映画紹介vol.5「死ぬまでにしたい10のこと」死と日常と欲望と。
今回ご紹介する映画は
「死ぬまでにしたい10のこと」
2003年
イザベル・コイシェ監督
出演:サラ・ポーリー、マーク・ラファロ、スコット・スピードマン、デボラ・ハリー
この映画が日本で公開された当初は、キャッチ―な邦題のせいもあったのか雰囲気系アートムービーみたいなイメージが先行していた気がする。
原題は「My Life without me(直訳:私のいない私の人生)」
映画を見た後だとこちらの方がやはりしっくりくる。
<あらすじ>
アンはカナダのバンクーバーで幼い娘と夫と暮らす23歳の女性。あまり関係が良好でない母親の家の庭でトレーラー生活を送っている。
17歳で夫ドンと恋に落ち、そのまま一人目の娘(ペニー)を妊娠し、高校を辞め、19歳で2人目(パッツィ)を生んだ。
愛している家族に囲まれ、貧しいながらも幸せな生活を送っていたが、高校をちゃんと卒業し、違う人生を歩んでいたらと思う日もあった。
ある日娘達と夫のドンを送り出し、朝食の片付けをしていたアンは激しい腹痛により倒れてしまう。洗濯ものを干していた母親が気づき、病院に運ばれ検査を受けるアン。
その結果、身体の広範囲にガンが転移しており、余命2~3ヶ月と医者に宣告される。
ショックを受けて涙を流すアン。
心配していたドンや母親には、ただの貧血だったと嘘をつき、その事実を誰にも告げないことを決意する。
そして夜一人で出かけたアンは、カフェで「自分が死ぬまでにすることリスト」を書き始める。
1、娘たちに毎日愛してると伝える
2、娘たちの気に入るドンの新しい奥さんを探す
3、娘たちが18歳になるまで誕生日のメッセージを贈る
4、家族でビーチに行く
5、好きなだけお酒とタバコを楽しむ
6、思っていることを言う
7、夫以外の人と付き合ってみる
8、男性を夢中にさせる
9、刑務所のパパに会いに行く
10、爪とヘアスタイルを変える
向かいの席から自分の事を見つめる男性がいるのにも気づかず、アンは黙々と書き続けた。
それからアンは徐々にto doリストを実行していく。
そんなある日アンはコインランドリーに行き、洗濯が終わるのを待っていると「コーヒーを買ってこようか?」とある男性に声をかけられる。
その男は、アンがto doリストを書いている時に向かいから見つめていた測量技師のリーだった。
コーヒーを買って戻ってきたリーだったが、日々の疲れと病気のせいでアンは寝入ってしまっていた。アンにそっと自分のコートをかけ、その寝顔を見つめ続けるリー。
起きたアンは、コートを貸してくれて洗濯ものまで取り込んでくれたリーの事が気になったが、家で娘2人が待っていると言い感謝を伝え急いで家に帰った。
家に帰り洗濯ものを畳んでいると、一冊の本が出てきて、そこには電話番号が書かれていた。リーからの静かなるアプローチだった。
そんな変化が起こり出した中、アンは少しづつ娘達へのバースデーメッセージを録音し始める。
そしてそのカセットテープを担当医師に預け、娘たちの誕生日に送ってもらうよう頼んだのだった。
一方、リーからのアプローチを受け、ドン以外の男性との恋愛に踏み出したアン。もちろん、ドンには内緒なので不倫である。
そんな時、隣の空き家に人が引っ越してきた。ナースの仕事をしているアンという同じ名前を持つ同世代の女性だった。
隣人アンは、キュートで子供の扱いもうまく、ペニーとパッツィも懐くようになっていった。
そんな隣人に興味を持ったアンはコーヒーに誘い、初めてじっくりと話をする。そして彼女の人となりを垣間見たアンは、何かを確信し始める。
<死ぬまでにしたい10のこと 予告編>
<以下はネタバレ&感想です。>
私はこの作品がとても好きでDVDも即購入したほどなのですが、レビューを見たりすると結構賛否両論で苦手な人も多いようです。
正直なところ現実的に考えると主人公アンの考え方には賛成できない部分もあります。事実を知らされなったドンや家族、リーの思い、勝手に隣人のアンを後妻にしようとしたりするなど。
ましてや、自分を心底愛してくれているドンを裏切って不倫までするとは。
ただ自分の人生があと2ヶ月で終わると知った時、今の自分とは違う人生を少しでも経験したい、叶えられなかった願いを叶えたいと思うことはそんなに悪いことなのかな。
フィルマークスでとても心に残ったレビューがありました。
そのレビュアーさんは、就職して新社会人としてバリバリ働いているアンと同い年の娘さんがいるとのこと。色々な壁にぶち当たって愚痴を聞いたりもするけど、頑張っている。
そんな時に偶然この作品を見たらしく、もし自分の娘がアンだったら。若くして二人の娘を生み、母として妻としての役目を毎日必死でこなしてきて、急にあと2ヶ月の命だと宣告される。to doリスト以外にもっとやりたいこともたくさんあっただろう。そう思うと涙が止まらなくなったとありました。
アンは世間からみて許されない行動をとったかもしれないけど、私は彼女のした事を100%肯定してあげたいと書かれていました。
それを読んで私も涙を流していました。
立場・考え方・経験によって、感じ方は本当に様々だなと実感した作品です。
他にも、ドキュメンタリーのような自然な演技、一つ一つの仕草、生活感、淡々とした流れの中にある味みたいなものもこの作品の好きなところです。
あと、言わずもがな、個性派俳優の面々。
ブレードしか勧めない美容師(マリア・デ・メディロス)、ダイエット狂の同僚(アマンダ・プラマー)偏屈な母親(デボラ・ハリー)など見た人にしかわからない楽しさがあります。
加えてイザベル・コイシェ監督作品によくある、絶妙に味のあるインテリアやカフェの内装などがとても好きです。
そういう目線で見ても楽しめるかも。
「死ぬまでにしたい10のこと」で個人的に好きだったモノ↓↓
長々と書いてしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
ではでは。
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