セラムン二次創作小説『LOVE AGAIN(A美奈)』
中国からダンブライトの石を見つけて持って帰ってきた私。
あれからお守りの様に肌身離さず大切に持っていたけれど、失くすのが怖くて専用のジュエリーケースを買ってそこに保管することにした。
うん。これで安心。机の上に置いて、いつでも見られる。
「綺麗ねぇ~」
やっぱり宝石は綺麗だ。単純にそう思う。
少し黄色がかっている様に見えるのはやっぱり金星出身だから?
それとも私を好きだったから?
「不思議よね。あんたってどっちかって言うと白かったのに」
ダンブライトの石は黄色か。
ボーッと見ながらうっとりする。
はたから見たら恋煩いしてる人みたいに見えるんだろうな。
こうしてダンブライトの石を見て、我ながら未練たらしいなって思う。
でも、仕方ないじゃない。こうして石を眺めるくらいは、許して欲しい。
「エース……」
ヴィーナスクリスタルと並べて見ようと久しぶりに手に取ってみた。
あれから敵も現れなくなってほとんど使うことも無くて、出番もなかったから久しぶりに見たら、やっぱり綺麗だ。
ダンブライトも綺麗。宝石はどれも比べられないくらい綺麗。
そんな事を考えていたらダンブライトの石からモヤみたいなものが現れた。
「な、なに?」
驚きながら見ているとそれが段々と形になっていく。一体何事かと見ているしか無かったけれど、それが人の形になって行くのが見て取れた。
「やあ、美奈子」
人の形をしたそれは、美奈子に話しかけて来た。見覚えのある顔。聞き覚えのある声。そう、今の今まで考えていた人。
「エース!?え、どうして?」
「さあ、何でだろう?美奈子が呼んだから?」
「私、呼んでなんか……」
ダンブライトの石は見ていた。エースの事も考えていたし、名前も呼んでいた。
けれど、別にエース自身を呼んでいたわけじゃない。思い出して懐かしんでいただけだ。ただそれだけだった。
「でも、現に俺はこうして又美奈子の前に現れた」
「亡霊、だけどね?」
「それは、仕方ないよな。死んだんだし」
死んだ。その言葉が重く私の心に突き刺さる。
死んでいるんだ。やっぱり、エースはこの世にはいない。
今目の前にいるのはエースだけれど、肉体は持っていなくて。亡霊。そう呼ぶのがしっくりくる。
エースは笑顔を見せてくれているけれど、その顔はどこか切なそうで。私も胸が締め付けられそうだった。
「でも、嘘みたい。こうして又、お話出来るなんて」
「俺もさ。美奈子が石を持っていてくれたお陰だ」
「そっか、石があればいつでもエースとお喋り出来るのね?」
なるほど。盲点だったわ。この石は確かにダンブライトだ。そこにエースの意思が宿っているのよ。ギャグじゃないけど。
「そうみたいだね。美奈子がそれを望むなら」
「全ては私次第って事?」
「俺にそんな力はないしね」
私にもそんな力は無いけど。どちらかと言うとそれはレイちゃんかな。
「何か悩み事?」
「ううん。ただ、ごめんなさい」
「何が?」
「うん、殺した事」
「それはお互い様だ。俺がそうするように仕向けたしね」
「覚悟していたって事」
「好きかどうか分からないって言われた時、決まった」
エースが好きだと思っていた。でも、自信がなかった。怖かった。
それがエースを良くも悪くもダンブライトとしての仕事に覚悟を持たせることになるなんて、思ってなかった。
「美奈子は?あの言葉で覚悟は決まったんじゃない?」
あの言葉。“君の恋は永遠に叶わない。好きな人をこの手で殺す”
確かにあの言葉は勇気をくれた。私を後押ししてくれた。私が一番大切なのは恋なんかじゃない。守るべきはプリンセスだ。
この命がある限り、私はうさぎの守護戦死。一番の従者であり、一番の忠誠心を持っている。
「そうね。お陰で迷わず戦えるわ」
「安心したよ。顔もスッキリしてる。俺の行動は間違ってなかった」
「ええ、感謝しているわ」
「そのままの美奈子でいてよ」
そう言うと、やっぱり少し寂しそうな笑顔を作って満足したのか消えてしまった。
「エース……」
突然現れ、突然消える。神出鬼没だ。
謝罪も感謝も出来た。後悔はもう無い。
又、いつでも会えることを願いながら、私はダンブライトの石を元の場所へと戻した。
おわり
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