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「シュタイリッシュな?ハーモニカ」 その5 まとめてみよう
いかがでしょうか。過去4回に亘ってシュタイリッシュハーモニカ(スロヴェニア語でフライトナルツァ)と言う民俗楽器について色々とお話しして来ました。見た目だけでは分からない、あるいは気になっていた基礎知識がインプットされて来たのではないかと思います。どこから読んでもなんとなく楽しんで頂けるように少しずつ重複したりしましたが、ひとまず一度ポイントをまとめておきましょう。
【楽器の特徴まとめ】
・主に南ドイツ(バイエルン地方)、オーストリア(各地で演奏されますが西のアルプスに近い「チロル地方」でとても盛ん)、南チロル(北イタリア)、スロヴェニアなどのアルプス山脈の文化圏で使われる事が多い民族楽器だということ。また、スロヴェニア系移民が多いアメリカの一部地域(オハイオ州クリーブランドが最大のコミュニティ)やカナダにも愛好者がいる。
・一つのボタンを押さえて蛇腹を開いた時と戻した時に違う音がする、いわゆる「ディアトニック(ダイアトニックアコーディオン)」だということ。 「口で吹くハーモニカを手で弾く楽器」というコンセプトを思い浮かべてくだされば分かりやすいかも知れません。ドイツ語圏で単に「ハーモニカ」と言うとこれらの楽器を指す事が少なからずあります。またスロヴェニアではハーモニカ(ハルモニカ)はアコーディオンの総称でもあります(後述)
・そして左手側のベース音が特別低い「ヘリコンベース」という独特なことも重要な特徴。
・サイズが小さくで軽い子供用の楽器を出しているメーカーも何社かある。それも裾野を広げている大きな取り組み、理由なのではないでしょうか。その甲斐もあり、伝統・文化の受け皿も手伝って小さなハーモニカ弾きさんたちがたくさん育っています(素晴らしい)
【ここで一曲。私の演奏でスラゥコ・アゥセニク作曲のポルカをどうぞ!】
【どうやって習うの?】
さてここで、最終回にして初めてですが、ここまで読んでくださった方のために、最後は「どうやって習うのか」について触れておきますね。残念ながら日本では十分に習える場所もなく、そしてまだ専門の演奏家はいませんから、主に独習を念頭に話を進めると海外からテキストを取り寄せて自分で勉強することになると思います(マイナー楽器の定め)。そして出版物の大半はドイツ語で書かれています(そこもハードルかも知れません)。主に教材は、大きく分けて通常の楽譜にボタンの番号と何列目かを書き込んだものを使うシステムや、音符を使わずにボタンの位置だけで曲を練習する(ギターでいうところの「タブ譜」のようなもの)Griffschriftというシステムの二つがあります。その他に曲を耳でコピーして身につけていくという人もいます。
どれが良いかと言われたらGriffschriftはすでに出版物もたくさんあり、コツさえつかめたらそれらの楽譜を入手しさえすればどんどん自習できるとは思います。けれどもオーストリアやスロヴェニアの演奏家の知り合いたち何人かに聞いてみたところ、指遣いだけを覚えてしまったがために音楽として、あるいは曲として覚えない可能性が高いので、彼らの個人的な意見の大部分は慣れて来たら少なくとも普通の楽譜が並記されている教材を使って補助的にGriffschriftを使うのが良いのではないかということでした(私は主に普通の楽譜を見たり演奏を聴いて曲を把握しつつ耳でコピーしています)
指遣いも4本のものや5本のものなど、スタイルの違いがそれぞれに主張するところがあるので(たまたま)手にした教材に従って行くと自然と4本指で、あるいは5本指で弾く人になるのだろうと思います。クロマチックアコーディオンでも4本指奏法、5本指奏法については議論があるところですが、多くの場合「先生から習ったように弾くようになった」だけの話しで、子供の頃から習った上手い人が「4本指で弾いてるから引け目感じちゃうな」ってことなどない訳で、日本で横行しがちな一般論などに振り回されずにご自身のチョイスやご縁を信じて行けば良いのではないかと思います。何かお役に立てる事があるようでしたらご相談に乗りますのでご連絡ください。
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【写真 教材の一例・安西はぢめ蔵書より】
【オマケ豆知識】
因みに「Steirische (シュタイリッシュ)」は「(オーストリア)シュタイヤーマルク州の」と言う意味ですが、オーストリア・ドイツ語、しかもウィーンで話される時には「シュタイヤーマルク州の」と言う意味だけでなく暗に「ウィーン以外の」という含みがあるそうで、フォーク音楽に使うと言うことから「ハーモニカ」に冠しただけで、必ずしも地域としてのシュタイヤーマルク州を指している訳ではなさそうです(実際にシュタイヤーマルク以外でも盛んに作られ、色々な場面で使われていますし、何よりウィーンでも弾く人はあります。2019年11月、ウィーンフィルが来日した時にチューバ奏者クリストフ・ギークラー氏がシュタイリッシュハーモニカ弾きなので民俗音楽のプログラムを弾くために私の楽器を貸したこともありました)原語では”Steirische Harmonika” と書くので、さらに興味がある方は外国語サイトでの検索にお役立てください。
【オマケ豆知識2】
なお、スロヴェニア語ではアコーディオン の総称がハーモニカ(Rが巻き舌なので「ハルモニカ」に近いです)なので、どんなタイプの楽器を指すか具体的に示す時にはピアノ鍵盤のアコーディオンを「Kravirska harmonika」、ボタン式クロマチックアコーディオンのことを「kromatična harmonika」と呼び、本稿で取り上げている押し引き異音タイプの「ハルモニカ」をフライトナルツァ(frajtonarca)」という言い方をすることがあります。これは「自由な音」という意味のドイツ語からの訳語だそうです。何ともステキな言い回しだと思いませんか??
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【お土産物にもハーモニカ!2019年6月リュブリャナ旧市街にて。可愛かったのでたくさん買ってあちこちに配りました。安西撮影)】
【私のスロヴェニアの民族衣装を作ってくれているシュタイナーさんの家の末っ子ガシュペル君の演奏です。限られた音の中を自在に行き来する様は「フライトナルツァ=自由な音」という名前の通りだと感じます】
【結びに】
まだまだ語りたいことは尽きませんが、シュタイリッシュハーモニカ、またはフライトナルツァへの入り口にしては、何度か同じトピックについても繰り返しつつ、充分話したように思います。日本ではまだまだ愛好者が少ない楽器ですが、私が懇意にしているルータルというメーカーとお話しをして御茶ノ水の老舗・谷口楽器さんで取り扱いを始める運びになりました。ぜひ実物に触れに行ってみてください。そして、これから多くの皆さんが実際に手に取って楽しまれる日が来ること、そして共に楽しめる仲間たちが増える事を心から願ってひとまず筆を置くことにします。もしも貴方の人生に、シュタイリッシュハーモニカ(フライトナルツァ)という言葉が加わったなら幸いです。それではひとまずここまでで筆を置くことにします。どこかでお目にかかる日が来たら語りあいましょう!
【過去に作った動画も併せてどうぞご覧ください】↓
【お調べ参考リンク】
ドイツ語のウィキペディア https://de.m.wikipedia.org/wiki/Steirische_Harmonika
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![二胡とアコーディオンの二刀流「安西創(あんざいはじめ)」と安西はぢめ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/127109342/profile_19b5c4fb9eca226bfff15b1d270d5315.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)