行きたかったと思いながら釘付けになって見ていると、後ろから呼ばれ振り返ると遠藤が笑顔で立っていた。
一緒に行こうかと誘われ、一瞬断ろうとしたが花火を見たい気持ちと衛に似た彼と見られると言う誘惑に負けてしまい、気づけばいつの間にかウンと返答していた。
ダメだと分かっていながらも秘密の匂いのする遠藤にドキドキしているのは事実で……
「興味本位で近付いたりしては、危険です!」
前世のヴィーナスに言われたことが心に引っかかる。
あの時と少し違うが、後ろめたいことをしていることは確かで。
今のヴィーナスだって心配してそう言うだろう。
けれど、どうしても会いたいのだ。理屈ではない。
「さあ、行こうか」
「はい」
目的地へと向かうが、やはりかなりの人混み。大分手前から人集りで身動きが中々取れない。
ただでさえ東京は人が多い。何処から聞きつけたのか。いつも以上の人にうさぎも遠藤も圧倒される。
「うさぎちゃん、大丈夫?」
「え? あ、はい」
うさぎを気遣う優しさを見せる遠藤に、動揺する。
ーーーヒュー……ドンッ!
中々進めないなか、花火が始まってしまう。そのまま人々は上を見上げて花火に魅入られ、止まってしまい身動きが取れなくなってしまった。
仕方なく遠藤もうさぎもここで花火を見ることにした。
見上げて静かに花火を見る二人。
「キレイ……」
うさぎは思わず感嘆のため息を漏らす。嘘偽りない純粋な感想だ。
だが、やはりこれが衛と一緒だとより綺麗で素敵なのにと思ってしまう。誘ってくれた遠藤に失礼だと思いながらも、何故衛ではないのかと残念でならない。
「まもちゃん……」
花火の音で聞こえないように小さな声でうさぎは想い人の名を呼ぶ。
もうどれくらい会っていないんだろう。クンツァイトにヤられて拐われてからもう二ヶ月近く経つ。無事でいるのだろうか?
ーーードンッドンッ
ーーーパンッ
うさぎの心はそろそろ限界だった。
花火が弾ける音を聞く度に、うさぎ自身の心も衛への想いが膨らみ開花する。そして、弾け散る。
遠くで鳴り響く花火は満月の月と重なり、夜空を幻想的に飾っていた。その様子もうさぎは見ていてより一層切ない気分になっていった。
夜空を見上げ、うさぎは衛の無事を祈り続ける。
ーーどうか、無事でいて!
必ず、あたしが助けるからーー
おわり
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