セラムン二次創作小説『DAITOも台所(ジェダレイ)』
最近、彼がよそよそしい。どこか上の空というか、心ここに在らず。そんな感じがする。
変わらず私だけだって言ってくれていた言葉は嘘だったのかしら?
それとも、その言葉に安心し過ぎて甘えてずっと変わらないスタンスを貫き通してきたから?飽きられてしまったのかしら?
確かにつまらない女だと思う。私だったら、私のような女なんて願い下げだし、付き合わないわ。束縛もキツいし。
「じゃ、今日はこれで」
最近の彼の口癖はいつもこれ。
神社のバイトも。たまのデートも。
「もっと一緒にいたいわ……」
勇気と声を振り絞ってやっとの思いで言葉を紡ぐ。怖い。
「ごめん、今日はちょっとケイコが……」
「え、ケイコ?」
「あ、いや、なんでもないんだ。ごめん、レイ」
知らない女の人の名前が彼の口から漏れてきて、とても動揺する。
やはり彼もそこら辺の男と同じ。色んな女と浮気する。そう言う生き物。どうしようもない汚い生き物なのよ。
こういう事や醜い心になる事が嫌で恋愛に対して積極的になれない。恋人なんていらないし、男なんて信用出来ないのよ。
「所詮、男なんてみんな同じよ」
期待するだけ無駄。信じるなんて愚かだったわ。
ケイコって誰なのよ!
妹や姉、女兄妹はいなかったはず。
やっぱり別に女が出来たのかしら?
その人とよろしくやっていればいいわ。
私だって暇じゃありませんもの。
いつもの生活に戻るだけですわ。
***
そんな事を続けて一ヶ月ほど経ったある日の事だった。
学校から家に帰って来ると、神社では無く家の中のキッチンで夕飯の用意をしている彼の姿が目に映った。
「あ、おかえりレイ!」
驚きのあまり呆然とその場で立ち尽くして微動だにしない私の気配に気づいた彼は、笑顔をこちらに向けて爽やかに私を呼んだ。
「なに、しているの?」
予想外の展開に、思考がついていかない。
彼は料理なんて作れないはず。
私だって決して上手いとは言えないけれど、彼だってそんなキャラでもない。
「見て分からない?料理してるんだ」
うん、それは見て分かっている。
キャラでもなければ、料理出来る人でもない。
そこには私の知らない彼が手際良く料理を作り、次から次へと盛り付けている姿があった。
「どう、して?」
「ああ、料理の稽古に行ってたんだ。ここの所あまり会えなくてごめん」
ケイコって、そっちの稽古!?
紛らわしい言い方してんじゃないわよ!
浮気しているのかって思ったじゃない!
「レイと爺ちゃんに食べてもらいたくて、頑張った!」
「……バカッ!」
ホッとした私は、思わず彼の胸に飛び込んでいた。
「バカ!バカバカバカ、馬鹿!」
胸をポカポカと叩き、彼を責めていた。
そして私は見てしまった。
「本当に馬鹿!指までこんなに怪我をして」
「確かに。めっちゃ包丁で切った。痛かった」
「……バカ」
「うん、馬鹿だよなぁ、俺」
でも、レイのためなら頑張れる。そう耳元で囁かれ、彼の胸の中で涙が流れたのは、彼には内緒。
その後、彼の手料理を食べたけれど、見た目は良かったのに味は今一つで、料理まで彼と似ていたのは少しホッとした。
おわり