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楽器のお値段「アコーディオンは高いのか?」

「アコーディオンの音色は人を幸せにする」安西はぢめです。アコーディオンを弾いてお客様の前に出ると、よくある質問が「この楽器幾らですか?」です(本当によく聞かれるんですよ!)これはバイオリンさんもよく聞かれるみたいですけど、肌で感じる決定的な違いは「バイオリンはとても高価な楽器」という前提で質問されてて、アコーディオンは「それほど高くない」という前提で聞かれているように感じます(当社比)

なぜなら、私が「だいたい軽自動車一台分くらいです」なんて答えると「高っ! そんなにするんだ!」と口に出す人が多いんです。でもバイオリンの人が「マンション買えるくらいでしょうかね」なんて答えると感心したような顔をして「そうでしょうね、そのくらいするでしょうね! はぁ〜大したもんですね!」みたいな反応なのです。いつもなかなか面白いと思って眺めております。

アコーディオンのできるまで(パーツが多くて大変!)

そもそもアコーディオンは大変に部品の数が多い楽器で、内部のメカも複雑。組み立ては全て手作業、そして肝心な音の要となる大小高低様々な数百枚に及ぶリードは全て熟練した職人の手で調律され、一つ一つ定位置に組み込まれます。それはもう気が遠くなるような緻密な作業の積み重ね。

【私と付き合いがあるスロヴェニアのアコーディオンメーカー「ルータル」の製造風景を垣間見てみましょう】

ご覧の通り、木材加工から金属パーツの扱い、蛇腹の貼り付けや塗装に至るまで、全て人の手で作られる物で、決して工業製品ではありません。むしろ工芸品とも言える部分さえあります。しかも、多くの独奏用のアコーディオンはイタリアやドイツ、フランスなどヨーロッパからの輸入品です。こう言う事情をご存知かどうかで、アコーディオンを「60万円(わぁ、お買い得!)」と思う人と「60万円(え、そんなにするのか)」と思う人に分かれるように思います

海外でアコーディオン屋さんへ行くと店頭に「完成品」の楽器が展示・販売されていますが、ヨーロッパではカスタマイズやオーダーメイドがかなり一般的です。自分が好きなボティの色や素材、蛇腹の色やボタンの色、どんなチューニング(音の高さの細かい調整)にするか、どんな配列にするかなど、使用目的やジャンル、自分の弾き癖によって細かい好みを反映させます。そして名前を入れたりして「自分だけの楽器」を作ってもらいます。なので早いメーカーでも半年くらい待つことはザラですし、長い場合は納品まで数年かかる場合もあります

日本からの注文は外国語による細かいコミュニケーションの都合などで難しいので、基本的にはメーカーのカタログに載っているスタンダードなモデルをあらかじめ各楽器屋さんが事前に注文して輸入して店頭に並べています。もちろんこの職人さんたちの精魂こめたクラフトマンシップは変わりません。ですから、店頭に並んでいる楽器は1年とかそれ以上前にオーダーされてコツコツ作られたものなのです。そのことも思い浮かべてもらえたら嬉しいです。

それを思う時、ざっくりと材料の原価+製作にかかった人件費・時間+国際輸送費や保険料などなどに利益を乗せたと言っても、日本の小売店の皆さんが新品を売る時に設定してくれているお値段はとても良心的だと思います(我々の賃金が上がっていないので、相対的には安くても絶対的に高く感じてしまう現象がずーっと続いているのは、あらゆる業界、そして消費者一人一人にとって非常に悲しく残念な出来事です)

ひきかえ、高校生のブラスバンド部員が50万円、60万円の管楽器を使っていることは決して珍しくないのですが、逆にそれらについては「それくらいするもんだ」という認識が出来ているのであまりびっくりされることはないようです。認知度で断然劣りますがアコーディオンの値段についてもびっくりされないように業界の端くれとして、これからも啓蒙に頑張っていきたいところです(それにしても、当たり前に「楽器は高価な物だ」と思ってもらえるなら、アコーディオンもその仲間に入れて他の弦楽器や管楽器と同一視してもらえたら嬉しいです)

そんな訳で、かかっている工程を考えるとアコーディオンの値段はむしろ割安。輸入品と言う事を考えるとなおさら決して高くはないと言えると思います。ただ「楽器」としては当たり前に「それなりのお値段」なので、なぜか多くの人が抱いている「アコーディオンはお手軽価格なのではないか」と言う考えはちょっと違うみたいだと言う目で見てやってください。

【私が30年来お世話になっているのは1935年創業の老舗。東京御茶ノ水にある「谷口楽器」さん。各種アコーディオンが目白押しです!!予約制でオンラインで商品のご案内も頼む事ができます。時代ですねぇ】



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ハッピーアコーディオン安西はぢめ

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二胡・中国音楽の小学校「創樂社」安西創(あんざいはじめ)
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