セラムン二次創作小説『秘密の心(クンヴィ)』
しまった、またやられた。
気が付くといつの間にかプリンセスの姿が消えていた。
注意深く監視していたつもりだったけど、また私達の目を盗んで消えてしまった。
ここの所、もう何度も繰り返されている行動だから予想出来たはずなのにまた先を越されてしまった。
行先は勿論分かってる。地球だ。
王子エンディミオンに会いに行ったのだ。
今回ももう一人で行ってしまったのだと諦めていたけど、根気強く宮殿の中を探し回るとそーっと気配を消して行こうとしている所に出くわし声をかける。
「見つけた!プリンセス!」
怒鳴りつけながら声をかけると驚きながら申し訳なさそうにするプリンセス。
「また王子に会いに行くの?興味本位で近づいたりしては……キケンです!」
まくし立てるように説教する。
少しは堪えてくれるとと言う思いを込めて…。
「興味本位なんかじゃないわ」
呆れた…反省するどころか否定で返ってきた。
「…ヴィーナスなんか、本気でヒトを好きになったコトないくせにっ分かんないよ、あたしの気持ちなんてっ」
と言いながら「びーっだ」と憎たらしく舌を出して生意気に反抗してくる。
色々言われた挙句プリンセスらしからぬ顔をされ、がーんとなりショックのあまり顔面蒼白になる。
そしてそんな私を置き去りにして駆け出して行ってしまった。
本当におてんばプリンセスなんだから!
怒りながらもプリンセスの言葉にハッとなり、グサッと心に突き刺さった。
「んもーっあたしだって……」
そう呟きながらある日の事をとある人と共に思い浮かべていた。
誰にも打ち明けていない本当の恋心を抱いているその人のことを。
その日も私達に黙って王子に会いに行ったプリンセスを追いかけて、プリンセスを見つけた私は人目もはばからず連れて帰ろうと怒り狂った。
「プリンセス!またココにいらしたの!?さっ帰るのよ」
すると「くすっ」と笑い声が聞こえハッと我に返ると王子の護衛に来ていたクンツァイトが笑っている。
「好奇心旺盛なお姫さまをもつとたいへんだな」
と話しかけられドキッと胸が高鳴り顔が真っ赤になってしまった。
プリンセスの悪口を言われているのに気にならないくらいに胸が高鳴りときめいてしまっていた。
王子が咎めるようクンツァイトを怒鳴ったり、後から追いかけてきたマーキュリーに話しかけられたり、本来の目的であるプリンセスを連れて帰らなければならなかったからこの日は何も話す事なく終わったけど、クンツァイトへの自分の思いを自覚し、意識して会った初めての日だった。
不意打ちで驚いたけど王子やマーキュリーに助けられた。
突然の事で整理がついてない状態でどんな顔をして話せばいいのか分からなかった。
真っ赤な顔、慌てて誤魔化したけどマーキュリーやプリンセスに気づかれてないといいけど。
それまでも何度も護衛で会っていて特別意識はしていなかった。
お互い主君を守る側近のリーダーと言う立場が同じで相談に乗ってもらったり愚痴を言い合ったり、時には主君を巡って口喧嘩したり何でも話せる間柄で、頼れる兄の様な存在で居心地が良かった。
ー地球と月の住人は通じあってはならない。…それは神の掟。…好きになってはダメ。ー
散々プリンセスに口酸っぱく言ってきた私が破るわけにはいかない。
マーズやアルテミスには惚れっぽい性格でかっこいい異性を見るとときめいて騒ぐから注意しろと言われていたから心に刻んで律していたけど、いつの間にか同士を超えて特別な想いを抱いてしまっていた。
立場上、プリンセスに口うるさく言ってる手前この恋心をどうこうしたいとは思わない。
プリンセスも気づいていなかったあの日の出来事を思い巡らせ、私だって本気で好きな人くらいいるし、気持ちは痛いほど分かるわ!と心の中で叫んだ。
おわり
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