随想2

一番触れられたくない部分を自ら明かしてみた。
知ったような口を利かれた。
「アンタが私の何を知っている?」
「アンタが何の現実を知っている?」
その時からずっと、自分のやりたいこととは何かを考えている。

本当にやりたい仕事か?
このままこの仕事のキャリアを重ねるだけで良いのか。
「なぜそんなに向上心があるんですか」
素で聞きそうになった自分が居て、慌てて覆い隠す。
「ここに居ない方が良い」
「居たところで邪魔になるだけだ」
誰にも本心を明かさない。
将来に対する不安と焦燥、もやもやした何かが募っていく。
誰にも相談しない。
ただ「大丈夫ですから」と笑みを浮かべるだけだ。

結局のところ、「本来は違う仕事がしたかった」というブレーキがかかるのだろう。
本当になりたがっていた人は正当に評価されず、ただ一点のみを指摘される。

「大卒よりも高卒の方が素直だ」
「頭は悪くないのだから理屈が分かれば」
「あれぐらい能天気になれば」
頭を空っぽに、知能を落として馬鹿になれるのならこれほど人生に悩むこともなかろう。
もっと明るい人生だったろうに。

直木三十五記念館に行った。
座敷に座って、捨てて燃やしたはずの夢を眺めていた。

「次の新卒は優秀ばかりだといいですね」
「なりたくてその職業になったんですか?幸福ですね」
「資格を取って使って仕事できて飯を食えているのだからいいじゃないですか」
言ってしまえたなら、少しは心の靄が晴れるだろうか。

相手の顔色を見ずにごちゃごちゃと言える人間。
相手がそのまま死に向かうことは考えないのだろうか。

私は何のためにあるのか。
夢があってそれに向かって努力し続けている人間が居る。
私は何をしているのか。
ただ好きな男の存在を後世に残す、そのどこかに私が居ればいい。
そのためにやりたくもない仕事をしているのだ。

「いずれは働く人を支える立場、教育や管理側に――」
研修の将来的な目標ですらすらと嘘を並べられる私はどんな顔をしているのだろう、どう映っているのだろう。


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