セラムン二次創作小説『雑誌撮影の裏側(まもうさ)』
衛はタキシード仮面の格好をしてカメラの前でポーズをとっていた。
1人でレンズの前でポーズをしたりする事が中々なく、ましてや知らない人の前で一対一でなんて学校の卒業アルバムを省くとほぼ初めての経験だった為、とても気恥しい。
カメラに写る時はいつもうさぎと一緒で、隣にいてくれる事で安心していい顔ができるが、今回そのうさぎはおらず、衛1人での写真撮影。
遠くでうさぎも見守ってくれているとはいえ、そのうさぎは不貞腐れてぶーたれているし、やはり自分1人でのインタビューは荷が重く、とてもプレッシャーだと考え始めた。
そもそもの事の発端は半月ほど前、出版社から衛の家に電話がかかってきてタキシード仮面の特集をan・anでしたいからインタビューと写真を撮らせて欲しいとのお願いをされた。
恋人が嫌がるからと一旦は断るも、恋人同伴でも構わないから来て欲しいと押し切られてしまい、うさぎに事情を話し、説得する時間が欲しいと2、3日貰いやっとの思いで説得するに至った。
嫉妬深いうさぎを説得するのは容易ではなかったが、出版社の撮影現場に着いていけると聞き、とてもミーハーな彼女は出版社の中や撮影現場がどんな風になっているのかと興味津々になり着いて行けるならと渋々快諾してくれた。
出版社の担当者に二人で行く事を伝えると喜んでくれた。
しかしこの後、うさぎとは一悶着あった。
美奈子にan・anのインタビューを受ける衛について行くと話してしまったうさぎは、「an・anと言えばS○X特集よね?エッロい特集とかあるんじゃない?」と教えられたらしく、やっぱり断れと言ってきた。
もうOKした手前断る訳にもいかず、担当者にそういう絡みみたいなのはあるのかと事細かにインタビュー内容を聞き出した。
コンセプトは“初恋、ふたたび”と“ときめきのすべて”だそうで、タキシード仮面に初恋を持っていかれたかつての小さい乙女が素敵な大人のレディになった女性にもう一度大人になって初恋気分を味わって貰えるようなトキメキをして貰えるような内容との事だったが、コンセプトに合うから、やりたいならそっちも是非お願いしたいと言われてしまい、それは恋人NGが出ているからと断った。しかし担当者が乗り気の為一抹の不安を募らせる。
その為うさぎは当日までそれがあるのでは無いかと不満を持っていた。
当日、出版社にタキシード仮面とセーラームーンとして担当者と顔を合わせた後、カメラの前に来た。
そして話は元に戻るというわけだ。
マスクを付けていたが、外して欲しいと言われてしまい流石に素顔で照れくさく、余計に上手く顔を作れない。
「もっとリラックスして」だの
「笑顔で」だの
「かっこいいポーズとって」だの色々カメラマンから注文が来るが、素人であり、ましてや感情を表に出す事がとても苦手な衛にとってはとても苦で、苦笑いやガチガチのポーズになってしまう。
どうしたものかと考えれば考えるほど暗い表情になって言ってしまい、自分で自分を呪い自己嫌悪に陥ってしまう。
そんな時、担当者の一言で救われることになるとは衛も思いもしなかった。
「恋人が見守ってくれているんだから、恋人に微笑む感じにしてみては?カメラが恋人だと思って顔を作ってみて」
なるほど、それなら出来そうだと思ったしせっかく同伴して見守ってくれているからうさぎに微笑む感じでいいのかと吹っ切れた衛。
そして、カッコイイポーズとのオーダーもうさぎの事を考えると自然と決まり、左足を立て、そこに手を置き恋人の事を考え、カメラに向かって顔を作る。
すると思った以上の色気とカッコ良さに見守っていたうさぎは愚か、担当者とカメラマンも見惚れてしまう。
「あたし以外にそんな顔しちゃダメー!私だけのタキシード仮面様なのに!」
直後にジェラシー剥き出しでタキシード仮面に怒るセーラームーン。
「ごめん。でもうさの事を想いながら、うさに向けた顔だったんだけど」
「タダでさえかっこよくてモテるんだから、そーゆーのは私と2人っきりの時に見せてくれればいいの!」
「心配しなくても俺はうさ以外は眼中に無いから」
「もう、まもちゃんったら!私もまもちゃん以外は考えられないよ?」
甘い言葉に言いくるめられるうさぎ。
そして後日、出版社から出来上がった雑誌が2冊、担当編集者からお礼の手紙を添えて送られて来る。
“先日はインタビューに答えて頂きありがとうございました。とても良い出来でスタッフ全員とても感謝し、満足しています。雑誌2冊同封致しますので、1冊はご協力と快諾頂き見守ってくれていた恋人に差し上げて宜しくお伝えください。あの最初のポーズとお顔がとてもいい出来だった為、裏表紙にさせて頂きました。an・anスタッフ一同より”
手紙を読んだ衛とうさぎは裏表紙になった事に驚き、慌てて雑誌の裏表紙を確認して愕然として「聞いてないよぉ~」とマンション中響き渡るほど絶叫した。
おわり
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