僕らのたどる道
いつか、話したことを思い出す。突然視界に現れた風船みたいに早く空に舞い、消えていく。今日は覚えていたんだ。珍しいねと褒めてよ。
僕の隣に君はもういない。それは至極当たり前のことで、まだ隣に並んで歩んでいる人生なんてお互いにつまらないだろう。でたらめな駅の名前を言って、そこを目指して電車に乗り込んで旅をした日もあったね。終着点も見つからず、それでも信じて揺られた僕らは若かったんだと思う。
探しものは見つからず、得たものは形の無い僕らの空白の時間。ポッカリと空いた気分にはならなくて、詰まっているのにすぐ消えてしまいそうな空白だった。また行こうなんて言い出せず、僕らはそれきり旅を辞めた。
君だけは、旅を続けているのかな。