セラムン二次創作小説『初恋は実らない(A美奈)』
“初恋は実らない”
誰が言い出したのか知らないけれど、この地球にはそんな言葉が存在する。
こんなの迷信だ。あってたまるか!
これはあくまでも迷信であって、確証の無いものだ。
現にこの言葉の意味は初めて恋をしたから、相手に自分の気持ちを伝えることが恥ずかしい。伝えられない。どうすれば分からない。行動に移せない。
そう言ったところだろうと思う。
そう考えれば分からなくは無いし、同情もできる。共感もする。
前世の俺ーーアドニスは、セーラーヴィーナスが初恋だった。
いつか彼女に想いを伝え、共に歩んで行くものと信じていた。信じて疑わなかった。
けれど、俺も彼女も同じ金星(ほし)に生まれながら、別々の星に派遣され、お互い違う使命を全うする事になってしまった。
運命の歯車が食い違い、それはいつしか大きなズレとなり、交わることも無いどころか慕っていた上司と恋仲になってしまっていた。
俺の恋は呆気なく終了。
頑張っていたらいつしか彼女と出会い、恋人になり幸せが手に入るんだと思い自分の使命に誇りを持ち頑張っていたのに。
頑張っても届かない事もあると知った。
どれだけ想っていても近くにいなくては、認識すらして貰えない。近くにいる人が有利。
だけど立場上、どうする事も出来なかったのだから呪っても呪いきれないし、悔やんでも悔やみきれない。
そんな前世の記憶を持つ俺は、“初恋は実らない”なんて迷信で諦める人々が嫌いだ。
行動すれば何かが変わるかもしれない。
言葉を信じて何もせず初恋を綺麗な思い出にして浸る人達を許せない。
頑張れば実るかもしれない。実ったかもしれないのだ。
だから前世の恋は、初恋だったから実らなかったなんて言い訳にしたくなかった。
そんな悲惨な前世の記憶を持っているから、今度こそ失敗したくない。失敗しないようにと俺だけに前世の記憶が与えられたのではないだろうか。
寧ろ、考えようによって今回は初恋じゃないから頑張れば実るかも知れない。
ダンブライトとして使命を全うする中で出会った少女ーーセーラーV。彼女は間違いなくセーラーヴィーナスの生まれ変わり。
今度こそ間違いなく彼女に近づき、俺の存在を認識して貰う。
そして彼女にアピールする。
彼女の目には俺しか映らず、他の男に目移りしないように俺だけを見つめるさせたい。
今度こそこの恋を成就させる。
そして“初恋は実らない”と言うのは迷信で、成就すると証明してみせる。
この言葉は大嫌いだから、自分で行動して運命に抗うんだ!
おわり