セラムン二次創作小説『悲しみの先に』




人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った。

言葉すら出て来なかった。

その衝撃は深く、悲しいものだった。

それなのに一滴も涙が出てこない。

私の感情はどうしてしまったの?

涙はどこに行ってしまったの?

プリンセスの死と共に涙も無くなってしまったのかしら?


それ程に頭の整理がついていない状態なのかもしれない。

目の前でプリンセスが自害してしまうシーンを見てしまったから。

食い止めることが出来なかった。


私たちの愛するプリンセス……

私たちの全てで貴女を護る為の四守護神なのに……

いざと言う時に何の役にもたたず、目の前で先立たれてしまった。

止められなかった……。

悔やんでも悔やみきれない!


何故?どうして?

最悪の事態に思考回路が考える事を放棄してしまった。


時を戻せないことは分かっているけれど、出来ることなら時を戻して貴女を助けたい!

“どこ”から?

地球国の王子と逢瀬を繰り返すようになったあたりから?

地球人が月に攻めてきたあたり?

それとも自害の少し前から?


何も出来ず立ち尽くす。

少し冷静さを取り戻してきたから周りを見渡すとヴィーナス達も茫然自失としていて、何も出来ずにいた。


どれくらいの時間が経ったんだろう?

プリンセスが自害してから全てが静止してしまったかのようで何も感じられずにいたけれど、殺戮で殺伐とした周りとは打って変わってとても優しく、暖かい光が周りを取り囲むのに気づいた。


“幻の銀水晶”の光だ。

クイーンセレニティが銀水晶の力を解放したのだと感じた。

あの時と同じ、でもあの時よりも強い光と力で解放された“幻の銀水晶”は瞬く間に月全体を、そして太陽系全てを包んで行った。


クイーンはとても厳格なお方だったけれど、慈悲深く優しいお心も同時に持ち合わせている抱擁力のある偉大なお方だった。

もうこうなってしまっては月の王国の存続は不可能、そう感じたのだろう。

今度は全てを終わらせる為に“幻の銀水晶”を解放したのだと感じ取った。

私たちもまた、これまでの命なのだと悟った。元より覚悟は出来ていた。

プリンセスが死んだ以上、私たちの存在意義も何も無い。

主亡き今、生き長らえる意味もなければ生きたくも無いし、生きて行く気力も無い。


終わっていく最中、不思議と安心感に包まれた。

死に行く瞬間、私の中の霊感が教えてくれた。

大丈夫、私たちはいつも一緒。そういう運命。

また必ず会えると知っているからーー。





おわり



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?