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サッカー観戦という難儀な(?)趣味について語る
今日からJリーグの2025年シーズンが始まります。始まる前に、サッカー観戦(Jリーグ観戦)というこの厄介で難儀な、愛すべき趣味のことについて書いておこうと思います。
※書いているうちにいつものごとくダラダラと長文になってしまったので、お暇な方、サッカーがお好きな方だけでもお読みいただければ幸いです。
2024年シーズンの苦しみ
わたしが応援しているサガン鳥栖は、昨シーズン開幕からずっと低空飛行を続け、4試合を残して早々とJ1から降格しまいました。
2012年に初昇格してから13シーズンをJ1の舞台で戦い、毎年のように降格候補に挙げられながらもしぶとく生き残ってきましたが、ついにJ2への降格が決まってしまったのです。
わたしがnoteを始めた2024年の8月は、引き分けを挟んで9連敗していた時期の真っ只中。
勝てない…とにかく勝てない。
7月6日にアルビレックス新潟に勝利してから、次に勝利を味わうことができたのは、なんと11月3日!実に約4ヶ月もの間勝利に見放されていたのです。泥沼に胸までつかったような時期にnoteをスタートしたので、正直書きたいことなんてない、むしろあんまり考えたくない、という感じでした。そこからさらにズブズブと沈み込み、ある時ついに沼の底が抜けて降格が決まってしまったのです。
あまりに負け続けると、思考も段々おかしくなってきます。
「わたしが観るといつも勝てないから、今日は観るのやめとこう」と思い立ち、配信を見ることをやめる。でも、やっぱりどうしても気になるからちょくちょくスポナビのスコア速報をチェックしてしまう。(←だったら素直に配信観ればいいのに、と自分でもツッコみたくなります)
1点リードした後半35分くらいに「今日こそ久々の勝利が見られるかも…!」と慌ててDAZNでLive配信を見始めた途端に失点。「ほらー!やっぱわたしが見たらダメじゃん!もー!」と一人でキレる。
「今日は願掛けして試合を一切見ない!途中経過も見ない!」と決めて、外出の予定を入れる。帰宅後薄目でアプリで結果を見るとやはりきっちり負けていて「観ても観なくても一緒や!」となる。
…そんな4コマ漫画みたいな日々を実際に送っていたのです。
週末負ける→凹んだまま月曜を迎える→鬱々として平日を過ごす→週末にまた負ける…という負のループを繰り返していました。
そもそもこの「見ない」という願掛けも冷静に考えれば意味不明なのですが、「もうこれ以上負けるところを見たくない」という心理の現れだったのかもしれません。
趣味なのに、娯楽のはずなのに、何でこんなに苦しい思いをしなくちゃいけないんだろう?もういっそのこと見なきゃいいのに、なぜわたしは見続けているんだろう?
そんな自問自答を繰り返す日々だったので、降格が決まった日は悲しさや悔しさよりも、「ああ、やっと解放された」という感じの方が強かった気がします。そう思うのと同時に、「こんなふうに考えるわたしはファン失格なのかな…」とも思ったり。
考えてみると、スポーツ観戦(特に特定のチームを応援すること)とは、何ともままならぬ趣味です。自分の努力ではどうにもならないことに熱くなってヤキモキしたりハラハラしたり凹んだりさせられるわけなので。
久しぶりの現地観戦
10月に降格が決まった後、選手も何かが吹っ切れたかのように、チームの調子は上向き始めました。
そしてシーズン最終戦の12月8日、J1ラストマッチをしっかりこの目で見届けるべく、久しぶりに一人スタジアムへ向かいました。
サガン鳥栖の本拠地、駅前不動産スタジアム(通称駅スタ)は、JR鳥栖駅の真横にあります。
福岡市内に住んでいた頃は、年に6〜7回くらいは観戦に行っていました。何しろ博多から鳥栖までは区間快速で35分ほどなので、アクセスは申し分なし。逆に今は同じ佐賀県内に住んでいるにも関わらず、遥かに遠くなってしまい、観戦に行く回数は激減してしまいました。
この日は午前中に福岡へ行く用事があったため、久しぶりに博多駅から鳥栖へと向かったのですが、駅のホームでわたしの後ろに並んだ男性二人組が対戦相手のジュビロ磐田のサポーターさんでした。浜松までの帰りの新幹線の時刻を検索しながら「緊張してきたな」「いや、おれはもう達観してるけどな」なんて会話を交わしているのが聞こえてきました。
実はジュビロは、この時点でわずかながら残留の望みを残していました。最終節に点差をつけて勝ったうえで、他会場の残留を争うチームが敗れれば勝ち点で並び、得失点差次第で逆転残留の可能性があったのです。かなり厳しい条件ではありますが、可能性は0ではない。「緊張する」も「達観してきた」もファンの心情的によくわかります。
残留と降格では、まさに天国と地獄。
こちらはもうとっくに降格が決まっている身なのである意味気楽なものですが、ジュビロファンの方たちはもし降格が決まったらどんな思いで帰路につくんだろう…明日ちゃんと仕事に行けるんだろうか、なんて考えると心がキュッとなります。
鳥栖駅を出てスタジアムへ行くには虹の橋という線路の上に架かる歩道橋を渡ります。
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あ〜気分が上がる!
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坂をのぼっていくといっそうワクワク感が高まります。降格が決まった後の消化試合、なんてことはもう関係ない。ああ、やっぱり現地はいいなぁ!としみじみ噛み締めながらスタジアムの中へ。
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夕暮れどきの写真
メインスタンドのホーム側がわたしの定番。いつもは3階自由席が多かったけど、この日は最後なので指定席にしました。
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逆転残留を信じるたくさんの人々が
はるばる駆けつけていました
ホーム最終戦はただでさえ感慨深くなります。もう「このチーム」を見られるのはこれで最後になるから。
サッカーは野球に比べると選手の入れ替わりがかなり激しいチームスポーツです。特に鳥栖のように慢性的にお金のないチームでは、活躍した選手はすぐに引き抜かれてしまうので、翌年にはスタメンが半分残っていれば御の字、というレベル。
2024年シーズンに至っては、オフシーズンの間に選手がごっそり引き抜かれた上、シーズン途中にも主力がどんどん引き抜かれるという異常事態。正直なところ夏の終わりには「ついに落ちるか…」と降格を覚悟しました。
最終戦でプレーしている選手たちも、おそらくほとんどがチームを去ってしまうでしょう。久しぶりの現地観戦なので、知らないチャント(応援歌)もたくさん歌われていて、「この選手のチャント、初めて聴いたけどこれが最後かもしれないなぁ」と思いながら手拍子を送っていました。
試合は16分に冨樫敬真選手のゴールで先制。ゴールが決まった時のスタジアムの一体感、お祭り騒ぎ。
そして30分にはマルセロ・ヒアン選手が抜け出して追加点!全員が歓喜で立ち上がります。ひとしきり喜んで、ヒアンの名前をコールして、各々良き頃合いで着席するのですが、そのちょっと落ち着いた時に、わたしの真後ろの席にいた若い男性の、しみじみとした呟きが聞こえてきてハッとしました。
「あ〜、もうほんと、ヒアン鳥栖に来てくれてありがとうだよ」
ほんとそう!!!
振り返って握手を求めたいくらい同意です。(もちろんそんな不審なことはしませんが 笑)
ヒアン選手がシーズン終了後に出て行くのはもう間違いない。それはファンもわかっています。J2でプレーするような選手ではないし、J1の多くのクラブからオファーがあることでしょう。(実際、J1のFC東京へ期限付き移籍となりました)そんな選手が鳥栖に来てくれた、鳥栖でプレーしてくれたことに感謝しなきゃ!
そうか、わたしは感謝するために今日この場に来たんだな、と思いました。
苦しみばかりだったシーズンでしたが、最後に現地まで来てよかった。
正直なところ、J2に戦いの場を移す2025年シーズンは、同じ熱量で応援できるかわからないな、来季のDAZNの契約どうしようかな、なんて後ろ向きな考えがよぎったこともあります。
でも単純なもので、現地観戦の醍醐味を味わったことでそんな気持ちはファーっと消え去っていきました(笑)
勝ったからこそそう思えた、ということもあります。結果3-0の完勝でしたが、逆に0-3で負けていれば同じような気持ちにはなれなかったかもしれない。試合後、ジュビロサポーターからはブーイングや怒号も聞かれました。
最終節を終えて、物思ふ
最終戦の後はセレモニーがあるため、試合が終わってから少し間が空きます。その間、いろいろなことを思い出していました。
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引退する選手のための花道ができる
初めて現地観戦した時の、満員のスタジアムのワクワク感。
同い年の観戦仲間の友人ができたこと。
J1で初めて暫定首位に立って舞い上がった翌週に監督が解任され、朝から愕然としたこと。
アウェイに乗り込んで来た浦和レッズサポーターの圧倒的声量。
アトレティコ・マドリーが鳥栖へ来た、うだるように暑い日のこと。
その一員として来日したフェルナンド・トーレスが、数年後にサガン鳥栖に加入した時の衝撃。
トーレス加入に伴ってチケット代が大幅に上がり、観戦回数を減らさざるを得なくなったこと。
奮発して指定席を買った時に限って、隣がずっと大声で文句を言ってる人だった時の絶望感。
鎌田大地の渡欧前ラストマッチに、社員旅行帰りで荷物を持ったまま参戦したこと。
アカデミー(下部組織)からどんどん若い選手が入ってきて「鳥栖の未来は明るい」と喜んだこと。
そういう子たちも出て行ってしまったこと。
見ず知らずの隣の席のご夫妻とハイタッチして喜びを分かち合ったこと。
鳥栖の10番、キム・ミヌ選手の退団セレモニーの挨拶で涙したこと。
小学4年生と2年生くらいの兄妹が2人で観戦に来ていて、「お兄ちゃん、えらいねぇ」となぜか泣きそうになったこと。そして2人が席に着くまで周囲の大人みんながそっと見守っていたこと。
監督のパワハラ行為が発覚して憤りを覚えたこと。
コロナ禍の声出し禁止の異様な雰囲気の中で観戦したこと。
書いてみると、いいこともたくさんあれば嫌なこともそれなりにありました。きっとこれから先もそうでしょう。
一つだけ言えることは、今シーズンもまた、ままならぬことにワクワクしたりモヤモヤしたりハラハラしたりしながら、サガン鳥栖の応援を続けていくんだろうな、ということです。
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「魔境」と言われるJ2でのシーズンが、明日から始まります。