セラムン二次創作小説『想いを胸に(ゾイ亜美)』
午前6時、いつも通り起床。
いつもと同じ朝で、いつもと違う朝。
今日はセンター試験1日目。
今までの力を出し切る日。
そして、志望校に合格出来るかどうかがこの結果で決まる日。
そんな大事な朝に、いつもの様に過ごす。
母が買ってきてくれたサンドイッチを手にする。そして、スマホの確認。
午前5時52分に彩都さんからLINEが来ているのが目に映る。
“おはよう
いよいよセンター試験当日ね!
亜美なら大丈夫って信じてるわ
今までの成果を存分にぶつけなさいな
ところで、案の定、雪が降り積もってるけど大丈夫?
まぁ、大事な日はいつも雨や雪だったから
亜美らしいと言えば、らしいけど”
彼らしい応援の文章だと、思わずクスッと笑ってしまった。
そして、彼のLINEで初めて雪が降り積もっている事を知った。
窓を見てみると、そこは白銀世界。
交通機関、きっと麻痺してるわね。
何て余裕を見せている私は、この事態を想定済みだったから。
センター試験の日は毎年、雪が降り積もる事が多い傾向にある。ニュースで毎年同じ事を言ってるのを見ていた。
きっと今年もそうだろうと予想していたから、驚きはない。
“やっぱりそうか……”って程度で。
昨日のニュースの天気予報でも言っていたし、予想通りって所で。
心に余裕があるのは、それを分かってて昨年と一昨年とシュミレーションをしていた。
つまり、今日この日の為に事前に同じ条件で予行演習をして、備えていたから。
何事も備えあれば憂いなし。お陰で心にゆとりが出来ていた。
それに、私が受ける試験会場は、割と近場の大学だから徒歩で行ける範囲。
交通機関が乱れていても、私には関係ない。ただ、足元を取られて歩きづらいのは火を見るより明らか。
まだ早いけど、何が起きるか分からない。
だから支度が出来た7時に家を出て、会場へと向かう。
案の定、慣れない雪に足を取られる。
10cm以上は積もっているだろうか?
それでもまだ降り足らないとばかりに、牡丹雪が追い打ちをかけて降り続いている。
進んでも中々前に進まず、挫けそうになる。
大丈夫、まだ時間はある。
それに、この雪は私だけに降ってるわけじゃない。
センター試験受ける全ての受験生に降り注いでいるものよ。つまりは、全ての受験生が同じ境遇に立って苦しんでいる。
そう考えると、肩の荷がおりて楽になる。
ゆっくり、転ばないように歩き、会場に着いたのは、家を出て1時間半経った8時半。
やっぱり早めに家を出てよかった。ホッと胸を撫で下ろす。
受験番号の席について、息も心も落ち着かせる。
鞄に着けていた彩都さんから貰った火川神社の御守りを握り締める。
あの日の会話がさっきの事の様に蘇ってくる。
「センター試験に受験、頑張って!これ、火川神社の“合格御守”よ。私だと思って大切に持って行って」
「ありがとうございます。頑張ります!」
「今まで努力していっぱい勉強して来たもの。大丈夫って信じてるわ。天才少女で、知性の戦士ですからね!」
「彩都さん……」
「あ、お返しはデートとキスでOKよ?プライスレスでしょ?うふふっ」
「もう、彩都さんってば!うふふっ」
って会話をしたのが1週間ほど前のこと。
信じて貰えていることが単純に嬉しかった。
うさぎちゃん達からも激励のプレゼントを貰った。
レイちゃんから、彩都さんが御守りだからと“学業成就”のパワーストーンのブレスレット。
贈り物が、あべこべね。何て思いながら、4人の、ううん。5人の気持ちがとても嬉しくて。
みんなに応援して、支えて貰ってここまで来たんだな。何てしんみりしていた。
「みんな、ありがとう」
休みでまだまだ夢の中のうさぎちゃんや美奈、雪かきをしてるだろうレ、そして、家事をこなしてるまこに。聞こえないと分かっていて、声に出してお礼を言った。
「彩都さんも、ありがとう」
きっと勉強第一で、放ったらかしで不満があったと思う。けど、文句一つ言わず応援してくれて、本当に感謝してもしきれない。
いつの間にか、息も心も落ち着いていた。
そして、受験の時間まで後5分となっていた。
大丈夫。やれるだけの事はやって来た。
後は持てる力を答案用紙にぶつけるだけ。
この日の為に、どんな模擬試験だって受けて来た。
センター試験や受験が終われば、少し時間が出来る。余裕が持てる。
信じて我慢して待っていてくれた恋人と、出来る限り過ごそうと決意して私は、答案用紙に向き合った。
おわり