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「シュタイリッシュな?ハーモニカ」 その2 出会いは突然に

【スタイリッシュ?なシュタイリッシュ!と運命の出会い】

具体的な楽器の話しに入る前に、なぜ私がこの楽器に魅せられたのか、私とシュタイリッシュハーモニカとの出会いについてお話しさせてください。それは今から20年以上昔のこと、世界中から集まった様々な楽器メーカーのブースが並ぶ楽器フェアの会場で、木のボディにエーデルワイスが手描きされたコンパクトサイズのボタンアコーディオンを目にしました。「小さい、綺麗、可愛い!」これが私と「シュタイリッシュハーモニカ」の衝撃的な出会いでした。今でもその時のブースの様子がありありと目に浮かびます。具体的に何年だったのか記録していないし、その時の会場図がないので分かりませんが、シュタイリッシュハーモニカの他にチターやギターも並んでいたので、恐らく同じ国や地域のアルペン音楽の楽器を扱うメーカーが何社か集まったブースだったのでしょう(確かバイエルン州政府の大規模なブースが出展されていた年だと思います)

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【写真 その時にもらったカタログの表紙。ヘスミュラーというメーカーでした】

その時の私はまだ大学生で、初めてのアコーディオンを手に入れたばかり。当時私が持っていたのはホーナー社の黒いボディに白い蛇腹、80ベースのピアノ式アコーディオン。シンプルな外見の自分の楽器と比べると、別世界の美しさ。だって蛇腹を開くと鮮やかな赤や黄色や青のトールペイント調のプリント柄にエーデルワイスの花が咲き乱れているんですよ!?単純に「可愛い!欲しい!」と一目惚れ。正に運命の出会いでした。しかも夢のような軽さ(アコーディオンがすぐに10キロ近くになる事を思うと、とても軽い大体6キロ前後が多いと思います)。小柄な私は普段からアコーディオンの重量に頭を痛めていましたから「コレだっ!」とばかりに出展者にあれこれ話しかけてみたのですが、あいにく英語が話せる方がいなかった事、さらにブースについていた日本人スタッフに話しかけてもけんもほろろ、全く相手にされなかったのを良く覚えています。

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【写真 カタログの一部。とても可愛いくてひと目惚れしました!】

まだ子供の私が買うとは思えず、お客扱いしてくれなかったのかも知れません。その後家を買えるくらいは楽器に散財する人生を選んだ私ですから、どこかで読んだ、高級外車のディーラーさんに1人で来た若い子を営業マンたちが誰も相手しなかったのに、一人だけキチンとお相手して、説明後に名刺を渡しておいたら、数年後「あの時はお客として相手をしてくれてありがとうございました。とても嬉しかったです。お陰様で医者になれました。今日はあなたから一台買います」と言って成約したばかりか、父親や兄弟、知り合いまで紹介してくれる…と言う展開を思うと、その後二十数台のアコーディオンを買って来た身としては、あの日ちゃんと対応されてたら展開が違ったかもしれないな…と思ってしまいます(今振り返ると、あの時に対応されていたら今ほど客観的に多角的にアルプス音楽の世界を見る事ができたか自信がないので、やはり「人生は全てがベストタイミング」だと思うのでした)

とにもかくにも、シュタイリッシュハーモニカとの出会いが早かったのにもかかわらず、ある意味で早過ぎたという点においては、ちょっと残念な出来事でした。

【閑話休題 同時に1137人のアコーディオンが演奏。ギネス記録に挑戦!見た通り多数のシュタイリッシュハーモニカ(フライとナルツァ)が参加しています。演奏曲はスロヴェニア人なら絶対に知っている「静かな谷間」と「ゴリツァの上で」の2曲。なかなか壮観なので、ぜひお楽しみください】

【塞翁が馬。カタログを貪るように眺めて培う単語力】

さて家に戻ってからは、毎日のようにもらったカタログを隅から隅まで眺めて、ドイツ語の辞書を引いては「3 Chörig」ってのは3 Reeds ってことか」とか「Stimmngってのはきっとチューニングのことなんだな」なんて、今では当たり前に分かる事を地道に調べてはどれを買おうか、何調にしようか考えておりました(出せる音数が限られているため、オーダーする時に音の高さを指定します・後述)まだインターネットがない時代、誰でも全ての情報は自分の目で耳で足で地道に調べるしかありませんでしたもんね。でもそれはそれは楽しい時間でした。そして自分の血になり肉となる積み重ねでした。結果としては、その他にもたくさんメーカーがある事も知れましたし、その後にできたネットワークのお陰で、納得いくように楽器をカスタマイズして手に入れられたので良かったです。さて、ちょっとカタログを見てみましょうか。

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一番したの方にB-Es-As、A-D-G-Cなど3つまたは4つのアルファベットが並んでいますね?それらは、3列ならそれぞれの列をどのような音並びにするか、4列ならどんな調子にするのか、オーダーする時に指定するためのものです(基本的にドイツ音名が使われることが多いです)キーが変わると配備される実音は変わりますが、楽器を持ち替えても全く同じ指遣いで曲が弾けるので、歌や編成、アレンジに合わせてバンバン持ち替えをします。そのためのオーダーシートという訳です。

ドイツ・オーストリアではGCFが基本の楽器でGCFBbの四列が一番普及しているようですが、スロヴェニアでは三列のCFBbを基準にする事が多いです。その後自分の上達や活動の必要に応じてシャープ系やフラット系の楽器を増やして行きます。今までみた限り殆どの教材はGCFの楽器を使うことを前提に書き進められているので初学者が手に入れるのはGCF(Bb)の楽器が無難だと思います。テキストや勉強法については「その5」で簡単に触れておきましたのでご興味ある方はそちらもご一読ください。

一台一台は軽くても、中には演奏する曲によって最高で5台の楽器をライブの度に持ち歩く場合もあるという人に会ったことがあります。日本では公共交通機関での移動を思い浮かべますが、ヨーロッパでは都市部を除いて車で移動しますから苦にならないのはもちろんですが、発想そのものが違うのかも知れません。

さあ、日本ではあまり身近にない民俗楽器「シュタイリッシュ・ハーモニカ」とは一体どんな楽器なのでしょうか。まだまだ続きます!

※トップの写真はスロヴェニア共和国リュブリャナの民俗博物館に展示してあるハーモニカ(2019年6月安西撮影)

【以前こんな動画を作りました。実演を混ぜてご説明しています。宜しければ併せてご覧ください】↓

【お調べ参考リンク】

 ドイツ語のウィキペディア https://de.m.wikipedia.org/wiki/Steirische_Harmonika 

 英語のウィキペディア  http://www.wikiwand.com/en/Steirische_Harmonika

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