セラムン二次創作小説『もみの木に想いを込めて(ネフまこ)』
「来年のクリスマスは自分で育てたもみの木で飾り付けしたいな……なんてな?」
去年のクリスマスシーズン、ツリーに飾り付けをしながら、どことなく寂しそうにまことがそう呟いた。
ガーデニングが好きな彼女らしいな。単純にそう思い、笑顔になる。
「やっぱ簡易的な模造の木に飾るのは味気ないか?」
造花に飾るのは植物を愛でるのが好きな彼女にとって苦痛が伴う。そう思った。
「それもある。けど……」
「けど……何だ?」
他にも理由がある様だ。
言い淀んでいる事から、言い出しにくい理由があるのだろう事が伺える。
「両親との思い出……なんだ」
意外な答えに、今度は俺が返答に困った。
かける言葉が見つからない。
「あ、いや、ごめん!びっくりさせちまったな」
俺の顔を見て、慌てて取り繕うまこと。
そんな驚いた顔してるのか、オレ?
「単純にさ、もみの木を三人で育てて、枯らした。ってだけの楽しくも無い残念な話しさ」
そう付け加えて、作り笑顔であははと笑った。
慌てて取り繕った笑顔を見て、胸が締め付けられる思いになる。
それであの時、少し寂しそうな顔をしたのか……。
「だからさ、また失敗したらって思うと自信なくて。でも、今は勇人もいるし、大丈夫かなって、思ってさ」
「俺の事を信用して、一緒に育てたい。そう言うことでいいか?」
「ああ」
「よし!そうしたら早速買いに行くぜ!」
まさかまことの過去にそんな事があったなんて知らず、驚いた。
そしてその枯れてしまったもみの木の思い出は、まことにとってトラウマになったんだろう。
両親と大切に育てた木の死。そして、両親までも……。
関係なくとも、そう結びつけてしまって。一人で育てるのが怖くなっていたのだろう。
そのちょっとしたジンクスは、俺が、俺自身が身をもって証明してやる。
まことを置いて死なない。
そう、心の中で強い決意をして、俺はまことと共にもみの木を買いに出かけた。
そして一年の月日が経ち、2度目のクリスマスシーズンを迎えた。
「立派に育った~♪」
昨年買って二人で育てたもみの木は、枯れることなく成長した。
まことのその言葉通り、身の丈170センチ。まことと同じ位の高さになっていた。
「俺たちの、愛の力だな」
嬉しそうに珍しく大はしゃぎしているまことにそう声をかける。
「ありがとうな、勇人」
「別に、俺は何も?」
「そんな事ない!アドバイスくれたり、親身になってくれたじゃん」
謙遜する俺にまことは感謝してくれた。
本当に俺はほとんど何もしていない。
彼女の今までの経験と知識がなせる技だと俺はそう確信していた。
「これで、楽しいクリスマスが迎えられるな」
「ああ」
笑顔で答えながら、昨年造花のもみの木に飾っていたオーナメントを嬉しそうに飾り付け始めた。
「やっぱりまことには緑が似合うな」
「ん?なんか言った?」
「べぇーつに」
「そっか」
心の声が息と混じって小さく零れる。
本当に小さい声だったから、クリスマスソングをハミングし始めたまことには聞き取れなかったようだ。別に構わないが。
もみの木は立派に育った。
まことの両親の様に、俺はならない。
いつまでも、まことのそばにいる。
まことの両親以上に年月を過ごす。
そう改めて決意した。
今年もまことと過ごすクリスマスが、待ち遠しくて仕方ない。
おわり