行先不明の、不在着信。
朝というには少し遅い、でもまだまだ昼には程遠い中途半端な時間に目が覚めた。
二度寝を試みる身体を無理矢理にでも叩き起こすべく、携帯の画面からブルーライトを摂取する。
携帯を開くと、今から1時間と少し前、まだ胸を張って朝と言い切れる時間帯に見知らぬ番号から着信が入っていた。
0261から始まる番号には全く心当たりがない。
知らない番号から着信が入ったとき、まずは検索をかけることにしている。何の情報も得られないことが多いけど、今回は発信源がはっきりとわかった。
東北方面の、某有名観光地にあるホテルからの着信だった。
やはり、縁もゆかりもない。
寝ぼけた頭で考え、可能性は二つ浮かんだ。
一つ目は、誰かと間違えてかけた可能性。
これが9割。
もう一つは、大して期待も込めず応募したいつかの懸賞に見事当選していた可能性だ。
あるかもしれない。
もし何かの間違いで見事ホテル宿泊の権利が当選していたとして、電話に出なかった為に当選権が失われるようなことがあっては残念だ。
でも単に向こうのかけ間違いだったとして、こちらから電話をかけるのに何の後ろめたさも無くないか。だって、着信が入っていたのだから。折り返し電話をかけるのは自然な流れなんじゃないか。そうだそうだ。
以下、2時間悩んだ末電話をかけ直したその時の会話を再現したものである。
「はい、〇〇ホテルでございます」
「あの、そちらのホテルから8時ごろ着信があったんですけど、何の用件だったのかなと思って」
「えぇと…ご宿泊予定のお客様ですか?」
「いえ、そうじゃなくて。」
「…それでは、ツアーを何か申し込んでおられたりとか」
「いえ、申し込んでないんですけど」
「はぁ……」
「……」
「……」
「……あー、えーっと、まぁ、こちらに電話がかかってきてるので、何かもし連絡があればかけ直してもらえますか。もし何もないなら、本来かけるべき相手に電話が掛かっていないはずですから、どちらにせよ確認していただく方がいいと思います。もし間違いなら、連絡なしでいいので」
「……あ、かしこまりましたぁ」ブツッ
……いや、電話かけたのそちらさんなんですが。
なんやったんやろ。
旅行行きたなって終わったわ。
新手の広告宣伝かもしらん。
結局折り返しの電話はありませんでした。
懸賞説、ちょっと期待したのにな。
今日もお疲れ様です。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
またよかったら遊びに来てください。
では、おやすみなさい。