セラムン二次創作小説『こんな未来が来るなんて(まもうさ)』





まもちゃんと付き合い始めた時は、まさかこんな事になるなんて予想出来ていなかった。

その予想とは、今目の前に繰り広げられている事だ。


「兄さん、元気だった?」

「ああ」

「俺がいなくて寂しくなかった?」

「うさがいつも傍にいてくれるから、平気さ」

「ふぅーん」


まもちゃんが休みの日になると、決まって我が家に遊びに来るのは弟の進悟だ。

襲来してきたかと思えば、まもちゃんにくっ付いて“兄さん、兄さん”って……

全く、呆れてものも言えない!

アンタはまもちゃん専用の磁石か、それともくっつき虫か?そう問い質したくなるほどのベッタリ具合。


「進悟!何しに来たのよ?」

「愛しの兄さんに会いにに決まってるだろ!」


実の姉弟は私なのに、私に会いに来たわけじゃないらしい。私よりもまもちゃんの方がいいみたい。何か全然可愛くない。

まもちゃんと付き合い始めた時は、姉を誑かす悪いヤツだって疑ってたのに……


「だからってまもちゃんの休みの日ばかりめがけて来て、まもちゃんも迷惑でしょ!」

「いや、俺は平気だよ」

「ほら、兄さんもそう言ってるだろ!」


大体、何でまもちゃんの休みを知ってるんだろう。医者として働くまもちゃんは、土日祝の休みなんて関係ない。

だからいつも決まってまもちゃんが休みの日に来る事が不思議で仕方なくて、一度聞いてみた事がある。

そしたら悪びれることなく、“連絡先交換してるから、毎日連絡取ってる”と返答が帰って来て驚いた。いつの間にそんな事してたんだろう。

結婚してからもする前も私は進悟と連絡取ったりって余りしてなかったのにこの違いは何?


「兄さん、ちゃんと飯食ってる?」

「ああ、うさが頑張って作ってくれてるよ」

「うさぎの料理で腹壊したりしてない?」

「ハハハ、大丈夫。平気さ」

「胃薬買って持ってきたから、辛かったら飲んでね?」

「ちょっと、進悟!黙って聞いてたらさっきから、失礼ね?」

「本当の事だろ?うさぎが作る飯が大丈夫なわけねぇじゃん」


弟の癖に、本当に嫌な奴。姉の心配じゃなくて、まもちゃんの心配をするなんて……


「アンタって子は、弟の癖にぃ~」


セーラームーンキックをお見舞いしてやりたいのをグッと抑える。

あの時のは違って、私は今や宇宙最強の戦士になっている。幾ら数年のブランクがあるとは言え、普通の人である進悟に蹴りを入れると殺す恐れがある。

まもちゃんの前という事もあるから、可憐な女の子でもありたいと私の中の乙女の部分がストッパーをかけていた。


「そうだ!おすすめの本も持ってきたんだ」

「いつも悪いな。進悟くんのお陰で普段読まないジャンルも開拓出来て、世界が広がるよ」

「バカうさぎとしゃ世界も広がらないもんな」

「いや、うさも俺の知らない世界を教えてくれて楽しいよ」

「そうなのか……」


“本好き”という共通点を活かして進悟はまもちゃんと楽しそうに話している。

本に興味が無い私は蚊帳の外で完璧に疎外感。置いてけぼりを食らって一人寂しくなって、ぼんやり昔の事を思い出していた。


この既視感は何だろう……とずっと考えていたけど、思い出に浸ってハッとなった。ーーーちびうさだ!


まもちゃんとラブラブ期に突入したある日、空から降ってきたとても天使とは言い難い第一印象のちびうさ。新たな敵も現れて、まもちゃんとはギクシャクしちゃうし。

でも、まさかちびうさが未来のまもちゃんとの子供だったなんて、本当にびっくりだった。

その後も、修行で未来に帰るまでまもちゃんにベッタリで……


そのちびうさと今の進悟が同じに見えて、重なって見える。

ちびうさは小さい体で、女の子だったから未来の親子という事実を置いても納得出来るけど、進悟はもう22歳。体も大きく、立派な男になっている。

そんな20代男性が、6歳年上の男性にゾッコンでベッタリってどうなの?


「進悟、彼女は良いの?」

「今日は学校。部活で忙しくして、放って置かれているのは俺の方だぜ?」


残念でした~と子供っぽくあっかんべーなんかしながら私を小馬鹿にしてくるおまけ付き。

こんな子供っぽい進悟に、付き合ってくれる彼女がいるのは奇跡に近いと思う。いつもありがとう、ほたるちゃん!あなた、本当にいい子よね。大好きよ、ほたるちゃん!


「今度はほたるちゃんも連れて来なさい!会いたい」

「俺が連れてこなくても、ほたるも一人でここに来てるんだろ?」

「あんたみたくしょっちゅう来ないわよ。アンタと違ってほたるちゃんは身分と空気を読んでるんだから」

「へいへい、すみませんね〜空気読めなくてね〜」


全くすまないと思ってなんて無さそうな言い方に、大きなため息が出てきた。


そんな進悟を見て、思えば私は昔から身内にまもちゃんとの恋路を邪魔されて嘆く運命なんだと悟った。


それもまた人生なんだと受け入れようとし始めた。





おわり




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