殻
ある日①
今日も消えてなくなりたい。本当は会議室Aで行われる会議に参加するのに、会議室Bに入ってしまったら、Aに行かなきゃな、と思う。本当はそれくらいの気軽なものだろうに、いや気軽だからか、何度も出てきて困る。なんにせよ、違う(正しい)場所に行きたい!と思うのは特別な感情とは言えない。よくある話だ。
今日も消えてなくなりたい。この気持ちは、消してやりたい、といつも背中合わせだ。
たとえば、すでに会議室Bにプロジェクターやら資料をセットし終えてしまった、しかも会議室Bは他のチームも使う予定がないとする。なら、そのまま会議室Bを使ってしまえばいいじゃないか。正しい場所ではなかったが、もはやここを正しくしてしまえばいい。
今いる場所が正しくないから消えてしまいたい、それはいつも、この場所をぶっ壊してやりたい気持ちの裏返しだ。寒くて、体調が悪くて、つい気持ちが荒んでしまう。うじうじするし、後ろ向きにもなる。本当にままならないけれど、まだ手放さずにいられるのは、この背中合わせのおかげだ。
ある日②
ワンピースを着たい、と昔から思っていた。1着で全身すっかり覆えるなんて、なんて効率がいいんだろうか。「野菜一日これ一本」みたい。「野菜一日これ一本」は、野菜がたくさん入ってるから違うか。それは古い洋服を少しずつ使ってできたパッチワークのシャツみたいなもんか。だったらワンピースは「完全メシ」だ。
頼りなく細い身体と標準を少しはみ出る手脚の長さのせいで、専ら男性に向けてつくられた服がしっくりこない。だから、しばしば女性向けにつくられた服にお世話になることもある。ちなみに、わたしの周りにはこういう人がまあまあいる。
学生のとき、ワンピースを着たことがある。他人より骨ばった肩のせいで、なんか全然可愛くなかった(しっくりこなかった、の意。異性装としての可愛さを目指しているわけではない)。スカートを履いたこともある。自分の身体がとことん骨張っていることをあれほど痛感させられるのは、後にも先にもないだろう。今日も上下が分かれた服を着ている。わたしの服は最低”2”。そういう身体。
ちょっといい醤油を買います。