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「シュタイリッシュな?ハーモニカ」 その4 キラキラ高音とシビれる低音ヘリコンバス(子供用もあるよ!!)

【楽器の成り立ちのおさらい】 

過去記事で3回ほど「フライトナルツァ/シュタイリッシュハーモニカ」についてお話しして来ましたが、最初の頃にお話しした事を忘れてしまった方や、今回初めてご覧にある方もあるかと思うので、楽器そのものについておさらいしましょう!

皆さんは口で吹いたり吸ったりして演奏する「ハーモニカ」をご存知ですね。簡単にご紹介するとシュタイリッシュハーモニカは、右手側に高さが異なるハーモニカが3本または4本縦に並べてあり、それを蛇腹を開け閉めしつつボタンを押すと風が通って金属製のリードが鳴って音がする仕組みです。実演を織り混ぜてこんな動画を作った事がありました。活字より動画が好みの方はこちらもどうぞ↓

口で吹く(一般的な)ハーモニカのように「一つのボタンで蛇腹を押した時と引いた時に異なった音がする」タイプのアコーディオンの親戚をdiatonic式(ディアトニック・ダイアトニック)と呼びます(注1)この方式の楽器はアコーディオンの仲間たちが、口で吹くハーモニカの延長に出来たことを考えると、とても自然な発想に思います。

今でもアイルランド音楽に使うメロディオンやアングロコンサーティーナ、ケイジャン音楽やドミニカ共和国のメレンゲ、アメリカ中西部やメキシコ北部のノルテーニョやコンフントが盛んな地域で使われるタイプ、そして皆さんには主にタンゴでお馴染みのバンドネオンなど、世界中に大小様々なタイプがありますし、ジャンルによっては演奏上のメリットが多くて愛され続けているのも納得が行きます(注2)その後に生まれた押引同音のクロマチック式が、仕組みの上で重量が増えてしまった事を考えると比較的軽量な楽器が多いのもディアトニックアコーディオンの強みだと思います(標準的な中型のアコーディオンでさえ10キロ程度が普通なのに、シュタイリッシュハーモニカは6キロぐらいの楽器が多いです)

【特徴的な左手のビリビリ低音「ヘリコンベース」】

さて、動画をご覧になってキラキラと通りが良い右手側のメロディー音と、特殊な機構でビリビリとまるで金管楽器のチューバのように低い音を出す左手側のベース(ヘリコンバス”Helikon Bass”と言います)が特徴だとお聴きいただけたと思います。現地で色々な演奏を聴いたり実際に自分が現地のPAさんのお世話になってみると高音域と低音域を強調した、いわゆる「ドンシャリ」という音調整をされるので(しかもリバーブたっぷり)、低音と高音が民族的に好まれる音域構成なのだと思います。また、歌が入る曲も多いので丁度真ん中に来る人間の声域を避けて、歌や管楽器が入ると自然とバランスが良くなるように落ち着いたのかも知れません。

耳が求める音も地域や文化によって好みが様々で面白いですね!

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【写真 シュタイリッシュハーモニカの左手側内部。長いリード(風圧で振動して音を出す金属片)が特別低いベースの音を響かせます。このベース音が心地良いビートを刻みます。撮影 安西はぢめ】

スロヴェニアで創業した名門「ルータルアコーディオン」社の製作工程のビデオです。内部構造など垣間見ることができます↓

【子供用の楽器がある!】

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もう一つ素晴らしいことがあります。それは、シュタイリッシュハーモニカは各社が子供用の楽器小さめなモデルを出していることです。それもあり、幼い頃から取り組む人が多いのも特徴の一つと言えるかも知れません(一般的な「アコーディオン」に子供用のモデルがない訳ではありませんが、重量の都合もあって身体が大きくなってから本格的に始める人が大半です)。これは本当にすごい事で、分数のバイオリンなど一部の例外を除けば「子供用」がそもそも存在しないのが楽器の世界なので(子供用トランペットなどがないことを想像してもらえたら理解して頂けるのではないでしょうか)、本当に素晴らしいなあと思います。トップの写真とこれらの写真は手元にあるルータルアコーディオン社(日本代理店・御茶ノ水谷口楽器)のカタログの接写ですが、ボティがコンパクトで3〜4キロ程度と軽量な子供用のラインナップのページです。こうして様々な形で裾野を広げ、演奏家人口が増えるのは素晴らしいことですね!

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シュタイリッシュハーモニカ(フライとナルツァ)のお話しは、まだもう少しだけ続きます。

【さあ、若い演奏家が奏でるTiroler Buam Polka(チロルの若者のポルカ・拙)をどうぞ。周りの大人たちが楽しみつつ優しく見守っている雰囲気が大好きな動画です】

注1) diatonic の読み方についてカタカナのルビが「ディアトニック」だったり「ダイアトニック」だったり資料によって統一されていませんが、アメリカ英語を基準にした場合にダイアトニックと呼び習わすことが多いです。bassを「バス」と読んだり「ベース」と読んだりするのと同じですね。イタリア語・スペイン語・フランス語、またドイツ語やスラブ系諸語などでも基本的には「ディアトニック」に基づいた読みが多いので、この場合のカタカナ表記についてどちらが合っているとか間違っているということを論じるのはナンセンスです。時々わざわざご丁寧に訂正してくださる方がありますが「ディアトニック」も「ダイアトニック」も同じことを指しているとご存知の貴方は、お相手がどちらを使ってもニコニコと受け止めてあげましょう。もちろんご自身がどちらを使うかはお好みで。どちらもOKなんですから!

注2) どのジャンルにもクロマチックのアコーディオンで演奏する方もありますし、バンドネオンにも幾つかボタン配列の異なるクロマチック式が存在します。それらの例外については今回紙面の都合で割愛します。筆者は、違いや成り立ちを理解することは大切かもしれないけれど、どちらが優れているとか「◯◯でなければならない」などという極端な意見を主張する立場にはありません。

【お調べ参考リンク】

 ドイツ語のウィキペディア https://de.m.wikipedia.org/wiki/Steirische_Harmonika 

 英語のウィキペディア  http://www.wikiwand.com/en/Steirische_Harmonika

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