ていねいじゃないくらし
仕事のない栞達が順番待ちをしている。
六畳一間のコンビニエンスな地獄で、
鮮度が落ちたシナシナの怒りを添えて、
ひび割れた心を砕いてジャムにして、
冷えたトーストに乗せる。
それを奥歯ですりつぶして酸の海に溶かす。
そうして毎日が消費されていく。
一人暮らし人生で初めて、郵便物の再配達保管期限を過ぎた。
「あとでやろう」で折り重ねた不在票は、バッグの奥底でぺしゃんこのくちゃくちゃになっていて、まるでわたしみたいだった。
保管期間終了を告げるそれを見て、「ああ、終わった」とだけ呟いて、脱衣所に寝っ転がって、そこからの記憶は無い。
今日もまつパの予約はできなかったし、仮面ライダー鎧武の続きは見られなかったし、積まれた本も読めなかった。
心の余裕とか時間の余裕とかお金の余裕とか、そんなものは、剥がれ落ちた子宮内膜といっしょにどこかに流れていってしまった。
明日こそ早起きしてまつパを予約して、仮面ライダー鎧武を見て、あの本を読むんだ。いよいよおニューの、かわいい栞の出番だ。
そういう「ていねいなくらし」を思い描きながら、また、脱衣所の天井が遠くなっていく、六月。